【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

「刑法改正案」の今国会提出断念、「明治40年以来の懲役・禁固を廃止した新・自由刑」は2021年秋以降に、今の第204回国会では来春施行「18歳成年民法」に合わせた少年法改正案に万全を尽くす方針

2021年01月24日 08時30分18秒 | 第204通常国会令和3年2021年
 政府は、きょねん10月に法制審議会から答申を受けた「自由刑」を創設する「刑法改正案」を開催中の第204回通常国会に提出さず、秋以降に先送ることを決めました。

 4年前の1月1日付の読売新聞記事で、明治40年刑法ができて初めて「懲役刑」「禁固刑」を廃止して「自由刑」とする検討をすると報じました。その後、法制審議会に諮問し、きょねん10月29日に「懲役刑と禁固刑を一本化した新しい自由刑」をつくる要綱の答申を受けました。同じ要綱に盛り込まれた「少年法改正案」(204閣法 号)の来月中旬の国会提出を優先し、同じ法務省刑事局(定員わずか60名)がブラック労働化しかねない「刑法改正案」の同時審議は見送ることにしたようです。法案の審議は、次の第49回衆院選後になります。

 当ニュースサイトは、上述の2017年1月の記事で「2018年通常国会提出も視野」、2020年8月には「2021年通常国会にも提出したいかまえ、成立は解散後か」と打ちました。「どれなんだよ」とおしかりを受けそうですが、きょねん2020年通常国会で、黒川弘務元法務省官房長の検事総長を念頭に置いた「検察庁法改正案」で大混乱し、たった60名しか職員がいない法務省刑事局がブラック労働と化したこともあってか負担を軽減する方向になったとみられます。

 また、矯正施設が満杯になりかけていたことから、法務省矯正局の都合もありそうでした。ことしになってから、刑務官と受刑者が横浜刑務所・千葉刑務所などで50名以上の新型コロナウイルス感染症クラスターがおきています。あまり報道されていませんが、受刑者からジャーナリストへ告発のハガキが届く騒動になっています。このような刑事局、矯正局、保護局の現状もあり、来年4月の改正民法施行よりも前に、18歳・19歳の少年法改正案に万全を尽くしたい意向だと思われます。

 なお先送りされたとはいえ、きょねん10月29日の法制審議会総会での次の議事録の通りに法案が作成されることになると思います。以下、議事録を参考までコピペします。

法制審議会議事録から抜粋引用はじめ]

法制審議会 第188回会議 議事録






第1 日 時  令和2年10月29日(木)   自 午後2時00分                         至 午後2時50分
第2 場 所  法務省大会議室
第3 議 題   法制審議会における情報通信機器を利用した会議への出席について   少年法における少年の年齢及び犯罪者処遇を充実させるための刑事法の整備に関する諮問第103号について

(中略)


次に,答申案6ページを御覧ください。別添2としている要綱(骨子)では,犯罪者に対する処遇を一層充実させるために講ずるべき法整備等の措置を掲げています。
  「1 自由刑の単一化」では,懲役及び禁錮を単一化して「新たな自由刑」を創設し,この自由刑について,刑事施設に拘置し,改善更生を図るため,必要な作業を行わせ,又は必要な指導を行うものとするなどとしています。これは,受刑者の改善更生や再犯防止の重要性についての認識の高まり等を踏まえ,刑事施設内での処遇の充実を図るためには,例えば,学力の不足により社会生活に支障がある者など,教育等を十全に行うべき若年者に対しては,必ずしも一律に作業を行わせるのではなく,作業を大幅に減らし,又は作業をさせずに改善指導や教科指導を行うなど,個々の受刑者の特性に応じた柔軟かつ適切な処遇を可能とすべきと考えられたことによるものです。
  「2 若年受刑者に対する処遇調査の充実」では,若年受刑者に充実した処遇を行う前提として,個々の受刑者の問題性を的確に把握できるよう,鑑別の対象となる受刑者の年齢の上限を「20歳未満」から「おおむね26歳未満」に引き上げることとしています。
  「3 若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」では,若年受刑者の処遇の充実を推進するため,若年受刑者に対する処遇原則を明確化するなどとしています。
  「4 刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度」では,被害者等の心情等を適切に矯正処遇・矯正教育にいかすため,刑事施設又は少年院の長が,被害者等の心情等を聴取するとともに,それを一定の範囲で受刑者等に伝達する仕組みを設けるなどとしています。
  「5 刑の全部の執行猶予制度の拡充」では,保護観察付執行猶予の活用を図るとともに,執行猶予制度の再犯防止機能を十全なものとする観点から,次の3点,すなわち,保護観察付執行猶予中の再犯であっても,情状に特に酌量すべきものがあるときは,再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができるようにすること,執行猶予中の再犯について,再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を1年から2年に引き上げること,猶予期間中に再犯に及んだ場合に,その有罪判決の確定が猶予期間の経過後となった場合でも,猶予期間が経過した当初の刑を執行できるようにする仕組みを設けることとしています。
  「6 刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用促進」では,適時の仮解除を可能とすることにより,対象者の改善更生の意欲を高める観点から,仮解除に関する判断・決定の主体を地方更生保護委員会から保護観察所の長に変更するなどとしています。
  「7 新たなアセスメントツールを活用した保護観察処遇の充実,特別遵守事項の類型の追加」では,保護観察対象者が抱える様々な問題性の改善を図る観点から,更生保護事業者等が実施する処遇プログラムの受講等を保護観察の特別遵守事項として設定できるようにするなどとしています。
  「8 犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実」では,保護観察対象者に被害者等の心情・状況等を理解させ,被害を回復すべき責任を自覚させるための指導を充実させる観点から,保護観察官等の指導に応じてとった行動の申告や関係資料の提示を保護観察の遵守事項の類型に加えるなどとしています。
  「9 保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用」では,若年の仮釈放者及び執行猶予者に対する保護観察において,より適切な処遇を行うため,保護観察所の長が鑑別を求めることができることとしています。
  「10 更生保護事業の体系の見直し等」は,更生保護事業の名称を各事業内容に即したものに変更するほか,特定の犯罪的傾向の改善のための援助の活用や関係機関との連携推進等のため,所要の措置を講ずることとしています。
  「11 更生緊急保護の対象の拡大等」は,罪を犯した者の改善更生・再犯防止のため,早期に安定した生活環境を確保できるようにするため,次の3点,すなわち,いずれも保護観察所の長が,検察官において直ちに訴追を必要としないと認める被疑者に対する更生緊急保護,勾留中の被疑者についての生活環境の調整,満期釈放者に対する援助や関係機関への助言等を行うことができることとしています。

(後略)

[法制審議会議事録から抜粋引用おわり]

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