三菱ケミカル子会社、幹細胞で脳梗塞など治療、年度内申請へ
(2020/9/3 11:00 日本経済新聞 電子版)
三菱ケミカルホールディングス子会社の生命科学インスティテュート(東京・千代田)は「Muse細胞」(ミューズ細胞)と呼ぶ幹細胞からつくった細胞製品について、早ければ2020年度中に承認申請する。8月までに脳梗塞や皮膚の病気向けの臨床試験(治験)を実施。21年度中にも実用化したい考えだ。
ミューズ細胞は身体のさまざまな臓器にある間葉系幹細胞の一種。10年に東北大学の出沢真理教授が発見し名付けた。
臓器がダメージを受けて細胞が壊れると、損傷部位でスフィンゴシン1リン酸という物質がつくられる。同社などによると、ミューズ細胞にはこの物質に反応する受容体があり、この物質が発する信号をたどって損傷部位に移動するという特徴があるという。移動先でその場にある脳や心臓、皮膚などの細胞に変化し、損傷部位を修復するのに役立つとしている。
同社は健康な人から採取した間葉系幹細胞からMuse細胞を抽出。培養して増やし、凍結保管しておく。脳梗塞などで細胞を必要とする患者にすぐに投与することができる。
同社は少なくとも脳梗塞と表皮水疱(すいほう)症という皮膚病について、第2段階の治験を終えた。いずれも安全性や効果が見込めることを確認したという。脳梗塞では、梗塞を起こしてから4週間以内の時期に用いると、効果が見込めるとみている。心筋梗塞や脊髄損傷でも第2段階の治験を進めている。
治験で効果が見込めると確認した病気向けに、まず20年度中にも承認申請する。承認後、ほかの病気にも使えるよう対象を広げたい考えだ。