中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創立メンバーの募集が31日、締め切りの期日をむかえた。欧州や韓国がなだれを打って参加したことに、米国の孤立感は深まる。日本にとって、待つのが得か、動くのが得か。

 AIIBの融資基準や運営手法に懸念を示してきた米国だが、いまや孤立は明らかだ。30日から31日にかけても、北欧からフィンランドノルウェースウェーデンが次々と名乗りを上げ、台湾までも申請することを発表した。

 米政府内では当初から様々な意見があった。だが、そうした意見を集約し、一貫した戦略を作った様子はうかがえない。元政府高官は「ホワイトハウスの数人の強硬派の意見が強く、財務省国務省とうまく連携が取れていなかった」と指摘。ある米政府関係者も「最初の段階から、もっと前向きに対応すべきだった」と話す。

 米国はオーストラリアや韓国などに対し、参加の判断を慎重にするよう求めてきた。だが皮肉なことに、米国と最も緊密なはずの英国の参加表明で、主要国が堰(せき)を切ったように中国側に流れた。アジア開発銀行(ADB)関係者は「『一枚岩で対応しよう』と主要国を引っ張る姿勢が米国にみえなかった。AIIBという機関車に主要国が一緒に立ち向かうはずが、日米以外が直前に逃げ出した」と話す。

 AIIBを後押しした背景には、中国など新興国の発言権拡大を狙った国際通貨基金(IMF)の改革が、唯一の拒否権を持つ米国の議会の反発で進んでいないことがある。2010年にまとまった改革案が通れば、中国の出資比率が6位から、米国、日本に次ぐ3位になるはずだった。米民主党のベテラン議会スタッフは「米国のオウンゴールだ」と言う。

 政治学者のイアン・ブレマー氏は「中国主導の枠組み作りが成功すれば、米国主導の従来の国際秩序を弱体化させることにつながる」と指摘する。「問題は、中国が米国主導の従来の基準に追いつく前に大国になったことだ。長期的にみれば、自国の基準を変えなければならなくなるのは米国だろう」(ワシントン=五十嵐大介