月山の八合目駐車場から帰るとき、濃霧と激しい雷雨の中での運転を強いられた。しかし、月山の近くの羽黒山では雨が降った様子が見られなかった。そのとき、地元の人から、月山は容易に人を寄せつけない霊山であると言われたことを思い出した。
さて、羽黒山の表参道を歩いてみた。この参道を歩くのは、自分達にとって2度目である。参道での石段は2446段であり、参道の両側には樹齢350~500年の杉並木(特別天然記念物)がある。そして、羽黒山五重塔(国宝)がある。
表参道入り口(随神門)。2011年7月27日。
ところで、芭蕉は出羽三山に1週間以上滞在したとのことだ。「涼しさやほの三日月の羽黒山」。芭蕉の句と健脚に感心せざるえをえない。この門から山頂に建つ三神合祭神殿(月山、羽黒山、湯殿山の三神を祀る)まで、約2,500段の石段が待っている。羽黒山に着く頃には、汗が噴き出しそうだ。それだからこそ、石段を登り終わったとき、山頂での「涼しさ」を実感できるのであろう。
先ず石段を下ると、この景観に出会う。2011年7月27日。
お婆さんが参道の落ち葉を掃いていた。お婆さんの姿は参道の雰囲気を醸し出しているいるような気がした。私達は、「ご苦労さまです。」と声をかけた。すると、お婆さんから、「ありがとうございます。お気を付けて。」との温かい激励の言葉をいただいた。
橋を渡って参道を少し歩いた杉並木の中に、羽黒山五重塔がにひっそりと建っている。
五重塔と爺杉(じじすぎ)(左)。2011年7月27日。
五重塔(国宝)は平安時代(920年代)に平将門によって創建されたとのことだ。現在の塔は約600年前に再建されたようだ(大改修との説もある)。塔の高さ29 m、三間五層柿葺素木造。東北地方最古の塔。
爺杉(特別天然記念物)の樹齢は約1,000年。樹の周囲は約10 m。昔は婆杉もあったが、この杉は台風で倒れてしまったそうだ。まことに、残念なことだ。
五重塔正面
五重塔の一層部分
塔の材質の質感が素晴らしい。古色蒼然たる姿は周囲の佇まいと調和している。屋根の四隅には宝鐸(ほうちゃく、ほうたく)が吊されている。
宝鐸を眺めていると、ふと宝鐸草の花を思い出す。
五重塔からは、山頂(三神合祭神殿)まで石段が続いている。傾斜のある石段もあれば、傾斜の緩やかな石段もある。往路は50分、帰路は40分とされている。
参道沿いには、クルマユリ、ウバユリ、アジサイなどが自生している。これらの花を見ながら歩くと、疲れを忘れる。
クルマユリ
石段の歩幅は、昔の人には合うようになっていたのであろう。しかし、自分(身長、175 cm)には合わない。降りとき、やや気疲れを感じた。
参道の中腹に茶店(二の坂茶店)がある。その店で食べた力餅は前回と同様に旨かった。茶店で、次の文面が記された認定書(氏名記入にて)をいただいた。
「あなたは、ミシュラングリーンガイド三つ星認定 特別天然記念物「羽黒山参道と杉並木」 2,446段の石段を踏破し、霊山羽黒山を参拝されました。 その健脚をたたえ、ここに認定書を授与します。 平成23年7月27日 出羽三山卯歳御縁年出羽三山神社宮司 羽黒町観光協会会長」