【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

消費税増税で自公早くも「増税後の使い道」を議論 小沢さん歴史に1歩遅れる

2012年05月31日 19時37分53秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

【衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会 2012年5月31日(木)】

 きょうは今通常国会では初めて、衆議院第1委員室に直接出向いて、7時間の審議を傍聴しました。

 中野寛成委員長の名裁きで、審議ストップが1分もなく進む「100時間審議」。当たり前といえば当たり前ですが、小沢一郎さんが自民党国対委員長の時代には考えられなかったことです。小沢さんはおそらく、この委員会の審議を聞いていないでしょうし、コンパクトに内容を伝える側近もいないでしょう。

 小沢一郎さんが時代に半歩から1歩完全に遅れたことを実感しました。

 今日と明日は税制をおもに審議します。

 兵庫県庁財政課職員として10年以上連続で予算を組んだ自民党の谷公一さんは、消費税増税分の国から自治体への配分(地方消費税と地方交付税の定率繰り入れ分)について、8%時、10%時、再増税時の配分増を要求。自民党の福井照さんは、自民党の国土強靱化プランを説明し、公共事業を増やすとともに、現政権の全国防災費について増額を要求。公明党で衆・議運委理事の遠藤乙彦さんは「消費税が社会保障の目的税になる(一体改革法案が成立する)ことは、日本国憲法第25条の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利からも望ましい」と語り、事実上、生活保護の国庫支出の安定化を意図した発言をしました。さらに、「防災減災ニューディール(社会資本の修繕)で10年間で100兆円の歳出を提案する」としました。

 これらの質問はすべて、消費増税法の成立を見越したうえで、増収分の配分で主導権を握りたいとする自民党と公明党の意図が見え隠れしました。つまり、小沢さんが「大阪の陣」と考える消費増税法案の採決日の先を、自民党と公明党はとっくに見ていることになります。小沢さんが一歩遅れたことは、ノンストップ審議の歴史の速さの前では、もう取り戻せないでしょう。マスコミ・新聞報道は若い人材を活かせばギリギリ生き残れる社もあるでしょう。

 消費増税は「社会保障4経費(子ども子育て、医療、年金、介護)の充実と財源の安定化」との一体改革。
 そして、消費増税と「身を切る努力(覚悟)」も車の両輪とされてきました。

 昨日から今日にかけて、経済成長戦略が与野党・政府とも「必要だ」として、議論の柱になってきました。

 民主党1期生の勝又恒一郎さんは「歴史と伝統のある第一委員室での初めての質問です」と切り出し、ライフイノベーション(医療イノベーション)を成長戦略として打ち出しました。勝又さんによると、医療機器マーケットは世界で年5%~8%成長しているとしました。ちなみに、私の大学同級生で医療機器メーカー社員も、昨年が入社15年目でイチバン営業が忙しかったそうです。勝又さんは「日本は医療機器を薬事法でしばってきた、世界でも少ない事例だと思う」として、小宮山洋子厚労相に善処を求めました。そして、医療機器のメーカーは80%が中小企業で、毎年およそ1200件の厚労省への申請の80%は既存機器の医師からの要請によるマイナーチェンジが多いとして、政府の取り組みで、日本の持てる力を大きく引き出せるフロンティアがあると指摘しました。神奈川県議時代から取り組んできたとしました。

 自民党の大蔵省出身で元防衛庁長官の大野功統さんは、「増税をするうえで、イチバン大事なのは経済成長です。もちろん歳出の削減もすすめていかないといけないですが」と述べると、答弁に立った副総理で規制改革も担当する岡田克也さんは「委員のご指摘の通りです」として、新成長戦略改め日本再生戦略に注目してほしいとしました。そのうえで、大野さんが増税後の歳入増をみすえて、「コンクリートから人へ、を取り消せ」と促すと、岡田さんは「それはまったく違う」としました。

 自民党総裁の谷垣禎一シャドウ首相が第179臨時国会の昨年10月31日の本会議で、平成23年度第3次補正予算(復興補正)の質問で「計上されている全国防災対策費などは全国で行われるハード事業であり、中身において、通常の建設公債発行対象経費と明確に区別が可能なものとは到底思えず、復興債及びその償還財源としての税制措置で賄わなければならない理由がわかりません」と否定的に質問演説しました。ところが、この後の予算委員会では衆参とも自民党議員が全国防災対策費に関して質問せず、大将に続かず残念でした。

 その理由がきょうようやく分かりました。

 自民党の福井照さんの質問に対して、安住淳・財務大臣(昨年9月就任)は「全国防災対策費は補正で対応しました。赤字国債でも建設国債でも(復興債でも)市中がどう見るか、国債を買う人がいないと流通しません」と答弁。さらに続けて、「福井先生のご地元の高知県でも(予算を)対応させていただきましたし、(議員傍聴席に座っている)二階(俊博)先生のご地元の和歌山県でも対応させていただきました」というと、質問者席の福井さんは真っ赤になって手を振って答弁を制そうとし、筆頭理事席の伊吹文明さんは「そんなこと関係ないよ」と強い口調で答弁をやめさせようとしました。ところが、アニキ(安住蔵相)は、「いやあ伊吹先生、関係ないといいますけれども・・・」とニヤニヤしながら答弁を続け、先輩蔵相の伊吹さんを完全に食ってしまいました。

 岡田さんは「高度成長の惰性から早く離れなければならない。企業はバブル崩壊で考えを変えた。国会だけがいまだに右肩上がりの発想だ」と指摘しました。

 福井さんは「アジアの成長を取り込むことが大事だ」とし、枝野幸男・経済産業大臣が「アジアの中間所得層を大事にし、日本を豊かさを実感できる社会、将来に希望を持てる社会にしたい」と答弁しました。

 遠藤さんは「タンザニアに、沖縄出身の30歳の日本人でビジネスで大成功し、年商300億円で100人以上を使っている同国で有名な若者がいる」として、「英語教育の見直しで、グローバルな人材の育成がソリューション(経済成長の基盤)だ」とました。「新成長戦略はいいアイディアが多いが全力を尽くす、といった精神論が多くメニュー表にとどまっており、戦略になっていない」と指摘し、私もその通りだなと感じました。「今思い付いた話ですが、マクロ経済政策基本法をつくったらどうか」と述べ、議運理事として「この委員会での徹底審議を望みます」と締めくくりました。

 
[画像]衆議院インターネット審議中継からキャプチャ、トリミング。

 そして、散会後は今日もこのシーン。岡田さんが伊吹筆頭理事に歩み寄り、打ち合わせ。きょうは逢沢一郎次席理事も「陪席」の格好で、3人で話していました。衆院第一委員室の一般傍聴席は2階にあるのですが、耳をこらすと、伊吹さんは「あすは本会議が午後1時からあるから時間が・・・」と言っていました。これが何を意味するかですが、あすの本会議の間に、修正協議の打ち合わせをしようという意味からもしれません。

 小沢一郎さんは、政権交代後に、一度も国会で発言していません。国立国会図書館の「国会会議録検索システム」で調べれば分かります。国会で発言せず、裏から操る政治が時代遅れだった上に、こうして国会でドンドンスピード感で審議が進む時代に対応できる人材が小沢グループ内にいないため、情報が入らない状態になっているのでしょう。

 さあ、前へ進みましょう。

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