【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

一体改革特、自民党質問がスタート 伊吹文明筆頭理事はもっとまっすぐな志でのぞめ!

2012年05月21日 17時43分05秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 一体改革特(中野寛成委員長)は2012年5月21日(月)、野党の質問が行われ、NHKで中継されました。

 まず、きょうを通じて、「小沢切り」の質問はなかったようで、国政が新しい時代に入りました。

 自民党からは「清和会」の質問者はいませんでした。清和会は森喜朗元首相(元文相)、町村信孝会長(元文相)ら「幼稚園族」が多い傾向があります。文科大臣経験がある伊吹文明さんが質問しましたが、加藤勝信さん、鴨下一郎さんら、厚生族(保育園族)が中心。あす2日目に「子ども子育て新システム」に関する集中審議があるようですが、この日程は自民党内権力抗争によるものかもしれません。

 法案は「消費税増税法案」「年金改革法案」「子ども子育て新システム(幼保一元化・幼保一体化)」の3領域7法案。

 ぶっ通しの審議、私も現地、ネット、NHKも駆使して徹底的に見ていくつもりです。この法案にメドをつけないと、解散も衆参ダブルも継続審査も、どの選択肢も何も始まりません。 

 ちょっと、今夜は私、経営者の方々の勉強にお呼ばれしておりますので、「何事も初めが関心」ですので、NHKで見ながら中間地点でのまとめをしておきます。

 トップバッターは石原伸晃幹事長で、「まずは定数是正」から入りました。まあ、その通りだと感じます。そして、こう見えても国会は進化していて、180閣法72号「社会保障の安定した財源を確保するための消費税増税法案」について、取り上げました。これまではNHK入り衆院第1委員室で、具体的な議案(予算案・法案)の中味を審議することは少なかったのが実態です。石原さんは「東京選出だから言っていると言われるかもしれないが」としながら、当ブログがすでに問題点を指摘している同法案の第5条の相続税増税に明白に反対をしました。さすがノブテルさんという感じで、修正協議ではまっさきに与野党が削除すべきでしょう。そもそも第177国会の意思として閣法から修正削除されたのと全く同じ。衆参ねじれによる熟議の国会である民自公3党協議の数少ない成果であり、衆院も参院も会派の構成が変わっていない第45期衆院・第21・22期参院の間にはやるべきではありません。財務省が国会にケンカを売っているようにも思えます。むしろ、同じ法案の第6条にある「租税特別措置法(租特)改正」にある、生前贈与をいかすことで、マネーを動かし、税収を確保すべきです。経済あっての税収であり、税収あっての財政であります。

 最大のキーマンと思われる、伊吹文明筆頭理事が2番手。まず、サミット帰りの野田総理に、先週の本会議(3時間×3回)の議事録、とくに大島理森さんや野田毅さんの議事録を取り寄せて読んで、整理したかと質問しました。野田総理はずっとひな壇で聞き、答弁もしていましたが、取り寄せていないということで、先輩財務大臣・先輩議員でもある伊吹さんは委員会が終わったら、公邸に帰って、目を通して欲しいとうながしました。

 そして、自民党政権の失敗の本質として「自信が過信になって過信がうぬぼれになった」として政権を失ったとし、「私たち反省して新しい綱領で自民党はやっていますが、なかなか国民のみなさんには理解してもらえないんですがね」とぽつり。

 で、ここで、伊吹さんの第45回衆院選の敗因認識に、野田総理、あるいは私も明らかに間違いがあるのを認めました。

 伊吹さんは前回の衆院選について、「私はいつも午前10時ぐらいに(有権者として)投票に行くが、前回の衆院選はお子さんを抱いた若い世代が連れ添って来ていた。あっこれは民主党マニフェストの子ども手当だな」と感じたとしました。これについて、野田総理は「それはいいことで次もそうあってほしい」。

 私は20歳代後半~30歳代~40歳代の子育て世代がお子さんを抱いて夫婦揃って投票にくる状況は、その2年前の第21回参院選(2007年7月)に気付いていました。伊吹さんは自分の投票所だけでしょうが、私は自転車で近所を回っています。ほとんど小学校が投票所になりますが、その投票区ごとの微妙な地域性も生まれ育ったなかで分かっているつもりです。 午前10時ではないかもしれないですが、この有権者たちは、半ズボン姿で子連れで夫婦連れです。これまでは夫婦連れは意外と少なく、社会的地位の高い者が夫婦連れを避ける傾向がありました。しかし、子育て世代は、住まいがある地域社会においては地位はあまりありません。勤める会社の名前は国際的に地位が高いかもしれませんが。そして、私は政治家と有権者の間のオピニオン・リーダーの存在が日本国には必要だと考え、この「一体改革」も「議論から説得へ」という震災後日本デモクラシーの練習場だという認識を持っていますが、この投票者は、事前に夫婦で投票行動を話し合い決めています。選挙ごとに変えています。そして、投票率は極めて高い。そして、事前の電話による世論調査には答えておらず、新聞・政党の調査に現れにくい。初めから「団塊ジュニア」を中心に人口は多く、投票率が高く、夫婦で行動し、半ズボン姿だけど雨が降っても投票率は高い。この層が政権交代の担い手であり、だから、小沢一郎氏が「全国民からの要望だ」とした「子ども手当(来月から児童手当に改称)の所得制限」に反発したんです。ちょうど、巨人の1リーグ構想に突如パリーグファンが抵抗したときに、世論が驚いたのと似た、足腰の強い世論層があるんです。

 伊吹先生は京都1区の生まれで選出です。地元の30歳代の社会を見る眼はより肥えたものがあるでしょう。実際に日本共産党の候補者に数百票差まで追い上げられた経験がありますが、そのときも最終的には勝っています。足腰の強い支持者(オピニオン・リーダー)がついているからでしょう。そのときの候補者は現在は参議院で、同党の参議院幹事長(兼)国対委員長になっています。

 伊吹さんの質問は、必死に話し合い解散のうえ、消費税増税をしようと「総理の首に鈴をつける」ものでした。しかし、そのようなテクニックは不要です。伊吹さんは自分からも昨年度3次補正のしめくくり質疑に立った話をしました。国会史上もっとも長かった2011年震災イヤー国会での、事実上、自民党の最後のメッセージでした。それは「消費税増税法案を採決せずに、マニフェストに入れて解散しなさい。うちも入れますから」。つまり、民主党政権が消費増税法を通して解散して、民主党がボロ負けしたら、自民党政権が2014年4月に消費税引き上げの政令を実施できない、という状況を畏れているのだと推測できます。そして、谷垣禎一総裁の後見人的存在であることから、9月に寝首をかきかねない石原伸晃・現幹事長を牽制する場面があるなど、なんとも自民党らしいやりとりがありました。

 しかし、伊吹先生、それは杞憂です。有権者が徐々に賢さを増しているということを何らかの手段で知るべきです。

 伊吹筆頭理事には、もう少し、まっすぐな志で一体改革特にのぞんでほしいところです。

 鴨下一郎さんは、野田さんと日本新党同期の桜。今は自民党で、官房長官への登竜門といわれる政調会長代理として、野田さんの背中を追っかけています。

 「自民党はまじめに保険料を払ってきた人の権利を守る。それが私たちのスタンス」として、自助→公助→共助の自民党新綱領をアピールしました。そのうえで、民主党が今国会に出している年金改革(受給資格25年→10年への引き下げ、共済年金の厚生年金への合併(被用者年金一元化)について、「現行制度の修正にすぎない」と、2004年年金改革(100年安心プラン)を議論の土台にすべきだとしました。ちなみに、鴨下さんは先週火曜日の本会議でも同様の質問演説をしています。

 野田さんは「自助・公助・共助の考え方に違いはない」と抱きつきながら、「国際会議に出席すると日本の財政健全化への時間は残り少ないと感じる」という趣旨の答弁を同期の桜にしました。さらに野田さんは「政治生命を懸けると言っていますが、それでも足りないくらいだと言われる」と男子の本懐を示しました。

 岡田さんは「ある市長は年金は所得の高い人にとっては掛け捨て(のようなもの)だ、と言っていた」とし、「余裕のある人は税金の範囲内で我慢して欲しい」と答弁。鴨下さんは「同感だ。所得の再分配は税の範囲内でやればいい」としました。

 自民党内がまとまっていないのが、よく分かりました。例えば、下村博文シャドウ文科大臣(清和会)は自身のブログで法案の議論に参加していますが、彼は一体改革特別委員ではありません。シャドウ副大臣の馳浩さん(清和会)は委員となっており、枠が限られていて、馳さんは森元首相(元文相)と同じ石川県連だから委員になれたのかな。そういう風に個人商店である自民党内での権力構造を邪推してみるのも現時点では楽しい。ただし、仮に参議院に送付されてからグチャグチャになったら、ややこしくて、小生ですらうんざりになります。第162通常国会の郵政民営化法案の特別委員会のように参議院でグチャグチャになるのはごめんです。多少時間はかかっても衆院段階でしっかりと修正可決しましょう。

 [お知らせ1]

 会員制ブログで今後の政治日程とそのポイントを解説しています。

 今後の政治日程 by 下町の太陽

 最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。取材資金にもなりますので、ぜひご協力下さい。

[お知らせ2]

 「国会傍聴取材支援基金」を設けました。他メディアにはない国会審議を中心とした政治の流れをこのブログで伝えていきます。質素倹約に努めていますが、交通費などがかかります。

 「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

 ご協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

[お知らせおわり]


岡田副総理「長期金利に特例公債法成立の遅れが影響を及ぼさないように注意深く進める」

2012年05月21日 16時23分15秒 | 岡田克也、旅の途中

 岡田克也副総理2012年5月18日(金)の定例記者会見で「特例公債法案が通らないということが金利に影響を及ぼさないように注意深く進めていかなければいけない」と述べ、新年度入りから特例公債(赤字国債)が発行できない状態が続いていることが、長期金利(日本国債の表面価格と連動)の変動を最小限にするため、政府(財務省理財局)がオペレーションしていく考えを示しました。

 そのうえで、「(衆議院・財務金融)委員会で議論しておられることですので、今の段階で政府が何か口を出さないほうが結果はいいというふうに思います。むしろ一般論として言えば、なるべく早く成立をさせていただきたい」と述べ、平成24年度の特例公債を発行する法案(赤字国債発行法案、第180国会閣法2号)を早く成立させるよう、国会に求めました。

 衆院の社会保障と税の一体改革特別委員会(中野寛成委員長)にかかっている3領域7法案や、内閣委員会のマイナンバー法案などの「一体改革大綱」の法案との採決の関連性については、「ええ、もちろん、これは別の法案ですから、そういう意味では別のものです」とし、連動しないとの考えを示しました。昨年は8月9日の3党合意(民自公の幹事長、政調会長、実務者の合計9人)文書にもとづき、8月26日(金)の参院本会議で成立し、その夕、菅直人首相が退陣を表明しました。

 ことしはギリシャ再選挙や、フランス新大統領のEUとの新政策、さらに日本国内の銀行の資金運用手段の手詰まり感などから、特例公債の発行への需要が変化したり、ヘッジファンドなどが日本国益を損ねるような相場への仕掛けをしてくる可能性は否定できず、与野党・衆参を問わず「決められる政治」への脱却が全国会議員に求められています。

 まあここまで書くと、書いている本人も緊張感を覚えるわけですが、とはいえ、経済も社会も「支え合い」であり、相互依存は高まるばかりですから、まあなんとかなるものです。

 記者会見での記者(筆者)との一問一答は次の通り。

岡田副総理記者会見(5月18日)要旨から引用はじめ]

(前略)

(問)フリーランスの宮崎ですが、特例公債法案についてお伺いいたします。というのは、長期金利のほうが下がっておりまして、今週0.815%ぐらいをつけているときもあります。まだこの時間ですとニューヨークも開いたばかりの時間ですので、一般的な話なのですけれども、今、報道されているのは第322回新発国債10年もので、これは5月10日の発行ですから、当然建設国債です。赤字国債は発行できるわけありませんから、まだ現時点では。2.3兆円発行されるということで、今年の建設国債は、今、当初では6兆円ぐらいのはずですので、もう2.3兆円も発行するのかという気がいたします。
 お伺いしたいことは、長期金利が低いか高いか、あるいは表面価格が安いか高いかではなく、いずれにしろ変化が激しいのは好ましくないというのは間違いないと思います。ちょっとヨーロッパのことはなかなか難しくて分かりませんが、衆議院で現在留め置かれている特例公債法案、審議のほうはかなり積み上がっております。採決しようと思えば、審議時間のほうはもうほぼあると思うのですけれども、この特例公債法案に関して、政府のお立場から国会に対してどうお願いされますでしょうか。

(答)委員会で議論しておられることですので、今の段階で政府が何か口を出さないほうが結果はいいというふうに思います。むしろ一般論として言えば、なるべく早く成立をさせていただきたいということですが、真摯に各党間で議論が行われているということですから、それを見守りたいというふうに思っています。

(問)今回の一体改革の法案のほうとの審議というのは、これは別のものだとお考えでしょうか。

(答)ええ、勿論、これは別の法案ですから、そういう意味では別のものです。

(問)ある程度、これは最後ですけれども、長期金利には今注目はされているところでしょうか。

(答)特例公債法案が通らないということが金利に影響を及ぼさないように注意深く進めていかなければいけないと、そしてなるべく迅速に結論を出していただきたいというふうに思っています。

[引用おわり] 

 [お知らせ1]

 会員制ブログで今後の政治日程とそのポイントを解説しています。

 今後の政治日程 by 下町の太陽

 最初の1ヶ月は無料で試し読みできます。取材資金にもなりますので、ぜひご協力下さい。

[お知らせ2]

 「国会傍聴取材支援基金」を設けました。他メディアにはない国会審議を中心とした政治の流れをこのブログで伝えていきます。質素倹約に努めていますが、交通費などがかかります。

 「国会傍聴取材支援基金」の創設とご協力のお願い

 ご協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

[お知らせおわり]