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2016-11-18 | 読書
【2016.11.18(fri)】
芥川賞作品を読むきっかけになったフォーラム

・毎年全国の各地でJTフォーラムが開かれます。
“良質な文化の芽を地域から育てていきたい。そして地域文化に貢献したい”
という思いで地方新聞社が主催、JTが協賛される文化イベント。

・今年は全国14カ所で開催のJTフォーラム。鳥取会場は活躍中のお二人の小説家を招いてのトークショーでした。
約400人の参加があったようです。



・第1部のゲスト<唯川恵>さんは日本ペンクラブ会員で<肩ごしの恋人>で第126回の直木賞を受賞。
10年のOL生活後に作家活動に入られたという経歴の持ち主。トークテーマは【自分を変える、自分に還る】

・若いころから書くのは好きだった。習い事を色々したが身に付かない。結局続いたのは書くことだけ。
小説を書いては応募し落選を繰り返したが、落ち込んだりやめたいと思ったことがないと話される。
やはり作家は書くことが好きで好きでたまらないんですね。

・自分を変えることの一例として、あるキッカケにより5年前から山登りをされているとのこと。
ご自身は2003年から軽井沢に住まれ、近くの浅間山によく登られるらしい。
山登りの良さは?の質問に“そこに行かなければ見ることのできない風景があるから”と答えられる。同感だ。

・山登りが縁となって<田部井淳子>さんをモデルとした「淳子のてっぺん」を執筆され、この度完成したのだが
田部井さんに最後の章まで読んで頂けなかったのが残念だと…この本は是非読んでみようと思う。

・恋愛小説で名を成した唯川さんなのに、自らの恋愛経験はないのだとか。
そのかわり妄想力があり小説家に向いていたのかもしれないと。
齢を重ねて自分の小説も一人の女性の人生を追うというスタイルに変わっていると語られました。

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・休憩をはさみ、<羽田圭介>さんが第2部のゲストとして登場される。
2015年の第153回芥川賞は又吉さんと羽田さんがW受賞。
<火花>が大きな話題になり、羽田さんの<スクラップ・アンド・ビルド>は相対的に注目の度合いが低かったと思うが、
ご本人はその後軽妙なトークがうけてTV等で引っ張りだこに。

・今回のJTフォーラムのゲストが羽田さんだと知り、発売から一年以上経った本を慌てて読みました。
読み易い文体であっという間に読了。



・28歳で就活中の主人公健斗、同居する母と要介護の祖父の三人が登場するお話。

・「早う死にたか」と毎日のように呟く祖父。長崎弁が登場する。
健斗はこの願いを叶えてやろうとあることを画策する。
手厚く介護することによって身体を弱らせ、祖父の社会復帰を阻み自然な尊厳死を迎えるようにという狙いだ。
しかし衰えつつも医療の発達により生かされている祖父に対して、次第に悲しさや切なさを感じるようになる。
健斗は祖父が好きなんですね。

・介護をこなす一方で健斗は日々の筋トレに就職活動と、肉体も生活も再構築中。これがビルドなのか?
精神も含めてのスクラップ・アンド・ビルドなのでしょう。

・健斗は再就職が決まり家をでることになる。
特養に入居を予約された祖父、介護の負担が大きくなるだろう母、そして健斗の行く末も見えているわけではないが、
何か清々しい気分にさせてくれるエンディングだった。

・介護現場の実態をシリアスにとらえていて、高齢化が引き起こす現代社会の矛盾を突いていることに共感する。
尊厳死など重いテーマを扱いながら、思わずふっと笑ってしまうような不思議な感覚をもたらす。
祖父の世話をするシーン、エピソードはいつも何かしら可笑しい。ユーモアのセンスがある。
それは今日のトークショーの間にも感じられました。

・言葉が正確に選ばれ文章が洗練されている。主人公の健斗が作者に重なって見えてくる。
羽田さんは以前から小説についてこのように言われている。
「読んでいる間に読み手が何かに思いをめぐらせ、何かを考える。それで人間的に“成長”するわけではないし“成果”を求めるのも間違いだ。ただ優れた本は、読み手の生活に別の角度から光を当ててくれる」
ああ確かに…と思いました。

・NHKでドラマ化もされていて12月に放送されるようですね。

・11月15日には新刊<コンテクスト・オブ・ザ・デッド>が発売されたばかり。
現代日本を撃つゾンビ・サバイバル問題作。ついにゾンビが文壇に登場!?と注目されています。

・羽田さんいわく、昨年の話になるがこの長編は最初1,400枚位だったのを直して800枚にした。
それを編集者に渡して結果を待つのに普通1ヵ月は掛かる。
待つ間にサッと書いたのが<スクラップ・アンド・ビルド>(70枚程度)だったと明かされる。
そんなに短期間で書けるとは…。 芥川賞をとるにはタイミングとか運もあるんでしょうね。

・<コンテクスト・オブ・ザ・デッド>の表紙がプリントされたTシャツを着て本をPR、
素直に「僕の本を買ってください」と言われるのが可笑しく好感がもてる。

・地方に行っても“TVでよく見てるよ”とは言われるが、“本を読んでるよ”とはあまり言われないんだとか。
今もTVや講演、このようなトークショーなどで目の回るような忙しさであると。聴いていても風邪気味なのが分かりました。
「まあ売れない小説を書くより、このようなイベントに呼んで頂く方が遥かに実入りがいいんです」と笑いをとられる。

・色々としないといけない事が多すぎて、気が休まるのは本業である書き物でパソコンに向かっている時なんだそう。
中二の頃から作家願望は持たれていたらしい。この方も書くのが何よりも好きということがお話をされる中で伝わってきました。

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・変わりゆく南吉方。鳥取市のスクラップ・アンド・ビルド。

See you.

I.O

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