衆院社会保障と税の一体改革特別委員会(中野寛成委員長)は、子ども子育て新システムに関する質疑をしました。先週金曜日ときょう2012年5月28日(月)の2日間で10時間、与党から野党まで一巡しました。
先週、党首あるいは衆院トップが出てこないと指摘しましたが、それを意識してか、公明党の池坊保子さんが「公明党は私と次に出てくる高木美智代さんの2人しか質問しないのかと言われそうですが、我が党は福祉の党なので全員が専門家です」と切り出しました。山口那津男代表が「参院議員だから出られない」というデメリットは承知のうえで2013年7月まで確実に国会に議席がある那津男さんを党首にして第46回衆院選の準備をしているのでしょうから、委員会に、衆院議員である井上義久幹事長、石井啓一政調会長が出てこないのは違和感があります。この後、社民党は衆院側トップの重野安正・幹事長が登場。本会議に次いで2度目となりました。
さきに表題のみんなの党の山内康一さんの質問。山内さんの質問にはいつも斬新で驚くべきことがあります。山内さんは1973年8月25日生まれということで、筆者と同学年・同年齢です。筆者も大胆な発想で他人を驚かすことを子供の頃から楽しみにしている嫌な奴なのですが、山内さんのきょうの質問には驚きました。
山内さんは、「子ども子育て新システム法案」で、(現在の幼稚園、保育所、居宅保育問わず)すべての保護者への現金給付により使いやすくなる事業所内託児所について質問。この中で、「午前9時から午後9時まで勤務というサービス残業が厳しい専門性の高い職種の人が、育児休業中に大学院で学ぼうと考える人が多くなると思う。ついては、厚労省と文科省で検討して欲しい」として、小宮山洋子・厚労大臣と平野博文・文科大臣に答弁を求めました。
例えばご年配の方ならば、0~3歳児がいるのに大学院とはけしからん。社長も育児休業を「やっている」のに大学院とはけしからん。
午前9時から深夜までの勤務が当たり前の共働き会社員にとって、大学院に進んでスキルアップし、昇給を目指すには、育児休業は人生で最後のチャンス。共働きでないと生きていけない複雑高度に社会化した日本を望んだのは誰でしょうか。社長さんにしても、あなたの会社が労働基準法を上回る拘束時間を社員に課していれば、育児休業中の大学院進学をとがめることはできないはずです。
山内さんは大学生時代に、同年代で子どもを生み、シングルマザーとして大学に通っていた人がいたとして、日本には中年・壮年の学生が少ないことからも、大学内の事業所内保育所の必要性を強調しました。
山内さんの発想には驚かされます。小泉チルドレン83人のうち、衆院生き残りの11人の1人。日曜日のテレビでは、衆院落選後参院に回った片山さつきさんを、テレビで活躍する杉村太蔵さんが批判するという小泉チルドレンバトルがありましたが、知名度は低くても連続当選したのは山内さんの方です。それも山内さんは選挙区を変え、政党を変え、再選するという唯一の離れ業をしました。
山内さんのホームページによると、「1973年8月25日生まれ 福岡県筑紫野市で生まれました。子どもの頃は周囲は田んぼばかりで庭で蛍が見られるような田舎でしたが、いまは福岡市のベッドタウンの住宅地になりました。父は旅行会社に勤めるサラリーマンで、週末に米をつくる兼業農家でした。地元の公立小中学校に通い、ひとりで釣りに行ったり、自転車で遠くに行ったり、本を読むのが好きな子どもでした」としています。
父はサラリーマンと強調していますが、衆議院第1議員会館の地下1階で閲覧できる国会議員資産等報告書によると、山内さんは筑紫野市に広大な山林を持っていて、これが、選挙区を変え、政党を変え、あるいは、国際基督教大学(ICU)で学び、国際協力事業団(JICA)、NPOで働くという斬新さの背中を祖先が押したのだと思います。とはいえ、ひたすらお坊ちゃんではなく、30歳代になってから大学院(ロンドン大学)に学んだときは、「自分で稼いだお金で通っているので一生懸命だった」「1時間2500円でした」と打ち明けました。それも含めて、山林を持っているから勇気があるのでしょう。山内さんは自民党1期生のころは、「童顔なので陳情を受けた際、(秘書と間違えられて)先生によろしくお伝えくださいと言われた」というどうでもいいエピソードを笑い話にしていて、ちっとも面白くない1期生にありがちな傲慢さを感じましたが、第4党国対委員長となった2期目、ぜひ、「明日(あした)への責任」を果たすために、一体改革に賛成して頂きたい。それが先祖への恩返しです。
ところで、まったく関係ない話なのですが、金曜日の子ども子育て新システム法案の審議で、自民党を代表して登場した、同じく小泉チルドレンの永岡桂子さんは、不幸な格好(旦那さんの自殺)で衆院議員になったこともあり、年下のイケメン議員がお好きなようで、自民党時代の山内康一さんとおしゃべりするのが好きなようでした。ガソリン国会の議長室封鎖の際は、民主党の柚木道義さんのスーツをびりびりに破いてしまいましたが、これもイケメンの柚木さんにタッチしたかったからではないかと邪推しています。そして、現在、永岡さんは本会議場の議席が民主党と自民党の境界にあり、隣席の民主党1期生斉藤進さんに積極的に話しかける姿が見受けられます。斉藤さんは真面目で、本会議中は演壇に目をこらすか、与党なので事前に配られている原稿に目を通しているのですが、先輩議員の永岡さんに声を掛けられると、邪険にもできず、うなずいているようです。ちなみに、柚木さんも斉藤さんも、永岡さんと同じ厚生労働委員で、開催時間が長い厚生労働委員だと濃密になりがちなのかなと感じます。
つまらない話で失礼しました。
重野安正さんは、「私のところには、保育所の団体、幼稚園の団体から山のように要望書が来ている」と打ち明けました。やはり、子ども子育て新システム法案が消費税増税の技術論以上に大きな議題となりそうです。
公明党の池坊さん。児童福祉法24条の改正について、小宮山洋子・少子化担当相は今までは「市町村には保育に欠ける子への保育の義務がある」だったのが、改正により「市町村は保育を必要とする子に必要な措置を講じなければならない」となるので、実質面でのかわりはない旨の答弁をしました。また、幼稚園、家庭内保育も含めて保護者に現金給付がいくので、「待機児童という概念そのものがなくなる」としました。地方議員が多い公明党の池坊さんは「市町村の新システム事業計画という書類を作成する負担は大きい。反映するのか」と自治体から内閣府への不満を代弁しました。
池坊元文科副大臣が、自分の実績である「認定こども園」にこだわる中、副総理で一体改革担当相の岡田克也さんは「認定こども園がバージョンアップして進化したのが総合こども園です」と答弁しました。
公明党の高木美智代さんが、5月26日付夕刊紙が、岐阜県警が前田武志・国土交通大臣の公職選挙法違反事件で捜査を始めたという報道があることを政府として承知しているのかとの質問に対して、政府を代表して答弁を求められた岡田副総理は「報道があったからと言っていちいち確認しない」「前田大臣だけでなく他の議員も関係しており、前田大臣に関する捜査が始まったかどうか分からない」などと答弁しました。通例は、政府参考人が「個別の事案には答えられない」と答弁するのが通例です。そのうえで、岡田さんは「一つの院が決議したことは重いが、そのことと2大臣が辞めることは関係ない」として、1ヶ月間の参議院の事実上の開店休業、閣法の成立率低下という苦境にもかかわらず、前田武志さん、田中直紀さんの両大臣を守り、「参院問責による大臣辞任の連鎖」を断ち切ろうとする民主党首脳の統一的な意思が揺るぎないことを感じさせました。そのうえで、閣法成立率が20%台の現況をふまえて、「残念なことで、ぜひ審議をすすめてほしい」と野党に迫りました。
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