【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

玄葉光一郎前外相の「ホルムズ海峡の密接な他国はどこ?」に首相「イランかオマーン」と具体的に明示

2015年06月01日 19時36分03秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

町村信孝前(第75代)衆議院議長が亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。

 ◇

【平成27年2015年6月1日(月)衆議院安保特(我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会)】


 防衛省設置法改正案と条約10件の審査が、火曜日と木曜日の参議院外交防衛委員会であるため、安保特は、月曜日の午前9時から7時間、NHK入り首相入り集中的総括質疑となりました。

 「安保法制2法案」(189閣法72号、189閣法73号)が審査されました。

 民主党からは、金曜日の外相答弁混乱により中断した後藤祐一さんの質疑から。「周辺事態」をめぐる平成10年1998年国会答弁と平成11年1999年政府統一見解について。岸田外相は「急に聞かれたので分からなかった」「1998年は、(1997年)ガイドライン策定後で、(1999年)周辺事態法の法案が出る前だった(ことを誤解していた)」などと答弁。これに関する政府統一見解の提出が理事会で協議されることになりました。

 前原誠司元外相は「1997年ガイドラインで(極東有事を削除し)周辺事態をつくったのは、朝鮮半島有事、さらに言えば、アメリカが北朝鮮を爆撃するためだったのだ」と語りました。アシュトン・カーター国防長官が当時も政権にいたものの、爆撃直前に、ジミー・カーター特使(元大統領)が行ったので、戦争は避けられたのだと指摘しました。

 前原さんは、1997年の旧ガイドラインが2015年新ガイドラインになる際に、別表を削除した理由を質問。中谷安全保障法制担当相は「できる項目(ポジティブ・リスト)を明示しないことで、縛られることがないようにするためだ」と答弁。前原さんは「本音が出た。しばられることがないようにすることが狙いだ」とし、「新ガイドラインで何ができるのか、政府に提出させてほしい」とし、理事会で協議されることになりました。

 前原さんは、新ガイドラインの深謀遠慮を落とし込んで、「本音のたてつけの法律にすべし」と迫りました。

●安倍首相、ホルムズ海峡封鎖時の存立危機事態には、イランかオマーンの了承が必要と明示

 玄葉光一郎前外相は、「周辺事態法の議論には私も参加したが、あのときは、野呂田6類型(野呂田芳成=のろた・ほうせい=防衛庁長官による6類型)があった」とし、「周辺事態には当たらないが、(改正案での)重要影響事態に当たる例を提出してほしい」と要求。ここで「宿題3つ」を回避しようと、中谷国務相は「質疑を通じて話す」とかわしました。玄葉さんは、「ホルムズ海峡封鎖の話ばかりだが、マラッカ海峡封鎖でも石油の8割が入ってこなくなる。新ガイドラインでは、平素から南シナ海のパトロールをしなければならないのではないか」と問いました。

 安倍首相(自民党総裁=通称・ホルムズ安倍)は「ホルムズ海峡は迂回路があるが、マラッカ海峡は迂回路がない」として、ペルシャ湾と南シナ海は別だとの詭弁を弄しました。

 玄葉さんが、「(武力攻撃事態法改正条文の入っている)存立危機事態は他国の領土領海領空に行く可能性があるので、当事国の了承が必要だが、ホルムズ海峡だと、我が国と密接な関係にある他国は、どこになるのか」と問いました。

 これに対して、安倍首相は「イランとオマーンだ」と答弁しました。

 安倍さんは昨年5月から「朝鮮半島から非難する赤子を抱いた赤ちゃんを乗せた艦船」、昨年7月から「ホルムズ海峡の機雷封鎖」、今年5月から「北朝鮮の弾道ミサイル発射」を例に挙げていますが、ホルムズ海峡封鎖での「我が国と密接な関係にある他国」「当事国」が

 イラン、オマーン

 の2か国だと明示したのはこれが初めて。

 「2年で2%」にならないのは「原油安で時期をはみ出た」と語る、どこかの中央銀行総裁のような風情。

●ならば、イランとのイラン・イスラム革命後初の条約「受刑者相互引き渡し協定条約」の今国会承認を優先すべし

 ちなみに、日本・オマーンでは1998年航空協定条約があります。一方、今国会には、「日本・イラン受刑者相互引き渡し協定条約の承認を求める件」(189条約15号)が提出されています。驚くべきことに、この条約は、イラン・イスラム革命後、初めて結ぶ条約になります。「イランイスラム革命後初」というと、大事のように感じますが、外務省のウェブサイトによると、1974年にビザ免除のとりきめを結んだあと、1978年にイラン・イスラム革命が起きたので、それから37年後、初めての2国間条約。今国会、この条約の審査を安保法制よりも優先すべきでしょう。 

 ◇

 委員室に戻ります。

 外務委筆頭理事を兼ねる、岡田代表側近の寺田学さんは「専守防衛」について審議。

 細野豪志政調会長は「民主党は近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道援助は積極的にやる」と議論を展開しました。共産党の穀田恵二さんは「2006年に航空自衛隊ドクトリンという独自研究がされ、この中で、国家指導者に対して空自が積極的に提言すべしとの内容が空幕長にまで上がっている」とし、当時の空幕長の証人喚問を求め、理事会で協議することになりました。

 浜田委員長は「次回は公報をもってお知らせします」としました。あすは参・委員会に中谷防衛相が行くので、衆・安保特はありません。

【同日 参議院東日本大震災復興および原子力問題特別委員会】

 一般質疑、とくに復興について、が開かれ、竹下復興相、山谷防災相らが答弁しました。次の5年間は一部自治体負担になります。

【先週金曜日、平成27年2015年5月29日 法律公布】

 先週金曜日の、おそらく夕方に、官報特別号外が出ていました。

 「持続可能な医療保険制度を構築するための改正国民健康保険法」(189閣法28号)が、平成27年5月29日法律31号として公布されました。組合健保の後期高齢者支援料の報酬割のプログラム規定(27年度3分の1、28年度2分の1、29年度総報酬割)の27年度分は直ちに施行され、30年4月1日まで段階的に施行されます。実施に必要な政令も公布され、政令も告示されました。

 私の手元の計算では、大企業正社員年収1000万円近くの人で、月に500円くらいの負担増になるのではないでしょうか。勤めが1人で教育費、住宅費がかかる世帯ならば、月500円といっても大変です。おそらく6月25日の給料から天引きが始まるのではないでしょうか。

 この件に関して、「大企業正社員の高収入層が、年末解散を含めて、長時間労働短時間インターバルもあり、ずっと政治から置き去りにされているのではないか」とたまたま公布時刻ごろ、民主党の岡田克也代表の定例記者会見で聞いてみました。岡田さんは「母子家庭、父子家庭、貧困層も置き去りにされている」としたうえで、医療保険(国保、組合健保)から後期高齢者医療制度への「支援料」の制度自体が本質的に間違っていると指摘しました。念頭に置いてほしいのは、厚生族の岡田さんは、ずっと後期高齢者制度に反対しているということ。それと、保険は保険として機能させるべきだという「新自由主義的な本音」をベースに、そのうえで「足りない分は税を投入すべきだ」という社会保障と税の一体改革で顕著だった社会保障論を持っているということです。平成20年2008年4月1日のスタート時点は、自民党福田内閣・舛添厚労相の時代です。そのとき、民主党の直嶋正行政調会長は「廃止法案」を検討しましたが、自民党からの度重なる財源論批判の下、野党のみの政調会で計算しましたが、これだけは「所要数千億円」 と書くのが精いっぱいでした。かなり長期的な課題になりますが、岡田さんは次のように語りました

「大企業のサラリーマンの方が特に置き去りになっているのか。例えば母子家庭

・父子家庭、あるいは貧困の中で苦しんでいる子どもたち、置き去りになっている
人はたくさんおります。
 今回の国保の改正の中で出てきた話は総報酬制で、総報酬制は我々与党の時
に合意している話だと記憶しているのですが、もう少し大きな視点で考える問題だ
と私は思います。
 これは代表選挙の時などに申し上げていたのですが、やはり高齢者の医療に
ついて、現役世代が保険料の中から負担するということは基本的におかしなこと
だと私は思います。これは党の中でそういう考え方で合意しているわけではない
のですが、やはり保険というのは自分たちの保険の範囲にある人たちがお互い
に助け合うというのが保険であって、その保険制度の外にある高齢者の皆さん
の医療費を賄うのは、本来、税が中心であるべきと私は思います。ただ、それ
は非常に大きな議論なので、あまり簡単に解決する問題ではない。少し長い視
点で問題意識を持って取り組んでいきたいと思います。
 これは、今の正規・非正規の話とも関係します。正規雇用で働いている人たち
に保険料の負担が、自分たちだけではなくて高齢者の部分も含めてかかる。企
業側の負担もそれで増える。ということになると、正社員の事業主負担というの
は、それは非正規雇用の場合と比べて重くなりますので、同じ給料であっても企
業からの負担感で見ると正社員のほうが多くなる。そういうこともやはり企業が
正社員ではなくて非正規雇用を選ぶ一つの原因にもなっているので、そういう大
きな視点の中で取り上げていかなければいけない問題だと思います。」

以上 



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