【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

月65万円の立法事務費を狙う小沢一郎さんの会派離脱を認めて、会派認定を先送りすべきだ 空転国会2日目

2012年06月28日 13時27分25秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]小沢一郎さん(筆者撮影)。

 社会保障と税の一体改革法案の衆院採決時に民主党から造反者から出たことで、空転国会2日目を迎えました。

 内閣法制局のホームページによると、現在の法案成立率は内閣提出法案(前国会からの継続審査含む)が105本のうち33本で31・4%。最重要法案の一体改革法案は参院に送付したばかりですし、最優先法案の平成24年度特例公債法案は衆院財務金融委員会に残っている状態で、衆院の不正常採決と3党合意の正統性の揺らぎから、参議院自民党らが審議に応じられるわけが泣く、長期の国会空転は不可避の公算。「決められない政治」はますます混迷を深める最悪の事態となっています。民主党が自民党に謝罪しない限り、国会は正常化しません。当然にして、小沢切りしかありません。

 造反劇の主謀者である小沢一郎・衆院議員(岩手4区)が民主党の輿石東幹事長と会い、衆院での会派離脱届を提出する考えがあると、けさの読売新聞などが報じました。これは何が狙いかというと、

国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律(昭和二十八年七月七日法律第五十二号)に基づき、その第3条「立法事務費として各会派に対し交付する月額は、各議院における各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき六十五万円の割合をもつて算定した金額とする」とあり、議員1人あたり月65万円のお金を得るのが目的。政党助成法に伴う新党の手続きは来年1月2日以降となるため、次善の策として、剛腕こと小沢氏は月65万円を手にすることを考えています。

 輿石幹事長は会派離脱届を受け取るべきでしょう。衆議院が会派に立法事務費を支払うためには、衆議院議院運営委員会による認定が必要です。次の議事録をごらんください。

[国会会議録データベースから引用はじめ]

平成二十四年四月二十六日(木曜日)

    午後零時二分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 松野 頼久君 理事 山井 和則君
   理事 笠  浩史君 理事 田名部匡代君
   理事 糸川 正晃君 理事 鷲尾英一郎君
   理事 佐藤  勉君 理事 高木  毅君
   理事 遠藤 乙彦君
      相原 史乃君    太田 和美君
      川内 博史君    坂口 岳洋君
      浜本  宏君    水野 智彦君
      森山 浩行君    伊東 良孝君
      齋藤  健君    塩崎 恭久君
      橘 慶一郎君    佐々木憲昭君
      渡辺浩一郎君    服部 良一君
      中島 正純君
    …………………………………
   議長           横路 孝弘君
   副議長          衛藤征士郎君
   事務総長         鬼塚  誠君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 特別委員会設置の件
 国会議員の歳費及び期末手当の臨時特例に関する法律案起草の件
 立法事務費の交付を受ける会派の認定に関する件
 本日の本会議の議事等に関する件
     ――――◇―――――

(略)

○小平委員長 次に、立法事務費の交付を受ける会派の認定に関する件についてでありますが、これについて事務総長の説明を求めます。

○鬼塚事務総長 立法事務費の交付を受ける会派の認定は、当委員会の議決によって決定することとなっております。
 今回、院内において無所属となっております亀井静香君の日本をどうする研究会、田中康夫君の新党日本からそれぞれ立法事務費の交付に関する届け出があり、日本をどうする研究会、新党日本は、いずれも政治資金規正法第六条の届け出を行っておりますので、会派の認定をお願いいたします。

○小平委員長 それでは、ただいま事務総長から説明のありましたとおり、日本をどうする研究会、新党日本を立法事務費の交付を受ける会派と認定するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。(後略)

[引用終わり]

 このように会派を結成しても、議運の認定がないと振り込めません。上の議事録では、「亀井静香君の日本をどうする研究会」から「立法事務費の交付に関する届け出があり」、「政治資金規正法第六条の届け出を行っておりますので、会派の認定をお願いいたします」との事務総長の申し出について、衆院議員である議運委員が認めています。

 しかし、現段階では造反議員の処分がつかない限り、空転国会は続きます。したがって、小沢氏の新会派への認定はずれ込むことになると考えます。連合の古賀伸明会長は2012年6月28日(木)、自民党本部内で講演し、「政党そのものが流動化することもありうる。今は民主党の応援団だが、どういうスタンスで応援していくか議論しないといけない時期も来る」と述べたと報じられています。この会合は元新進党選挙対策委員長だった二階俊博さんが主催したようです。新進党は小沢一郎氏によって解党されました。

 報道によると、ある造反議員が後援会幹部に叱られた旨を小沢一郎氏にきょう伝えたところ、小沢氏は「国民の声は違うと思う」と答えたようです。憶測ですが、この人は、民主党1期生の加藤学・衆院議員(長野5区) の後援会長を務める、中島衛・元衆院議員なのではないでしょうか。中島先生は、筏に乗って船を出た新生党44人衆の一人。宮澤内閣の国務大臣・科学技術庁長官でしたが、船田元・経済企画庁長官とともに、1993年6月18日朝、閣僚を辞任した上で、衆議院議員として宮澤内閣不信任案に賛成しました。中島先生の入閣については、金丸信さんの一声があったという見方が有力ですが、改革フォーラム21(自民党羽田派)から入閣した2人は、政治改革関連法案が出来上がらなかった場合には辞任するということを事前に条件にしたうえで、入閣し、筋を通しました。大臣でありながら筏に乗って船を出たシンドバッドの顔に泥を塗ったのが加藤学氏の投票行動であり、私は裏切り者には死をもって対応するのが、国民のために政権の選択肢を与える政党として必要なことだと断言します。

 造反議員は、今になって、自分のしでかした愚行の意味が分かってきた人も多いようです。彼らは衆院本会議場で消費税増税法案の採決前に、後ろを振り返り、場内を見渡していました。おそらく小沢一郎氏が着席しているかどうかを確認する目的だった人が多かったと考えられます。小沢氏が欠席していたら投票行動が変わっていたのかもしれません。党議ではなく、小沢氏に従う。自分で判断できないから、党議でなく小沢氏に従う。そこには法治国家の前提である議会制民主政治の危機的な現状があります。 

 上の議事録によると、亀井静香氏は「日本をどうする研究会」をつくったようですが、しょせん衆議院ではひとりぼっちです。日本をどうするかと言えば、それは社会保障と税の一体改革を成立させると同時に、小沢切りをして、3党協議で特例公債法を成立させて、第46回衆院選に臨むという選択しかないのは、非を見るより明らかです。

 テレビ報道による拡幅された小沢一郎氏にとどめを刺す。そのためには、造反議員の国家のために自分ができることは何か。その判断が求められています。

 新進党を解党した小沢に死を。歴史法廷の断頭台に送れ。小沢切りにいささかのためらいもあってはなりません。

小沢グループ、会派離脱案も 離党慎重論に配慮(朝日新聞) - goo ニュース

 

 消費増税関連法案に反対した民主党の小沢一郎元代表は28日午後、輿石東幹事長と会談する。小沢グループには衆院の民主党会派からの離脱を検討する動きも浮上。グループ内の離党慎重論に配慮し、造反議員の結束を保つ狙いがある。ただ党執行部の了解が必要で、実現性は不透明だ。

  小沢氏は28日昼、法案に反対し、離党を検討しているグループの衆院議員43人を国会内に集めて結束を確認したうえで、輿石氏との会談に臨む構えだ。

  現在の民主党会派は「民主党・無所属クラブ」(289人)。会派離脱は離党までの時間を稼いで足元を固め、分裂回避を模索する輿石氏と折り合う狙いもあるようだ。グループ議員の一人は「新党は準備が必要。会派を分けることで輿石氏にも理解してもらう」と指摘。離党慎重派の議員は「新党は世論に理解されておらず、すぐに離党することはできない」という。



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