ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

ビシュコフ&N響のマーラー

2010-02-14 14:27:54 | N響
一昨日(12日)、NHKホールでのNHK交響楽団第1668回定期公演を聴きに行ってきた。指揮はN響初登場のセミヨン・ビシュコフ。

ビシュコフは数多くいる1950年代生まれの指揮者のなかでも、ファビオ・ルイージ、リッカルド・シャイーと並んで私にとってお気に入りの指揮者である。

【演目】
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
  ~休 憩~
マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調
《19時00分開演、20時55分終演》

1曲目。弦の繊細な響きがとても鮮やか。特に「愛の死」でのビオラとチェロの中低音部が生と死の狭間を漂うような寂寥な音色がたまらなかった。

2曲目。不得意なマーラー。そのために、2日間にわたってショルティ指揮シカゴ交響楽団のCDを聴きつづけて予習。そのかいはあった。(笑)

1曲目では指揮棒を使わなかったビシュコフだったが、2曲目は指揮棒をもって登場。

第1楽章。この曲の良し悪しは冒頭のトランペットで決まるのではないだろうか。この日のトランペット首席は客演の長谷川智之(東京フィル)。その音色は少し物悲しくも高らか。それでいて水々しく若々しい。曲全体では途中1~2ヶ所、音色が裏返ったりしてしまったが、この曲を見事にリードしていった。また、3rdのミュートをつけたりした佛坂咲千生のサポートも素晴らしかった。

第2楽章。「嵐のように激しく、よりいっそう激しく」という楽章。それでいて、チェロの穏やかな音色が見事にマッチしていく。1曲目のワーグナーのときもチェロの響きにも感心したが、この第2楽章でも藤森亮一率いるチェロの音色には目を見晴らされた。加えて、木管も金管も表題の「嵐のように激しく、よりいっそう激しく」を鮮やかに具現化していた。

第3楽章。スケルツォ。冒頭に松崎裕率いる7人のホルンが快活的な旋律を交互に轟かせていく。そして、ソロの松崎の音色は円やかなで艶がある。こんな音色を出せる奏者は日本にはほとんどいない。やはりまだ彼の右に出るホルン奏者はいないのかもしれない。久しぶりにふくよかなホルンの音色に浸る。

第4楽章。弦楽とハープだけの楽章。N響の美しい弦楽の音色のなかに、ハープの早川りさが水をえた魚のように、時に優しく時に活き活きとした彩りを加えていく。

第5楽章。マーラーの情念がふんだんに折り込まれている楽章。ビシュコフはここではオケの出し入れを明晰にしていき、その指示も少し直情的になっていく。視線もめまぐるしく動かしているようで、それに伴いタクトを持つ右手ばかりでなく左手の動きも大きくなっていく。こうした指揮に応えるかのように、オケも色彩感が増していく。木管と金管のパートパートの連携がスムーズで、それを補う弦も結束力のある音色を奏でていく。そして、最後の最後は情熱的かつ狂騒的幕切れで締めくくられる。マーラー不勉強の私が言うのもなんだが「いいじゃん」と唸ってしまった。

終演後、すぐにブラボーが多数飛んだが、それよりも拍手がなかなか成り止まなかったことに驚いた。いつもならすぐに席を立つ高齢者が多いN響だが、この日は拍手はいつもより長く、6~7分は続いた。NHKホールでこれだけ長い拍手が続いたのいつ以来だろうか・・・。

N響事務局は初共演にもかかわらず、ビシュコフにいろいろな作曲家の曲をAプロBプロCプロと3つの公演でまかせるという英断を下した。正解だったと思う。今度の水曜は私の好きなラフマニノフとチャイコフスキーである。期待しないわけにはいかない。