雪が舞う寒い一日でした。午前中は、除雪してから、母を市内の病院に送り迎えし、午後は家で仕事しました。図書館で借りて、桜庭一樹の「ほんとうの花を見せにきた」を読みました。3つの話から成り、最初の「ちいさな焦げた顔」は、竹からうまれた吸血鬼バンブーと少年の物語です。心優しき2人のバンブーは、バンブーの掟を破って、人間の子どもを助け、一緒に暮らすようになります。昼間生活する少年と、夜に活動するバンブー。少年の暮らす世界は怖くて貧しくて、そんな世間から逃れてきた少年は、バンブーに助けれらながら成長していきます。バンブーという設定が面白くて、引き込まれます。
年を取らないバンブー。そんなバンブーにとって、生きて成長していく人間には「火」があり、火を守ることが喜びです。3人で楽しい暮らしを続けていますが、少年は次第に大人になり、自立し、親離れ(バンブー離れ)していきます。危ないバンブー少女の友達との遊びを咎められながら反発する少年。そしていつしか、親バンブーは、人間と暮らした罪で裁かれることになります。その時になって、後悔する少年。バンブーと人間の話のようでありながら、普通の人間の親と子どもの関係とも似ています。親に甘え、親を頼り、いつしか親から離れ、そして親のありがたさに気付く。バンブーの愛情も無償の親の愛と似ています。
2話目の「ほんとうの花を見せにきた」は、1話目で後半に登場した少女のその後のお話で、3話目の「あなたが未来の国に行く」は、1話目で登場したバンブーの王様が王になる前の過去の物語です。でも私は1話目が一番好きでした。とにかく素敵な話でした。残酷な部分もありますが、心温まる泣ける話でした。
桜庭一樹といえば「私の男」が印象深く、あれはどろどろした話でしたが、この話は童話のような話です。どちらも愛がテーマです。表紙の絵も好きだし、いいお話でした。