【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【11/2】自民「日本学術会議に在籍したノーベル賞受賞者は6人だけ」立憲に対して首相「官僚を降格させたことは一度も無い」と気色ばむ、3次補正言及や審議中断は無く首相が無難に乗り切った印象【追記有】

2020年11月02日 17時24分54秒 | 第203回臨時国会(2020年10月下旬)菅首相初答弁
(初投稿は2020-11-02 13:02:58で、午後5時25分追記してタイムスタンプを更新)

[写真]日本学術会議前でサングラス姿になり反知性主義者だと表現する筆者、先週2020年10月下旬撮影。

【衆議院予算委員会 令和2年2020年11月2日(月)】

 菅内閣最初の基本的質疑が始まりました。自民党は3時間割り当てられ、午前の3時間を使って質問しました。

 山際大志郎さんの「ワクチン開発が進んでいる」との問いに、西村康稔コロナ担当相は「コロナ特措法は強制力を持たない緩やかな法律だ」と強調。きのうの日経新聞で田村憲久・厚労相が意欲を見せた感染症法改正も念頭においてか、西村さんは「感染症法との関係をどう考えるか。特措法による国と県の関係のほかに、国と医療機関との関係や、憲法12条と公共の福祉による、強制力の法的整理が必要だ」と語りましたが、再改正の必要性については言及しませんでした。

 大塚拓さんは前置きなく「日本学術会議について、一般の方は初めて耳にした方も多いのではないか」と議題にしました。大塚さんは「ノーベル賞受賞者のうち学術会議に在籍した人は何人か」と問うと、福井・内閣府日本学術会議事務局長(昭和60年旧総理府採用)は「27人のうち6人だ」と答弁しました。

 大塚さんのやりとりでG7のアカデミーでは(1)日本だけがみなし公務員(2)アメリカ・カナダでは会員が会費を納める(3)外国人会員がいないのは日本だけーーなどの特異な実態が明かされました。またコロナに関する提言が日本学術会議からしばらく出てこなかったが、海外では200ページの「ワクチン配分に関する提言」をまとめたアカデミーもあると指摘。

 大塚さんの問いに、文部科学省科学技術・学術政策局長が答弁。法学政治学は8177学者のうち4会員で、電気通信工学では15万3942学者(企業在籍含む)から4会員で、なれる確率が100倍違うとし、現会員の既得権益となっており、年10・5億円の税金を投じる必要がないとしました。

 委員会は午後は公明党が質問を始めました。その後、立憲民主党となり、同党の議員は全員、日本学術会議について質問すると先週末、通告しました。

【追記 午後5時5分】

●「人間の安全保障をおびやかそうとしている」と首相が公明にすり寄る

 午後1時からは公明党。竹内譲・新政調会長が「ワクチンで低所得の人が取り残されることがあってはならない」と質問すると、菅首相はのっけから「新型コロナは人間の安全保障をおびやかそうとしている」とさっそく、公明党や創価学会が大事にする「人間の安全保障」をなぞらえて、公明党にすり寄りました。

 雇用創出について、竹内さんは「地方に交付金を渡して地方で雇用を増やしてもらうことも必要ではないか」と提案しましたが、田村厚労相は「企業の中でやりくりしてもらって、失業のない雇用安定に最善をつくしたい」ととどまりました。竹内さんは「デジタル寺子屋」を提唱。竹内さんは「総理と私は政令指定都市の議員の経験がある。そこで、不妊治療の保険適用は慧眼だ、と公明党として感心した」と上から目線で評価しました。

●公明党、携帯4割値下げ前のめりに首相らも受け止める

 公明党で、東京12区で太田昭宏さんと代替わりする、現在比例の岡本三成さんですが、やや気負いを感じました。「(東京12区の)北区の岩淵水門が決壊すると、荒川が氾濫し、200万人が被災する」と強調し、貯水ダムの暫定的な運用について、赤羽国交大臣に次善策を要請しました。

 岡本さんは「携帯電話は、神崎武法郵政大臣が貸与から買取にして料金を引き下げた。それ以来公明党は取り組んでいる」と太田さんの前の党首の名前まで引き合いに出しました。岡本さんは「携帯電話4割引き下げは政権公約か」とせまると、首相は「進んでいますから、武田総務大臣から答弁させます」と応じるなど公明党へのサービスを見せました。とはいえ、総理や与党が値下げの圧力をかけるのは、大衆迎合的で、本来は賃金が上がる政治をすべきです。

●江田憲司さん、首相に「逆だったんじゃないですか」

 立憲民主党のトップバッターは江田憲司さん。「橋本内閣のころ、総理の初当選(初出馬時は経世会所属)のときにお世話させていただいた」とすると、菅さんは「このような立場で国会論戦をすることになるとは思わなかった。(江田首相と菅議員というように)逆だったんじゃないですか」と述べました。江田さんはそう言われて、おそらくうれしい人なんだろうと忖度します。

 江田さんは、経済政策について所得税の減税と法人税率の30%への引き上げを要求。私はどうしても、経済政策なのに、税率の話になるのか、いまだにまったく相いれません。

 江田さんは日本学術会議の任命漏れの理由を会長に伝えないと、次回の推薦名簿をつくれない、と語りました。なお、江田さんが質問している時間中に、明後日午前9時45分からの岡田克也さんの質問通告に日本学術会議が含まれていないことを確認。安心して堂々と反知性主義を唱えます。

●首相「官僚を降格させたことは一度もない」

 今井雅人さんは、菅さんの内閣法制局長官や自治税務局長の人事に迫りました。これに対して菅さんは「私が官僚の降格人事をした、と言っていたが、私は官僚を降格させたことは一度も無い。これはテレビで全国放送されていますから、訂正してください」と気色ばみ、官僚を左遷したことを認めました。

●辻元筆頭理事止めるも止まらず

 この後、辻元清美筆頭理事が出て、審議を止めようとしましたが、金田勝年委員長は時計を止めませんでした。金田さんは「答弁していると思う。個別の人事については言えない、と言っている。それで答弁していると思いますが」と応じ、野党は不発のままでした。

 川内博史さんは「学術会議の6人漏れの、決裁文書はあるのか」と問いました。「桜を見る会」でもおなじみの内閣府の大塚官房長が総理に代わって答弁を求めて、はぐらかしました。

●死後判明のコロナ患者は54名

 警察庁刑事局長は、警察の検視によって、死亡後に、コロナPCR陽性だったと判明した人について、昨日までに54名だと答弁しました。これまで日本では感染者10万人死者2000人ペースですので、緊急事態宣言中の「陰謀論」はなかったと判断してよい答弁だと考えます。

 奥野総一郎さんは河井克行・案里夫妻について議員辞職を勧告するよう迫りました。菅さんは「我が党に所属する議員が起訴されたのはまことに残念だ。それ以上は公判中なのでさしひかえる」と語りました。

【参議院 同日】

 とくにありませんでした。

【前夜の選挙】

 既に他の記事に書いた通り、いわゆる大阪都構想がゆうべ否決され、松井一郎・維新代表が、3年後の大阪市長満了で、政界引退すると表明しました。

●あさっての予定

 祝日を挟んで、あさって11/4(水)午前8時55分から、衆議院予算委員会基本的質疑2日目になります。9時から枝野代表、9時45分から岡田克也常任顧問です。

【追記おわり】

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インターネット版官報

Ⓒ2020年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki

いわゆる大阪都構想否決で、維新の勢力ピークの観測が高まる、菅首相はIR・万博重視、野党は補完勢力第三極から二大政党的勢力に引き込みたいかまえ

2020年11月02日 12時43分15秒 | 第49回衆院選(2021年10月 岸田続投 枝野辞任)
[写真]衆議院第一議員会館、ことし2020年6月。

 個人的に地方選挙と国政を結びつけたくないのですが、一夜明けた報道を見ると、かなり大きな影響となりそうです。

 大阪市を廃止し、4特別区を新設する、いわゆる「大阪都構想」の投開票が、きのう令和2年2020年11月1日(日)にあり、67万票対68万票で否決されました。維新と衆議院小選挙区での競合をさけた公明党(府本部代表は佐藤茂樹・衆議院議員)が賛成し、自民党・共産党・立憲民主党が反対の運動をしました。

 国政政党「維新」の松井一郎代表は、大阪市長の任期を全うした後に、政界を引退すると明言。吉村知事は、「3度目はない」として、「都構想」の断念を表明。府・市二重行政の改革を訴えて、府内の市外や、兵庫県などに、市長・府議・市議の強力な支部をつくりあげ、参議院議員や全国比例の議員をつくりあげてきた維新の12年の旋風にとって、ピークを迎えたことは明確です。

 松井さんらと仲が良く、IRカジノ施設を推進してきた菅義偉首相は「2度にわたり賛成と反対が拮抗し、結果的に否決をされたが、大阪市民は大変悩まれたのではないか」とダメージコントロールし、今後については「経済を回復させていくなか、地方を元気にするためにいろんな議論をしていくことは大事だと思う」と述べ、IRや万博を推進していくための求心力が必要だ、との考えをにじませました。

 立憲民主党の安住淳国会対策委員長は「この都構想を実現するために国政に出てきた」とし、松野頼久代表・松浪健太幹事長の維新の会国会議員団結成に思いを馳せました。そのうえで「5年間やってきて票は増えていない。この10年間大阪の主役は維新だった。やはり第三極というのはマスコミがもてはやすほど大きくはならない。小選挙区で北海道から沖縄まで勝つとなると、やはり私は二大政党的な勢力に収れんされると思う」との趣旨の発言をしました。

 2015年の平和安全法制などで見せた、国政与党・自民党の補完勢力との位置づけから、野党陣営に引き込もうという最初の発言で、昼のNHKニュースでも報じられました。

 gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/ASNC230X5NC2UTFK003

以上です。

竹内譲・公明党新政調会長「雇用創出の政策パッケージ」策定を要求、コロナ長期戦に向けた第3次補正予算案に反映の見通し

2020年11月02日 05時56分12秒 | 第204通常国会令和3年2021年
 竹内譲・公明党新政調会長は、きのう令和2年2020年11月1日の「NHK日曜討論」で、「雇用を維持するだけでなく、新たな政策パッケージをつくって、雇用を生み出していくべきだ 」と語りました。

 第3次補正予算案(2021年1月に第204回通常国会に提出)の編成に先立つ、政策パッケージで、雇用調整助成金の延長だけでなく、具体的な雇用創出メニューをつくるべきだとした発言です。

 これは筆者も必要性を感じていたので、我が意を得たりという感じがしました。竹内さんはこの後、午後1時から衆・予算委で質問するので言及があるかもしれません。

 コロナ対策の第3次補正予算案は、第1・2次と同じく、(1)GoToキャンペーンの延長(2)雇用調整助成金の延長と保険料ではない一般会計の活用の是非(3)第2次特別給付金(4)第2次持続化給付金が焦点になります。このうち(1)と(2)は実現しそうです。

 しかし、これまでは異例の現金給付中心でした。有効求人倍率はほぼ1倍水準となり就業者は減りその一部が完全失業者となっています。フランス・スペインなど欧州は現在最大のピークが来ており、輸出製造業が来年にかけてさらに冷え込みそうです。数年の長期戦になりそうです。

 一方、知的労働者を中心に雇用が激減し、新しい求人は極めて少なく「巣篭り需要向けのテレフォンアポインター」も早くも減りだしました。

 雇用保険や雇調金などで懐に届く金額とたとえ同額でも仕事を作り出す必要があります。このため、一つ一つの額が小さくても、細かい雇用をつくりだすためのしかけづくりが必要となります。

 雇用創出のためのメニューは、概算要求では求められておらず、各府省庁が知恵を出すことになるかもしれません。

 対決法案が内閣委と農水委以外にはあまりない今第203回臨時国会の開催中ですが、与党の政策パッケージづくりは、早ければ、来週火曜日ごろから始まりそうです。これをもとにした第3次補正予算案の決定は今国会閉会後の12月中旬の見通しで、10兆ないし15兆円規模となると思われます。特例公債の追加発行は5兆円強にとどまりそうです。今年度一般会計は最終補正後170兆円台となりそうです。

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