人体への影響は一切確認されず、
MRSAなど 7種類の多剤耐性菌を減少できることも確認
加賀市医療センターが新型コロナウイルス感染防止対策の一環として、ウシオ電機製の紫外線222nmウイルス抑制・除菌装置「Care222TM」というものを30台導入という事実を紹介したNHKスペシャルを観てい以来、この222nmの紫外線照射装置について調べてみると、世界初の紫外線による褥瘡(じょうくそう)創傷の殺菌消毒への応用が進められていることを知った。
ウシオ電機事業推進部門 222nmプロジェクトチームの以下のような紹介記事だが、母の介護をしていると、寝たきりの背中に褥瘡(じょくそう)ができかかることがあって、こういう面にも応用が進められていることは嬉しいニュースだ。ベッドを改良するなどして対応しているだけに、一刻も早い実用化を期待したい。
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■病床に一筋の光を。
床ずれの医学用語である「褥瘡(じょくそう)」とは「褥=ふとん」「瘡=できもの」という意味。長期にわたり病床にあると、 ふとんなどと接触する部分の皮膚が圧迫され続けて血流が悪くなり、皮膚や皮下組織、筋肉などが壊死してしまうことがあります。 ひどい時は、皮下組織や骨などが細菌感染を起こし、死に至る合併症を引き起こす危険も。頻繁に体の向きを変える、適切なマットを使う、スキンケアを するなどの予防対策はありますが、今も褥瘡に苦しむ人は多く、米国では褥瘡や糖尿性下肢潰瘍などの患者の治療費は、毎年3兆円にも上っています。
「苦しんでいる患者さんをウシオの光でなんとかしたい」。そんな想いから研究開発を進めているのが、ウシオの222nm紫外線殺菌システムです。コロンビア大学との独占ライセンス契約および研究委託契約の締結から始まったこのプロジェクトは、シンガポール国立大学ヘルスシステム(NUHS)との 共同プロジェクトへと繋がり、褥瘡患者に対して人体に影響を与えることなく細菌を消毒することに世界で初めて成功しました。
■なぜ「褥瘡」なのか。
アメリカのいくつかの大学医学部に222nm紫外線殺菌の説明をした時に「社会に最も役立ち喜ばれるのは褥瘡や糖尿性下肢潰瘍などの慢性創傷の消毒治療だ」 という意見を複数得ました。また、アメリカではUVC治療器が既にFDA(食品医薬品局)で認可されており、私たちの装置が後発医療機器と見なされれば、FDAの認可がとりやすいというのもあります。
シンガポールとの共同プロジェクトでは、病院の待合室でのウイルス殺菌、院内感染予防のためのパソコン消毒、火傷治療、褥瘡治療への適用など、さまざまな 可能性について改めて議論するところからスタートしたのですが、その結果、対象となったのも火傷治療と褥瘡治療です。
■222nmが人体に無害な理由。
細菌の細胞は1μm、人間の細胞は10~25μmと人間の細胞の方が大きいんです。222nmを照射した場合、細菌の細胞の核には届きますが、 人間の細胞の核には到達せず、人間のDNAにはダメージを与えません。
もし波長が222nmより短いと、消毒の効率が悪くなるだけではなく、使用環境が真空で ある必要があることや、窒素パージが必要となります。殺菌効率は260nm付近が最も効果的なのですが、それだと人体に大きな影響を及ぼしてしまいます。
■紫外線殺菌の可能性は大きい。
今回、褥瘡の創傷に対する研究的臨床では、多剤耐性菌に対する消毒効果を確認するために、圧迫性褥瘡患者に対して 222nmの紫外線を患部に照射し、照射前後で感染菌の種類と数の計測を2週間継続。その結果、人体への影響は一切確認されず、MRSAなど 7種類の多剤耐性菌を減少できることが確認されました。
今後、紫外線による殺菌や消毒の可能性は大きく広がっています。手術中の手術部位の消毒はすでに日本や米国で基礎研究が開始されていますし、 手指殺菌などの衛生分野、その他、感染除去や消毒のアプリケーションは多数あります。光のチカラで、世界中の患者さんの痛みや苦しみを光で少しでも和らげることが私たちの 仕事だと思っています。