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華麗なるオーストラリアンライフ

渡豪17年。職業・看護師。
白熊のようなオージーの旦那1人とワンコ2匹で
ニューサウスウェルス州の田舎町で生息中。

足りない頭で考える

2017年05月28日 22時06分55秒 | Weblog
今日も午前シフト。脱スマホ生活の恩恵を感じつつも、早起きが好きではないことには違いない。
それにしても寒くなってきた。あと4日でオーストラリアは暦の上では冬になる。

仕事。
昨日と同じ患者さん、そしてあまり変わらない作業内容だった。
直接の担当は4名だったけど、チームとしては2人で8名の患者さん。私の担当ではない方の8名に骨折で入院してきてるおばあさんがいる。
このおばあさんは息子さんに面倒を見られながらも、家では押し車を使って自分のことは自分でこなしていた。しかし1か月ほど前、転倒により左ひざあたりを骨折してしまい、うちに来るまでは歩けない状態だった。しかし今、骨折も徐々に治り、これから少しずつ運動能力を取り返していこうというところ。
ところが。
このおばあさんは本当に何もしたがらない。理学療法士さんの指導により、立ち上がることはヨシとされているのに、そもそも食事の際にベッドから出ることを嫌うし、ベッドから出るにしても「ホイストを使って」とのたまう(ホイストとはスリングで体を包んで持ち上げる機械)。もちろんそんなわけにもいかないので、私たち看護師は「そんなんじゃアカン!」といってかなり強く言い聞かせるのが常。
立ち上がるのに看護師2人の介助が必要。ペアのスタッフと病室へ行き、「さぁ、椅子に移るよ!」と言ったら、顔を引きつらせながら「お願い、今日は休ませて」「ホイストを使って」とハナから泣き落とし。そういうのを脅したり、なだめすかしたりしながら作業をさせるのも看護師の仕事。有無を言わさず布団をはぎとり、足に介助用具をつけて体を起こす。このころにはおばあさんもあきらめてモソモソと動き出す。だけど「拷問や…」とか細い声で何度もつぶやく。

こういう時、本当にどうしたらいいんやろうなぁ~と思う。このおばあさんは家で何かをしているわけではなく、日がなぼんやりテレビを観て一日を過ごすのが常なんだそうな。歩けなくなったらお手洗いやシャワーで困るけど、そういうのはお世話をしている息子さんさえ良ければ、ぶっちゃけ今以上によくなる必要はない。「拷問や…」とつぶやくおばあさんを見て、心が痛まないことはない。
ただ私の看護師としての見解では、何を失ったところで運動能力が残っているというは、仮に病気をしてもだいぶラッキー。寝た切りになると本人および介護者への肉体的かつ精神的負担は本当に重い。
そう思うので、今日も心を鬼にして「大丈夫。できるから」「今動かんかったら家に帰る日はこーへんよ!」と強く言い聞かせておばあさんを立ち上がらせた。昨日も同じことをしたけど、時間をかけながらも今日は昨日よりもうんとスムーズに身体を動かすことができたので、無事に椅子に座った後に「すごい、すごいよ!」とたくさんの励ましと誉め言葉を浴びせた。相変わらず苦虫をつぶしたような顔をしており、私の声がどこまで届いたかは不明やけど、少しでも前進を感じてくれると嬉しい。

運動能力の話のついでに。
同室に92歳の認知症が進行しつつあるおばあさんがいる。このおばあさんも転倒により大腿骨を骨折し、長いリハビリを得て運動能力を取り戻したものの、認知症の症状により養護施設へと移っていった。しかしそこでまた転倒を繰り返し、紆余曲折を経て、運動能力の回復を目指してうちの病院にやってきた。
おそらくまだら認知症で、歩けるときは歩けるけど、そうでないときは本当に無理。でも看護師は歩けることを知っているのでそれを強要してしまったんだと思う。もともとの性格なのか、認知症がそうさせるのか、10分おきに娘さんに電話をかけて「足が痛い」「看護師が怖い」と泣きつき続けた結果、娘さんが「92歳の老人に無理して歩かせないで!」と病棟に通達してきた。それ以降、おばあさんは「娘が歩くなと言った」と主張し(こういうことは覚えている)、お手洗いに行くにしてももう歩かなくなった。先週ぐらいまではお手洗いまで押し車で歩いていけたのに、現在は劇的に運動能力が低下している。申し訳ないがこの後何もできなくなるのは時間の問題。
「もう歩けなくてもいい」というのは家族の希望。おばあさんはもう自分での決断することをやめ、娘さんの決定に従うのみ。娘さんはややうっとうしく感じるほどに細かい注文やクレームを付け、現在は“さわらぬ神に~”状態。すでに婦長案件。なので看護スタッフとしても「おたくさんがそういうなら…」という態度で積極的に関わることを避けている。現在おばあさんは新たな養護施設でベッドが空くのを待っているところ。
こういう場面も難しい。子供としては先が長くないのに痛みに苦しんでほしくないというところなんやろう。だけど92歳だからって歩けないことはない。実際最近まで歩いていたんだし。それを「痛いんだからもう歩かせない」と言い切るのは、イコールおばあさんの運動能力を奪い、かつ余生の質を下げることにならないかい?と私は思う。まだ直接の担当になって娘さんと話したことはないんだけど、この先機会があれば一度話してみようかと思っている。婦長マターなのに首を突っ込みすぎかなぁ。

看護師にとってはあくまで患者さんなので、何があっても本当のご家族ほど心を痛めることはないかもしれない。だけどだからと言って看護師がすべて他人事だと思ってドライに対応しているわけじゃない。良くなってほしいと思うし、できるだけのことはしようと努力している。そういう気持ちって患者さんやご家族にどれだけ届いてるのかねぇ。

帰宅。
今日は仕事中に余裕があったので、少し課題をやっていた。練ったアウトラインに沿って、とりあえずダーッと書き綴っている。書き上げてから自分なりに見直し、手直しをするなのでまずは書き上げてしまうことが先。比較的サクサクと筆が進んで少し気が楽になったので、帰ってから(やっぱり)爆睡した。慣れない午前シフト2日連続のおかげで即寝。4時頃に寝て、起きたら8時前だった。すんごいスッキリ。睡眠に限るねぇ。本当にねぇ。

なので、まもなく日付が変わろうとしている今、私の眼はパッチリ。このままうっかり起きてしまったら日夜逆転してしまうので、この後無理やりにでも寝る。明日から3連休。この間に課題を書き上げてしまわんとあかんからね。朝ゆっくり寝入ることはできない。
明日はDが所用でシドニーへ行くので、夕方までおひとり様。ほんまに課題頑張ろう。最低でも半分、できれば3分の2は書き上げたいところ。もてよ、集中力。