【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「金で死なないでいいんだよ」 金融庁のメッセージ、森山浩行さんが引き出す 

2010年10月27日 21時25分42秒 | 森山浩行 大阪16区

[画像]衆院内閣委員会で質問する民主党衆院議員の森山浩行さん、2010年10月27日、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ

【衆院内閣委員会 2010-10-27】

 二大政党の議員は、秋の臨時国会を前に委員会の配置換えがあり、慣らしておいて、翌年の通常国会を迎える、というパターンが定着しています。森山浩行さんは、これまでの衆院経済産業委員に加えて、内閣委員も兼ねるようになりました。内閣委員会というのはこれは、面白い委員会で、首相官邸・内閣府に属する、すべての大臣が登場しますので、質問者がテーマを持って、政務三役に質問をすると、いろいろと出てくるおでんのような委員会です。

 私なんかは、森山さんというと、強いリーダーシップでぐいぐい引っ張る明治大学弁論部長としての「バンカラ番長」「猛獣使い」というイメージが強烈で、私は今でも引きずっていますが、国会議員になってからは、民主党秘書会の女性も、新聞記者の男性も彼を「やさしい感じの人だ」と評すので、「ふーん、印象というのはいろいろなもんだな」と感じておりました。こうやって、イメージのギャップを把握し、それが生じた理由を研究することは、ケネディ登場後の政治を分析するうえで、もっとも重要なことだ、と私は考えています。

 内閣委員会での初質問となった森山さん。ことし改正貸金業法で、1人に対する融資総額がその人の年収の3分の1以内に総量規制されましたが、金融庁政務官(内閣府大臣政務官)の和田隆志さん(広島7区)から、「多重債務などの負債の問題で命を絶つということはぜひしないでいただいきたい」との政府のメッセージを引き出しました。

 森山さんは「私は経済産業委員会の兼務で、(内閣委員会にも)所属させていただいておりまして、(経産委では)昨年から中高年の男性50代、60代の自殺に関心を寄せてきました。『経済問題」が理由の第一です。もちろん生命保険を担保とした融資は当然許されていないわけですが、それでも何年か経ったら、『ええんやろ』と言って自殺して、お金を返す、と。こういうような意思を持つ方が多いのではないか、と実感をしております。相談窓口があるんですが、『相談窓口なんか行ったって金貸してくれるわけやなし。そんなもん、役立つか!』というのも風潮としてあるかと思います。金融庁の相談窓口の現状についてお聞かせください」と関西弁をまじえて質問しました。

 答弁に立った和田・金融庁政務官は「今、森山委員ご指摘の通り、自殺の実態をご説明しますと、昨年を通じて多重債務を抱えて、それを苦になくなった方が1630人ほどおられるという統計でございます。それに、連帯保証(人としての)債務など、負債全般にわたって苦しんで命を絶たれた方を数え上げますと、合計3000人を超えておりまして、つまりは(自殺者の)1割はこういった理由に基づくという深刻な事情でございます」との認識を示しました。

 和田政務官は答弁を続け、「ご存じのように、ことし、改正貸金業法が完全施行になりましたので、その関係で、いろいろとお悩みを抱えている方のフォローアップとして、(金融庁に)チームを設置しました。『キャンペーン2010』として、(金融業界、自治体など)関係機関にも働きかけているところでございます。 例えば、さきほど、『窓口に行っても・・・』という話がございましたが、そこは、(金融庁が)幅広く悩みをお聞きしまして、それが債務の悩みであろうが、他の人生の問題であろうが、お答えしていくという幅広い対策をとっています」と説明しました。

 お金というのは、仕事と生活を動かす“荷札”に過ぎません。ですから、のっけから「お金の相談だけしろ」というのは無理な話。その人の生活そのものの実態を把握した上で、生活の立て直しを考えていかなければ解決できません。

 和田隆志さんは、「東大法学部→大蔵省(財務省)官僚→衆議院議員」というまさにエリート経歴を歩いて生きた人です。それならば選挙は圧勝かというと、そうではなく、自民党の「東大法学部→大蔵省(財務省)官僚→衆議院議員」という全く同じ経歴の人と小選挙区で激突してきました。ましてや、その相手、宮沢洋一(宮澤洋一)さんには「元総理大臣の甥っ子」という肩書きも加わりますが、苦労の末、第45回衆院選でついに小選挙区で初めて勝ち上がり、衆院3期目を迎えています。政治家にしては珍しく、とてもハニカミ屋の和田さんですが、政府としての強いメッセージを打ち出すために、「ちなみに・・・」と業界団体が作ってくれたパンフレットを取り出し、ハニカミながらも、金融庁、業界が連携してのフォローアップ体制ができていることをアピールしました。

 
[画像]ハニカミながらパンフレットを紹介する和田隆志・金融庁担当政務官とそのハニカミぶりに苦笑する玄葉光一郎・国家戦略大臣、2010年10月27日衆院内閣委、(衆院インターネット審議中継からキャプチャ)

 日本社会を支える社長さんたちの99%は東大法学部なんか出ていませんから、和田さんはこうやって答弁席でパンフレットを紹介するという、分かりやすい格好で、「多重債務などの負債の問題で命を絶つということはぜひしないでいただいて、私たち社会全体で支援の手をさしのべていきたいと考えて行きます」との政府全体のメッセージを発信しました。

 一方、メッセージ発信はお手の物、フジテレビ系関西テレビ(関テレ)出身でハニカミ知らずの森山さん。「ドラマなんかでも『死んで返せや』というのが横行している」とかつての仲間たちに苦言を呈しました。

 そのうえで、「つまり、借金のこと、『金で死なんで、いいんだよ」というメッセージを(政府としても)しっかりと発信していくということだと思います。『お金の問題で死ななくていいんだ」ということを政府の方でもドーンと言って頂きたく思います。私の質問を終わらせて頂きます。ありがとうございました」と質問を締めました。

 あの夏から1年2ヶ月。143人の政権交代チルドレン(民主党1期生)の中で、森山さんは「仕分け人」だとか「幹事長補佐」だとか陽の当たるポストにはなかなかつけないのですが、言葉以上にドーンと伝わってくるメッセージを感じました。

金融庁の無料相談会など「キャンペーン2010」のホームページ↓
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/20100930.html







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