【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎ことしも3党合意 社会保障と税の一体改革関連「8」法案を民自公が修正、衆参ねじれを吹き飛ばし成立へ

2012年06月16日 08時27分20秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]3党合意をまとめた(左上から時計回りに)細川律夫・社会保障分科会長、長妻昭・実務者、古本伸一郎・実務者、藤井裕久・税制分科会長。

 衆参ねじれは直近の民意。

 2010年7月11日の国民のお灸にもとづき、民主党は2009年マニフェスト(鳩山・小沢詐欺フェスト)の修正実現を図っています。

 2012年6月15日(金)、ことしも3党合意が成立しました。まさに憲政史に残る名場面。震災後国会の一番長い一週間は大成功に終わりました。

 今回修正したのは、社会保障と税の一体改革関連3領域7法案。

 年金領域2法案は、「被用者年金一元化法案」と「年金の最低保障機能強化のための国民年金法など改正法案」。

 子ども・子育て新システム(幼保一元化・幼保一体化)領域3法案は「子ども・子育て支援法案」、「総合こども園法案」、「関係法律を整備する法案」。

 消費税領域2法案は、「社会保障の安定財源を確保するための税制抜本改革のための消費税など国税改正法案」と「同じく地方税・地方交付税改正法案」。

 これら合計7法案で、来週の国会で修正案を提出し、趣旨説明、審議のうえ、しめくくり質疑を経て採決し、可決。本会議に緊急上程し、可決。参院に送付し、延長国会で可決・成立します。

 ちなみに、最低保障年金設置法案や後期高齢者医療保険制度廃止法案は初めから提出されていません!

 衆参ねじれ(第45期衆議院・第21期22期参議院)での3党合意は、第177通常国会の2011年4月29日の平成23年度第1次補正予算(復旧補正)について、3党政調会長(玄葉光一郎さん、石破茂さん、石井啓一さん)がまとめたのが端緒。

 次に6月下旬の会期末に延長国会をめぐり、3党幹事長(岡田克也さん、石原伸晃さん、井上義久さん)が「辞任3条件」をまとめたことで、国会運営全体に波及しました。このときは、原案を菅直人総理・民主党代表が突き返したため、温厚な岡田幹事長がぶち切れ、連帯感ができていた3党幹事長が「菅おろし」で合意するものの、8月末まで岡田さんが面従腹背で菅総理の名誉ある退陣を演出するという震災後憲政史に残る名場面(「岡田勧進帳」)がみられました。

 そして、平成23年度の特例公債法案をめぐって、「実務者協議」というレイヤーが発生。城島光力・政調会長代理、鴨下一郎・政調会長代理、坂口力・副代表という「旧新進党厚生族議員トリオ」が寄せ木細工のような協議を積み上げました。そして、政調会長レイヤーを経て、3党幹事長・政調会長が8月9日に合意。特例公債法案、第2次補正予算案に加えて、再生可能な自然エネルギー特別措置法(来月1日施行)のおまけつきで、菅直人首相の退陣と引き替えに、第177震災衆参ねじれ国会を前に進めました。

 2012年6月15日の3党合意(社会保障と税の一体改革7法案の修正協議)のこちらのページから全文みることができます。

 6月15日の3党合意の実務者は、民主党が前原誠司さん、藤井裕久さん、細川律夫さん、長妻昭さん、古本伸一郎さん。自民党が伊吹文明さん、野田毅さん、町村信孝さん、鴨下一郎さん、加藤勝信さん、宮沢洋一さん。公明党が石井啓一さん、斉藤鉄夫さんがまとめました。

 法案に関しては、自民党が提案していた「社会保障制度改革推進法案」をおそらく民自公共同提出の衆法として提出。社会保障と税の一体改革関連8法案となり、一体的に採決し、参院に送ります。人生前半の社会保障である子ども・子育て新システムでは、現行の「幼保連携型認定こども園」を単一の施設として認可・指導監督などの行政を一本化します。認定こども園の設置主体は国、自治体、学校法人、社会福祉法人のみとし、株式会社の参入はできないよう法案を修正します。

 政府案の「ミソ」だった認定こども園、幼稚園、保育所、小規模保育を通じた「給付」の創設に民自公が合意し、「チルドレン・ファースト」の前提としての「保護者ファースト」が実現します。地方議員から反発の声が出てきた「児童福祉法24条」については、引き続き保育の実施義務は市町村とし、民間保育所に委託費を支払う場合は利用者負担の徴収は市町村がすることになりました。政府案では、10年間は暫定的に一体化することになっていた、幼稚園教諭免許と保育士資格については、一体化を含めて、そのあり方について検討を加え、「所要の措置」を加えることになりました。できる限り、幼稚園と保育所で働いている方が経済的負担がなく、給与水準も高い方に統一できるようなしくみを私からは期待したいです。

 年金の最低保障機能強化法案に関しては、低所得高齢者と障害者への年金額加算の規定は削除されましたが、消費税10%(2015年10月から)から、「税率引き上げで増加する消費税収を活用して、新たな福祉的な給付措置を講ずるものとし」、「公布後6ヶ月以内」、おそらく来年1月頃までに、「必要は法制上の措置を講ずる旨を規定する」ということになりました。少し後退しているようにも思えます。しかし、消費税改正法案の方に「社会保障の機能強化との関係も踏まえつつ、対象範囲、基準となる所得の考え方、財源の問題、執行面での対応の可能性などについて検討を行い、簡素な給付措置を実施する」となっていますので、当面の間は、簡素な給付措置で下支えとなりますから、心配ご無用です。ちゃんと手続きしてください。マイナンバー法案(衆院提出済み、付託委員会未定)の成立・施行・定着後は、「関連する社会保障制度の見直しおよび所得控除の抜本的な整理とあわせて、総合合算制度(医療、介護、保育などに関する自己負担の合計額に一定の上限を設けるしくみ)、給付つき税額控除などの施策の導入について、総合的に検討する」となりました。実現すれば、国内資源(マネー)がもっとも必要なところに流れるしくみになります。支え合う日本。バブル期よりももっと(心が)豊かな生活が可能になるでしょう。

 平成24年度の年金交付国債法案(衆院厚生労働委員会付託)は撤回することになりました。これにより、平成24年度当初予算の一般会計予算総則や、歳入の組み直しが必要になったことから、延長国会で第1次補正予算案が提出されることになるでしょう。これが平成24年度特例公債法案とあわせて、延長国会の焦点になるのではないでしょうか。この辺の予測は「今後の政治日程 by 下町の太陽」に譲ります。

 話題の生活保護。「不正な手段により保護をうけた者などへの厳格な対処、生活扶助、医療扶助などの給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に実施する」と合意しました。「生活困窮者対策および生活保護制度の見直しに総合的に取り組み、保護を受けている世帯に属する子どもが成人になった後に再び保護を受けることを余儀なくされることを防止するための支援の拡充を図る」としており、民主党、国民新党、自民党、公明党、たちあがれ日本の責任5党が、与党にいるときも、野党にいるときも、一貫して取り組まねばならない政策課題をお互いに共有しました。 

 3党合意は「法案修正の条文イメージ」と付けました。55年体制下では、官僚が書いた条文には「野党日本社会党が修正するのりしろ」があって、そこを社会党が修正した上で賛成・可決という八百長があったようです。今回の修正協議はガチンコでした。ただ、6月15日までに3党合意できなければ、民自公とも傷つくし、「一部先送り」「一部棚上げ」という手法を使えば、合意にいたるのは当然のことで、私は泰然自若としてみていました。村木厚子・内閣府政策統括官ら官僚が実務者協議にも出ていたようですが、条文は政治家がつくったことになるでしょう。内閣法制局は月曜日に採決してもいいぐらいに修正法案をしっかりとつくってください。

 今回は初めて、分科会方式ということで、実務者協議が行われました。報道によると、「社会保障分科会の実務者を各党1人にしてほしい」と言ったのは自民党の鴨下一郎さんだったようです。これは自民党内が幼稚園族と保育所族で分裂していることを分かっていたから、各党1人にすることで、自民党内で分裂の芽をつみ遠心力を内包することで党の存在感を高めるという戦術を鴨下さんがとったのでしょう。鴨下さんは1993年に日本新党から初当選。野田佳彦総理と同じです。そして1996年新進党公認で再選。野田さんは落選しました。こういった人材が自民党に行ってしまったことは言うまでもなく100%小沢一郎さんのせいです。

 3党合意により、日本は滅亡の瀬戸際から救われました。

 会期末、私たちは小沢一郎さんをマリー・アントワネットと同じ結末にもっていかなければなりません。歴史の流れはとめられません。それにしても、議員と記者はもうちょっと筋の良い情報源を持たないといけません。振り回される国民がかわいそうです。

 衆参ねじれをロータリーエンジンのように前に進む力にする。そのためには、1990年初当選組、旧新進党などの枠組みを活用しながらも、やはり志と実力のある政治家にまかせることが大事です。昨年の3党合意は、「1年間で40兆円を動かす」というこれまでの政府外議員では考えられないような巨大な案件でした。社会保障と税の一体改革関連8法案は「日本の国が続く限り、毎年10兆円を動かし続ける」ので、より恒久的かつより巨大な政治案件です。当然のことながら、党議に違反した議員は、はじき飛ばされて、政治生命を失います。

 日本の政治はこれでも少しずつ前進しています。これからも知恵を絞り、少しずつ議論と実績を積み重ねていくことで諸懸案を課題していきましょう。維新や憲法改正はその後です。政権交代ある二大政党政治で、政治を国民の手に取り戻しましょう。新進党を解党した小沢一郎さんの息の根を止めましょう。

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