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近所に住んでいる、息子と同じ学校に通う男の子。
彼は、軽度の知的障害を持っていた。
 
息子とスーパーの帰り道、家近くのコンビニ前にさしかかると、そこには近所の女子中学生の女の子達がたむろしていました。
 
するとそのコンビニに入ろうとした男の子が、彼女達の前を通り過ぎようとした瞬間、「寄るな!移るじゃん!」と大きな声で差別発言をしたのです。
 
なんて酷い事を言うのだろう。
そう強く怒りがこみあげて来た私は、彼女達に注意をしようと近付こうとしました。
 

しかし、そんな私よりも先に息子が繋いでいた手を放し、ササっと彼女達の元へ駆け寄り制服を引っ張り出しました。
 
「何をする気なの?」
と、焦った私が息子を止めようとすると、女子中学生の制服を引っ張りながら息子は知的障害の男の子の手をギュッと握りました。
 
そして、怒りながら訴えます。

  
   ねぇ!
 
   なんでそんな事言うの?
   ぼくのお友達になんでそんな事言うの?
 
   学校でもおねーちゃん達みたいに悪口言う人いたけど、
   先生が言ってたよ!
 
   そんな事言う人達は、可哀想な人達だよ。って!
 
   ぼくもそう思う。
   だって、障害は移らないって知らないんでしょ?
 
   ほら!ぼくはこの子の手を握ってるよ!
   皆一緒の人間なのに移るとかないんだよ!
 
   悪口を言ったら、帰りの反省会で皆に謝らなきゃいけないの知ってる?
   だから、おねーちゃん達謝ってよ!

 

一生懸命自分の気持ちを伝えながら、一生懸命男の子の手を握る息子の姿を見て、私は何故か涙が溢れてきました。
 

その必死の訴えと姿を見た彼女達も、息子の勢いに圧倒されたのか、参ったと言わんばかりの顔色。
 
「そうだね、ゴメンね」
と、息子と男の子に謝っていました。
 
世の中には、障害を持った人や身体が不自由になってしまった人がたくさんいます。
それを無作為に差別したり、偏見で判断する様な事は決してしてはいけません。
 
しかしながら、私達大人でさえも残念ながらそういった行為をしている人が多いのが現実ではないでしょうか。
 
言葉で上手く伝えれたわけではありませんが、こんな小さな息子から大事な事を教わった気がします。

 


Writing by Yamauchi Kimiyo


画像引用元:https://www.facebook.com/lifesupportoffice