もっとましな嘘をついてくれ ータイ歌謡の日々ー

タイ歌謡について書いたり、うそをついたり、関係ないことを言ったりします。

Because it’s there.(だって、そこにあるんだもん)

2023年08月18日 19時23分26秒 | タイ歌謡
 この言葉はずっとヒラリーのセリフだと思ってた。ヒラリーと言ってもクリントンの方じゃなくて、エドモンド・ヒラリー。登山家だ。
 いちおう解説しておくと、タイトルの日本語訳は一般には「そこに山があるから」って名言になってて、子供の頃にこれを聞いて(そこに山があるから? なんだこいつ。感じわるっ!)とイヤな気持ちになった。友達になりたくないタイプだな、と勝手に思ったが、向こうだって遙か遠くのホッカイドーのカントリー・ボーイと友達にはなりたくはないだろう。
 しかし、のちに翻訳まえの生台詞で「Because it’s there」と言ったと知り、あ。それならイヤな奴じゃないじゃん、と思い直した。で、今回これを書くのにセリフに間違いがないかチェックしようとググったら、セリフは記憶通りだったが、発言者はヒラリーじゃなかった。
 あれ? エヴェレスト初登頂はヒラリーだよね。あー! あれか、一緒に登った人か、と合点したが、それも違った。
 これを言ったのは、マロリーという、上方の人が鍋に入れたがる春雨の太いのみたいな名前の人で、この人は世界初のエヴェレスト登山にアタックした人だった。3度試みたが登頂は果たせず、1924年の3度目の遠征で行方不明に。普通に考えりゃ、「あー、そりゃいけないな」って結論だが、1999年に遺体が発見されるまで何をしていたのかは謎である。だいたい想像はつくけどね。
 そんなわけで、記憶の混濁に繋がったんだろう。ヒラリーは、そんなこと言ってなかったし、マロリーも似たようなことは言ってても、山があるからだ、と胸を張ったりしていたんじゃない。と思う。今となって「そこに山があるから」ってのは誤訳とされていて、本多勝一なんかは「it'sじゃない。It'sと大文字になっているだろうが。つまり、ざっくり山ってことじゃなくて、エヴェレストを特定してんだよ」みたいに力説してて、この人はいつだって本多勝一なのだな、と思わせる。正しい訳文は「そこにエヴェレストがあるから」が正しい、って言うのね。だけどね。It'sと大文字になっていると言っても、これはインタビューでの談話を文字に起こした人が大文字にしただけじゃないのか。ていうか、そんな細かいことにグダグダ言うな。
 うーん。まあ勝一センセだから細かくてもいいけど、日本語訳ってことなら、もっとこなれた方が良くないか。「Why did you want to climb Mount Everest?(なんでエヴェレストに登りたかったの?)」という質問がもうばかだ。気持ちはわかる。山なんか登ったって何になる? って前提があるんじゃないか。これが「なんでメシなんか食うんだい?」なら、「生きるためなら不可欠だろうよ」とか、「ほう。つまりアレか。なんで生きてんだ、って喧嘩売ってんだな」って臨戦態勢になるが、山なんて生きていくうえでのプライオリティーが低いものだ。「なんでパチンコをするの?」と、プライオリティー的には変わらない。
 ばかな質問に気の利いた答を返すのは難しいことで、しかも当時の山登りの達人みたいな人が気の利いたようなことを言えたかどうかは疑問で、だから答が「Because it’s there」だ。もう、こんなの「だって、そこにあるんだもん」と訳すよりなくないか。
 だって、そこにあるんだもん。良い答だ。でも、こう訳したんだったら名言にはなってなかったような気がする。それともアレか。これは当時人気だった実存主義なのか。実存は理性に先行する。「だって、そこにあるんだもん」あー。実存主義だわ、これ。だから世界的に有名になれたんだな。「山があるから」じゃ浅すぎる。エヴェレストがあるから、では「遠足じゃねぇんだぞ」と突っ込まれてしまいそうだ。本多勝一は、そう突っ込みたかったのか。ブレない人だな。
 おれだったら、登山の理由を問われたら、「はい。祖父の遺言で」みたいな、オールマイティーな札を切っていたんだろうか。ぞんざいではあるが、これを言われたら「あー。答えたくないのか。しっかし、もうちょっと気の利いた答でも返せないのか、このジジイは」と思われるに決まってる。でも、それでいいんだろう。メンド臭いんだよ、という意思表示は伝わっている。ちょっと疎まれるけどね。
 疎まれるのがイヤだったら、「はい。さいきん隣の部屋からヒソヒソ言う声が聞こえて。おれの悪口の合間に、山に登れー、山に登れー、って言うんです。で、隣の部屋のドアを開けると誰もいないんですよね」と答えてもいい。こういう返事がきたら「あ。だめだ。こいつはだめだ」って、疎まれずに敬遠してもらえる。「虹の根元から、背中に羽の生えた老人が飛んできて、山に登れって命令されたんすよ」もだめだ。釈由美子さんの「小さいおじさん発言」並みにだめだ。
 釈由美子さんは「カッパ、ダルマ、UFOも普通に見ている。ダルマは親子でスタジオに転がっていた」とも言い、小さいおじさんが見えているという話では「エアコンのところから覗いたり、寝たふりをしていると3人のおじさんが『きょうは大変だったな』って会話している」。意思疎通はできないとしたが、落ち込んで泣いていると「どんまい!」と声をかけられることもあるという。
 すげえな。釈由美子さんは過去の交際相手に、おじさんの存在を伝えたところ信じてもらえず「MRI(検査)に行かされたことがある」と明かしたが「私は正常ですから」と断言したそうだ。本人が正常だって言うなら、そりゃ正常に決まってる。ダルマの親子が転がってるってのも謎で、親子って言うくらいだからサンスクリット語の方のスピリチュアルな方のダルマではなく、南天竺国王の第三王子として生まれ、のちに宋(支那の)へ渡った方か。高僧でもあるし妻帯してないはずで、隠し子でもいたのか。って、真剣に検証する話じゃないよな。どんまい!

 それにしても暑い。ここは北海道で、ついこないだまで道路も凍ってツルッツルだったのに。あまりの寒さに「ばかやろう温暖化じゃねぇのかよ」と空に向かって毒づいたんだが、あれから5ヶ月。温暖化だね、これは。北海道の冬は乾燥していて、舌の根がすぐに乾くから毒づいたのは問題ないが、温暖化だ。きっちり温暖化してやがる。冬にだけ温暖化してくんないかな。誰に言えばいいのか。北海道知事や優秀なリーダーシップで国民に親しまれているクソメガネ岸田ではないんだろう。皇室方面も効き目がなさそうで、北海道神宮もなあ。ドクター中松も違う。七夕の時に短冊に願いを書いておくんだったな。

 そういや若い頃はエアコンなんて持ってなくて、ていうかおれの若い頃は自宅にエアコンがある家はカネモチだけだった。初めてエアコンを買ったのは23歳の時だったが、やっかまれてもイヤなのでエアコンとヴィデオデッキは内緒にしていた。どっちもリモコンの先端からコードが伸びてるのがあたりまえで、それでも(リモコンってべんり!)と思っていた。学生の頃なんてエアコン持ってる奴なんて知人にはいなかったんで、扇風機だけが頼りだった。上京した年には連続熱帯夜の日数が連日新録を更新し続けていた。夏バテというものを初めて経験した。体重が50kgを切った頃は、信号待ちで風に煽られて車道に飛ばされそうになったところを知らないおじさんが腕を掴んで助けてくれた。あのときはありがとうございました。身体が軽いと、重しにもならない。そういえば学生の頃、家で扇風機を強(つよ)にすると、なんだか地鳴りが響いて、外で大家が叫びだして、驚いた。
「誰だ! 扇風機の風が強すぎる奴は! アパートが発進して動いてんじゃねぇか! すぐに扇風機を反対側に向けろ!」と怒っているので、言うとおりにしたら、アパートが反対側にズリズリ動いて、元に戻ったってことがあったな。ねえか。
โฆษณา ฮาตาริ
 ところで、この暑いのに炎天下で高校野球なんかやってて、どいつもこいつも気違いかと思うが、こないだ北海道が勝ったと大騒ぎをしていて、へえ、優勝したのかと訊いたら、そうじゃなくて2回戦で勝ったのだという。根雪で半年潰れる北海道のチームだから、ハンデつけて2回戦勝ったら優勝でいいよね、もう。沖縄の高校なんて決勝で2勝しないと優勝になんないとか、そのくらいのハンデは要るだろ。とか言ってたら「なにいってんの。北海道は甲子園で優勝したことあるよ」と言われて驚いた。へえ。もうハンデ導入済みだったのか。
「いや、そうじゃねぇよ。決勝で勝ったんだよ。しかも2回だ。2回優勝してる」
 えー。北海道なのに? 
「うん」
 わかった。大谷くんだな!
「ちがうよ。もういいわ」
 へえ。知らなかったな。道民は気温が摂氏28度を超えると1度上昇するごとに知能指数が10ずつ下がるんだが、野球は脊髄反応でいけるのか。熱暴走とかなさそうだもんね。
 テレビのスイッチを入れたら、ちょうど試合が終わる所で、負けたチームの子が一人だけ大泣きしていて、他の選手はそれを醒めた目で見ていて、かわいそうだが笑ってしまった。誰か声かけてやればいいのに。「試合では負けたけど、野球では勝ってたぞ」とか「勝負はなぁ、勝負は勝ち負けじゃねぇんだぞ」とかテキトーに励ますと怒るのかな。そのままの流れで見てたら、次の試合が始まって、ここはチャンス! という所で併殺喰らったりしてて、ダメだな監督。おれなら、あそこでホームランのサイン出して大量得点の采配すっけどな。
 そんなことより北海道の野球部は早く帰って来い。大阪の方なんて暑くてしょうがないだろ。勝ち逃げになっちゃうが、許すぞ。「甲子園すか。勝ったことしかないっすね。負けたことなんてないっすよ。いち度でいいから負けてみたいっすね」って言えるぞ。「牛の乳搾んなきゃ」とか「イカ釣りに行かねぇと」とかテキトーなこと言って帰ってこい。野球部だっていうだけでばかなのに、暑くてもっとばかになっちゃうぞ。と書いて念のためにググってみたら、もう負けてた。よし。それでこそ道民だ。早く帰って来い。
 と思っていたら同じようなことを考える人は多いもので、この猛暑の炎天下で高校球児は、どうなのよ。酷いんじゃないですかぁ、さながら地獄でございますという料簡で、真夏の甲子園是か非かみたいな記事がデイリー新潮に載っていて、でも反論として「自分はクーラーの効いた部屋でビールを飲みながら高校野球を見るのが大好きです。テレビの中の高校球児が涼しげだったらビールがおいしくないでしょう」という意見も寄せられていて、あー……、そうだったのか、と我が不明を恥じた。
 なるほどね。これは古代ローマの剣闘士奴隷、いわゆる剣奴ってやつの現代版だな。剣奴はどっちかが死ぬまで戦わせたが、今の人は誰にでも人権があることになってるから、ウルトラマイルドスーパー決闘ってことか。世間の人が高校野球の観戦を好きなのは、それが理由だったのか。
 これはアレだ。甲子園の関係者も(このクソ暑いのに、やってられまへんがな。誰か暑さで死人が出て問題になって、ほんで永久禁止にならへんやろかい)と密かに思ってる奴はいるな。(もう、こっそり脇《ねき》から忍び寄ってからに首筋にヘアドライヤー高温の最強《さいつよ》にして当てたろか)とまで思ってるかもしれない。ジンケン? 知ってるよ。ヒトの顔した犬だろ。ああ、人権の方か。そんなものは高校球児と中国人にはねぇんだよ、球奴ふぜいがよぉ、ガタガタ言ってんじゃねえぞ。そういうことだろうか。
 あと、友人が「総理の岸田くんから聞いたんだけど、今年の秋は中止でいいか、って言ってた」って。どこかの時点でいきなり寒くなるそうで、まあご自愛されるように。
พกเมียมาด้วยเหรอ - ยุ้ย ญาติเยอะ ชุด ยอดกะทิเพลงดัง【Official MV】
 今日の歌はยุ้ย ญาติเยอะ(ユイ・ヤーティユー)の歌でพกเมียมาด้วยเหรอ(奥さんを連れてきてね)という歌だ。1997年のリリースだからもう25年もまえのことか。古い歌だが、むっちゃヒットしたんで、30過ぎくらいのタイ人で、この曲を知らぬ者はいない。タイ語を知ってる人なら、(なんだ、その名前は)と思う。ユイってファーストネームは珍しくないけど、姓が芸名だからふざけてる。ญาติเยอะ(ヤーティユー)って苗字は聞いたことがなく、意味は「親戚がたくさん」だ。なんでそんな名前をつけたのか。
 本名はจริยา ปรีดากูล(ジャリヤー・プリーダクン)と、まあ普通なんだが、両親ともに有名俳優で、だからかどうか下積みというものがない。ちびっ子歌謡選手権みたいなコンテストに出てプンプワン・ドゥアンチャンの曲を歌ってプロデビュー決定。これが9歳のとき。デビューしてすぐに大御所歌姫にして国民的歌手プンプワンとデュエットして、人気を不動のものにする。2代目の芸能人で、苦労を知らないから天狗になって疎まれそうなものだが、タイの七光りで、そういうのってあんまり聞いたことがない。七光りのばか息子というと、レッドブルの創業者の孫が有名で、飲酒運転が疑われる事故で警官(!)を轢き殺し、ポルシェは大破。最初は使用人を犯人に仕立てて自首させたが、あっけなくバレて御曹司は逮捕。でも何をどうしたのか無罪になって遊び回ってるということで、タイ国民の怒りを買ったのは、もう12年もまえか。無罪になったのは、目撃者というのが現れて、ポルシェの人は悪くなくて、貰い事故でクルマが壊れてかわいそうだね、みたいな証言をしたからで、やいのやいのと国民が騒ぐ中、御曹司は自家用ジェットでタイを脱出。F-1レース観戦中なう、みたいな近況報告に、冗談じゃねえぞ、そんなハナシがあっかよ、警官の命の価値なんてハズレ宝くじ券並みに無価値だと言うことかぁ! もうレッドブル買わねぇ、とタイ国民激おこ。不買運動にまで発展。証言者は何で証言のあとでカネモチになってんだよ、と疑惑は尽きなかったが、証言者はちょっと不自然な事故死を遂げている。国民の思ったことは一つで「あー……」ってことだ。「うっわー……」ってことだ。「……そうか……」ってことだ。いやいや。それにしても御曹司は逮捕されたとき、アルコールとコカインまで検出されてんだろ、と文句言っても、「んー。でもそれは事故とはカンケーないし。貰い事故だから」で、たしか最近「はい、この件もう終わり。帰った帰った」と捜査打ち切りを発表したんじゃなかったっけ。冷めた筈のホトボリが「あ! あった! そういうの」とか「おのれ」「やれ無念なり」「むぐぐぐ……」「みておれ……」という感想はあったにせよ、たしかに事件は風化しており、特別な騒ぎは起こらなかったようだ。
 いっぽうユイさんは着々とキャリアを重ねるにつれ、人気も上昇。トントン拍子だね、プンプワンの妹分みたいな感じで活動していたら、デビューから5年後にプンプワンは鬼籍に。これで人気も終わりかと思ったら、プンプワンの死後すぐに伝記映画が作られて、それに出演してまたブレイク。プンプワンの再来ということで、彼女の持ち歌をカバーしたアルバムを、なん枚も立て続けにヒットさせた。まえにも書いたがタイ人は古い物に価値を見いだすということに疎い傾向がある。執着のなさが、こんな形でも現れる。明らかにオリジナルの方が良い歌唱でも、「でも音が古くさい」とか「でもそれ死んじゃった人でしょう?」という反応が多い。それに比べて新しい録音は音もアレンジも良いからヒットする。プンプワンは好きだったけど、でももうそれは過去の事なのよ、って事だ。ブラジルでの過去のサンバやボサノバの巨匠が忘れ去られてるのに近い。新しいものの方が良いものという価値観。でもタイ人は「プンプワンは過去だけど、好きだから新しい歌手で聴きたい」という、ちょっと日本人にはないメンタリティーを持っている。それで、ユイさんの歌もヒットを続けた。歌が巧いし、愛想も良いからね。国民に愛されている歌手のひとりだ。そしてタイ国民がプンプワンの死の喪失感から立ち直った頃、満を持して’97年に大ヒットを飛ばしたのが、この曲だ。弱冠19歳というのに、この貫禄。このオーラ。ルクトゥンの申し子みたいな人だからね。
 曲調はプンプワンのアップテンポな曲群に似たテイストで作られている。歌詞も「อื้อฮือ...หล่อจัง(ンーフーン、何てハンサムなの)」というプンプワンの持ち歌のアンサーソングみたいな部分もあって、遊び心がいっぱいなんだが、何と言ってもイントロのラップ歌唱がタイ人のハートを鷲掴みで離さなかった。おれも初めて聴いたとき「お!」って思ったもん。曲の作りは、タイの正統派ルクトゥンだ。イントロの「つかみ」が比類ない秀逸さを誇っている。ヒットしないわけがない。
 人気が衰えることもなく、コンスタントに活動を続けている。新しいアルバムは、ここ2年ほど休んでいるが、コンサートやテレビ出演は絶えない。押しも押されもせぬルクトゥン界の歌姫だ。
 婚姻の届け出はしてないが、若い頃からのバンドメンバーの男をパートナーにして、息子が一人居る。結婚はしているのね。仏式で結婚式は挙げてるから。役所に届けてないだけ。タイでは珍しくも何ともないケースだ。元首相のインラックも旦那と籍を入れてなかったんじゃなかったっけ。あのくらいの財閥のお嬢様だと、入籍すると旦那にも相続権が発生してしまうからとか、諸事情があるんだろうが、一般人が入籍にこだわらないのは、「それ何かメリットでもあるの?」ってことで、正直どうでもいい。仏陀様の前で結婚のお許しを頂いたんだもん。役所の木っ端役人の許可なんて犬の餌にもならないよね、って話だ。わかりやすい。でもそれ、夫婦別姓じゃないの? と言っても、それがどうした、って話で、まあ日本も江戸時代までは夫婦別姓だもんね。大した問題ではないのよ。うちみたいに国際結婚だと届け出をしないとデメリットがデカいから役所に行ったけれど。
 まあ、そんな感じでユイさんも普通のタイ人だ。普通じゃないのが息子の名前で、“ลูกทุ่ง”(ルクトゥン)。すごいね。日本で言えば石川さゆりの息子の名が「演歌」って感じか。まあลูกทุ่ง(ルクトゥン)てのは、直訳だと「原野の子供」みたいな意味だから、名前として不自然ではないが、そんな名前は、まったく一般的ではない。
 でも、これを聞いたタイ人は、まず笑って、それから「ふうん。……いい名前、だね」という反応になる。といっても一般人が付ける名前ではなく、ユイさんだから納得される名なんだけどね。
 歌詞だ。

奥さんを 連れて来てくれない?
奥さんも 連れてきて?
奥さんも 連れてきて?
さあ ここに来てね 奥さん同伴で来てね

密かに 愛しているの
熱心に 狙っているの
ああ 思い切って 奥さんも連れてきてね
悲しいくらい ハンサム
悲しいくらい 金持ち
綺麗になりたいな
そしたら いろいろ便利でしょ
奥さんがいるなら 連れて歩くのかしら
どうして 家で待たせておかないのかしら
独身だって言って どこに行くのか
本当にハンサム カッコいいの 面白いし
とてもハンサム 肌も若いのよ
ああ 機会があれば
一人で来るように 迫っちゃうんだけどな
本当に残念
あたしじゃないなんて.
奥さんも 連れてきて?
奥さんを 連れてきてね?
奥さんも 連れてきて?
奥さんを 連れてこないの?
さあ ここに来てね 奥さん同伴で来てね

こんなイケメン
寄り添ってもらいたい
私は愛人になりたい どこへでも一緒に行きたい
ショッピングモールに行きたいな
丘を登って 小川を下るのもいいな
あなたの言うことなら何でもきいちゃう 怖くないもん
手元に置きたいくらい
まあ もし誰かと恋人になったら
あきらめるけどね
お金持ちで ハンサムで スタイルも良いの
ごめんなさい 本当にごめんなさい
まあ 妻がいないというなら
機会を待つわ
お金が残念よ 奥さんなんか連れて来ないでちょうだい

 どっちなんだよ、って歌詞だが、整合性ということじゃなく、気持ちが揺れ動いてるわけだ。こういう歌詞ってタイ歌謡に多いよね。なんかタイの人って年端もいかないような普通の家の娘が、ビックリするくらい大人びたことを言うことがあって、でもそれは、その娘が早熟ということではなくて、タイ人のコモンセンスだったりして、けっこう驚くのだった。
 まあオトナって言っても、かっちり正しい人生とか、うっふーん♡ おねえさんが教えてあげようか、みたいなオトナではなく、実写「銀魂」の橋本環奈が演ずる神楽が近い。「もう、そうやってずーっと眠たいこと言ってりゃ良いアル」って、鼻ほじってる感じ。橋本環奈は興味もなかったし、声が汚いから(そのうち消えるな)と思っていたら、コメディー路線の怪演が振り切れてて、私生活では酒浸りという、まあオトナといえばオトナで、最近は見ていて面白い。

 ところで西日本の鍋の友「マロニー」の由来はやっぱりマロリーではなかった。「まろやかに煮える」で、マロニー。さすが、「シングル、ダブル、サブル」の表記を堂々と店前に貼り出す土地柄だ。マロニーなんて、正体が不明で、あってもなくてもどうでもいいような食い物で、20年くらいまえに食ったっけなー、でもスーパーには売ってるんだよなー、というのが東日本や北日本の人の認識で、でも岸和田弁の妖艶な美女に「マロニーちゃん煮えたねん。食べり」とか、ちょっと聞いたことのない上方言葉で言われたら、うん、て頷いちゃうよね。

この記事についてブログを書く
« いかがでしたか | トップ | ふつうの日と雨の日があるだけ »

タイ歌謡」カテゴリの最新記事