(初投稿日時は2012-10-20 20:31:01で、バックデート)
[画像]海自の装備、練度に満足の表情をうかべた野田佳彦総理(中央)、長島昭久防衛副大臣(左端)ら。2012年10月14日(日)、相模湾上の護衛艦「くらま」艦上、海自ホームページ内動画生中継「平成24年度自衛隊観艦式 守るこの海・夢・未来」からキャプチャ。
今週2012年10月14日(日)、自衛隊の平成24年度観艦式が開かれました。海自横須賀基地沖の相模湾で、護衛艦(旧名称・戦艦)「くらま」の艦上に野田佳彦観閲官(総理)、森本敏防衛大臣、長島昭久防衛副大臣、大野元裕・防衛大臣政務官らが乗りました。自民党政権時代の観閲官は艦橋に乗り込んで見ていたように思いますが、舳先で、波しぶきを浴びながら観閲したというのは珍しいのではないでしょうか。そう思います。平成24年観艦式は、「動的防衛力」が2010防衛大綱で打ち出されてから初めての観艦式だということを意識してプログラムを組んでいるように私には感じられました。
海上自衛隊の装備や日頃鍛えた技に加えて、同盟国・友好国のアメリカ、オーストラリア、シンガポール各海軍が初参加。太平洋の安定と平和の維持にともに責任を共有していることを感じさせました。我が国が財政難の折、頼もしい限り。その一方、海上保安庁は今年は多忙のため不参加。尖閣諸島の哨戒でしょうか。まさに「本日天気曇天にして波高し」という風情でした。とはいえ曇天だからこそ、限られた装備の中で、この3年間毎日高めてきた練度の高さを見せる機会になったようにも思います。
このもようはニコニコ生放送と海上自衛隊ホームページで生中継され、私もこちらで見ました。我が国海上自衛隊の装備、練度を見て、改めて頼もしさと「我が国はやっぱり海自(海軍)だ」との思いを強くしました。ぜひ、みなさんも最高の事業仕分けは、国民の世論ですから、ニコニコ動画さんや海上自衛隊のホームページから、平成24年度観艦式のようすを見ていただき、装備や人件費は妥当かどうか判断していただきたいと考えます。
3年に1回なので、民主党第1次与党期では2度目になりますが、前回は鳩山由紀夫総理が欠席し、菅直人副総理が観閲官を務めました。わが党代表たる内閣総理大臣が観艦式で観閲官を務めたたのは平成10年の立党以来初めて。
[画像]東京・千代田の首相官邸からヘリコプターで、走行中の護衛艦「くらま」(相模湾沖)に乗艦した直後にもかかわらず、船酔いなどを一切見せず、観閲官を務めた野田首相。
そして、自衛官の息子が観閲官をつとめたのも初めてでしょう。
[画像]栄誉礼をうける野田総理。
[画像]儀仗をうける野田総理。
ヘリコプターで着艦し、栄誉礼・儀仗を受ける最高指揮官・野田総理。しかし、総理はそのことに対する高揚感をまったく見せませんでした。これだけでも、野田という男はたいしたものだと思います。
この後の、海上自衛隊のパフォーマンスに関しては、ぜひとも、動画で見てください。
動画視聴の情報はこちらの自衛隊ホームページにあります。
さて、観閲を終えた総理は、艦上で訓示をします。
[画像]訓示をする野田総理。
この総理の訓示は、たいへんな名文であり、彼の国防にかける知見と意気込みが現れた後世に残る名演説でした。
[平成24年度観艦式での総理の訓示(官邸ホームページ)から引用はじめ]
昨年の航空観閲式に続き、本日の観艦式において、観閲官として多くの隊員諸君に直接訓示をする機会を得たことは、最高指揮官たる内閣総理大臣として、大いなる喜びとするところです。
本艦「くらま」を中心とする艦艇、航空機の威風堂々たる雄姿。統率の行き届いた一糸乱れぬ艦隊運動。そして士気旺盛な隊員諸君の規律正しく、真剣な眼差し。今日、私はこれらを目の当たりにして、この国に自衛隊があることの誇らしさを、改めて心に刻んでいます。
この観艦式が、諸君の日頃の訓練の成果を示し、諸君がその胸に秘めた使命感と覚悟を一人でも多くの国民に知っていただく重要な機会となることを信じて止みません。
海洋国家・日本の「礎」である海。我が国最大のフロンティアである海。我が国の海を守るという諸君の職責は、日本人の存在の基盤そのものを守ることに他なりません。
今年は海上自衛隊の前身である海上警備隊が発足してから、60年という節目を迎えました。我が国をめぐる安全保障環境は、かつてなく厳しさを増していることは、改めて諸君に申し上げるまでもありません。「人工衛星」と称するミサイルを発射し、核開発を行う隣国があります。領土や主権を巡る様々な出来事も生起しています。その一方で、自衛隊の活躍の場面は、我が国周辺のみならず、世界各地にまで拡がるようになりました。我が国の平和と独立を保ち、国民の安全を守るという自衛隊創設以来の使命の核心は不変ですが、新たな時代を迎え、その使命は少しずつ形を変え、重要性を増しています。
そのような中にあって、本日は諸君に3つのことを求めたいと思います。
まず、諸君に求めたいのは、部隊の力を磨きあげよ、ということであります。
新たな時代にあって、諸君は様々な新しい任務を与えられ、難しい任務を与えられ、厳しい場面に遭遇することも増えると思います。それを立派に果たし切る力を平素から養って下さい。「防衛大綱」に従って「動的防衛力」を構築し、磨きあげて下さい。いざという時、何が求められるのか、それぞれの部署で徹底的に検証し、訓練に励んで下さい。
諸君は、単に存在することだけで抑止力となるのではありません。鍛え抜かれ、磨き抜かれた諸君一人一人の日々の努力があってこそ、防衛力が具体的な裏付けを持っていくのであります。
2つ目に諸君に求めたいのは、果敢に行動する勇気であります。
かつてない状況のもとで、これまで経験したことのない局面、プレッシャーを感じる場面に向き合うこともあるでしょう。
しかし、皆さんは国家の安全を守る最後の拠り所です。国防に「想定外」という言葉はありません。困難に直面した時にこそ、日頃養った力を信じ、冷静沈着に国のために何をするべきかを考えた上で、状況に果敢に立ち向かって欲しいと思います。いつの時にでも局面を切り拓く力は、最後は諸君一人一人の勇気にかかってくることを忘れないで下さい。
そして、3つ目に諸君に求めたいのは、「信頼の絆」を広げていくことであります。
先の東日本大震災での災害派遣では、「すべては被災者のために」という思いで災害対応に当たった10万の隊員の真心が、国民に深い感動を与えました。被災地で、自らは数週間カンメシしかとらず、炊き出しのご飯や豚汁を被災者に提供し続けた隊員諸君の心は、被災者との心の絆を深めたに違いありません。
また、米軍と自衛隊が共同対処したトモダチ作戦の成功は、日米同盟に結ばれた日米両国の絆を固く結びつけました。これからの日米の動的防衛協力を深めていく大きな拠り所となっていくことでしょう。
さらに、諸君の同僚が、遠くソマリア沖・アデン湾において海上交通の安全確保の任に当たっていることは、我が国の海運に携わる人々との絆を強めるとともに、世界各国との絆も深め、日本という国全体への信頼を高めてくれています。
そして、厳しく危険な任務を遂行するに当たって、常に諸君を支えてくれる家族との絆への感謝の気持ちも常に抱き続けてほしい。そう願います。
最後に、海軍の伝統を伝える「五省」を改めて諸君に問いかけます。
至誠にもとるなかりしか。
言行に恥づるなかりしか。
気力に欠くるなかりしか。
努力にうらみなかりしか。
不精に亘るなかりしか。
諸君なら、この「五省」の問いかけを胸に、国を守るという崇高な使命を必ずや果たしてくれると信じます。常に国民に寄り添って、優しき勇者であり続けてくれると信じます。
今こそ、国民の高い期待と厚い信頼に応える自衛隊であるために、諸君が一層奮励努力されることを切に望み、私の訓示とします。
平成24年10月14日
内閣総理大臣 野田佳彦
[引用おわり]
このような訓示を残し、総理はヘリコプターに乗り、走行中の護衛艦の向かい風に煽られながら、首相官邸へと戻りました。
ところで、私、五省(ごせい)は知らなかったのですが、海軍兵学校で、生徒がその日の行いを反省するために自らへ発していた5つの問いかけのこと、だそうです。(wikipedia参照)。
一、至誠(しせい)に悖(もと)る勿(な)かりしか
真心に反する点はなかったか
一、言行に恥づる勿かりしか
言行不一致な点はなかったか
一、気力に缺(か)くる勿かりしか
精神力は十分であったか
一、努力に憾(うら)み勿かりしか
十分に努力したか
一、不精に亘(わた)る勿かりしか
最後まで十分に取り組んだか
ここで、「ごせい」というと、松下政経塾の「五誓」を思い出します。このなかで、一番目の「素志貫徹の事」が総理の座右の銘です。これは「常に志を抱きつつ懸命に為すべきを為すならば、いかなる困難に出会うとも道は必ず開けてくる。成功の要諦は、成功するまで続けるところにある」とのことです。私は学生時代に松下幸之助さんの本をかなりたくさん読んでおり、この「成功の要諦は成功するまで続けるところにある」という言葉は大事にしてきました。野田さんが総理になったときに、「素志貫徹」が座右の銘だと知ったときには、すぐには分からなかったのですが、私が大事にしていた「成功の要諦は成功するまで綴るところにある」という松下翁の名言は、「素志貫徹」は同じ意味だそうです。
ところで松下政経塾の「五誓」の最後には、「感謝協力の事」として「いかなる人材が集うとも、和がなければ成果は得られない。常に感謝の心を抱いて互いに協力しあってこそ、信頼が培われ、真の発展も生まれてくる」との言葉があります。
松下幸之助さんは池田大作と往復書簡をしていて、その内容は週刊朝日1974年10月1日号から翌年6月27日号に連載されています。この中で、松下さんは「昔から私心を去り私欲を捨てて素直な心で人生を営むというのは、お互い人間としての一つの理想であるともいわれております」とし、「自分の利害得失にとらわれないようにするために」「最も基本的に大切なのはどういうことでしょうか」としたためています。池田さんは返答の書簡で「結論的にいえば、自己自身を冷静に見極める英知をもつことと、他の人びとに対して自分と等しい尊厳性」を認めることだとしています。そして、「他の人びとの尊厳を認め、その幸福のために尽くしていくことーーここにこそ人間としての根本的姿勢があることを忘れてはならないでしょう」としています。
なぜ今これを思い出したかというと、松下政経塾出身の我が党幹部が小説「人間革命」を線を引きながら読んでいるとのことを側聞したので、この往復書簡を収めた「人生問答」の方が文庫2冊なので読むのが早いと思ったからです。年上の人に対して、書物を贈るのは失礼とされているので、たまたま思い付いたということで、書いてみた次第です。
◇
なお、観艦式の前日(2012年10月13日土曜日)、野田総理は防衛省で開催された平成24年度自衛隊殉職隊員追悼式に出席しました。昨年10月1日からことし9月30日までに、おもに訓練中の交通事故などで亡くなった自衛官で、ことしは9人の殉職者だったそうです。前年は東日本大震災の災害出動の関係で殉職者が増えましたが、ことしは一ケタに戻りホッとしました。しかし、一人一人の殉職者には家族があり、たいていの場合、20歳代の若い自衛官です。遺児らは、お父さんが自衛官であることもまだ分からない幼いお子さんであることが多いです。
[写真]平成24年度自衛隊殉職隊員追悼式で追悼の辞を述べる野田総理、2012年10月13日、首相官邸ホームページから。
ちょっと、ここで追悼の辞を述べる最高指揮官、すこし目が潤んでいるようですが、まさか自衛官の子としての私心が出てしまったわけではないでしょう。8月に社会保障と税の一体改革法を仕上げ、残されたお子さんたちが、国の支えで教育を受けて、成人したときに、「お父さんは日本国の自衛官だったんだ」と誇りを持って言える国へとしっかりと実績を残した野田さんですが、目が潤むような最高指揮官では、まだまだ「素志貫徹」への道のりは遠いとしか言いようがありません。
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