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kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

映画批評、恐怖夜話、あらゆる

告知をユルく描いて書いてます。

過去の選択 3

2006年11月22日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

ヤナギと名乗る後輩はビールを2つ注文した。渋々連れて来られたヤナギの恋人も
店の雰囲気で怒りが落ち着いたようだった。ワタシは自己紹介を兼ねて、彼らに店の
名刺を渡した。名刺を見たヤナギは何度もうなづきながら、昔を思い出している。
彼の友人がワタシのファンだったらしく、よく名前を言っていたのを思い出したの
である。なるほど。道理で違う専攻で後輩なのに、ワタシの事を憶えていたわけだ。

「その友人がよくね、「今日のアキコさんはスタイリッシュだった」とか「今日の
 アキコさんは疲れていた」とか、余計なコメントしてたの思い出すなあ。」

ワタシは久々に関西のノリでツッコミを入れる。最近、はしゃぐ事を忘れていたので
久しぶりに楽しくなった。彼らはまた店に来てくれると約束してくれて、夜中の3時
頃に帰って行った。先ほどまでいた常連客も帰り、ワタシとマスターだけになった。

「アキちゃん、俺、ちょっとフラフラしてきたんで、先に帰っていいかな?」

風邪をひいて微熱があるマスターを先に帰らせて、閉店の5時までワタシ1人で頑張る
事になった。給料日前なので、お客さんはもう来ないだろう。ワタシはヤナギが置いて
いった彼の名刺に書かれている電話番号とメールアドレスを携帯電話に登録する事にした。

登録後、受信履歴を確かめる。キヨのメールを着信拒否してからと言うものの、受信
メールをセンター問い合わせする事が日課となっている。彼女の事が恐いのか、ただ
気にしているだけなのかはわからない。昨日はなかった……今日もなかった……明日は
どうなんだろうか……。ジャズが静かに流れる店内が一瞬暗くなった。それと同時に
早送りされるジャズのメロディ。有線放送のジャズ専門チャンネルが早送りするなんて
ありえなかった。ワタシは携帯電話をカウンターに置いて、専用受信機とアンプがある
トイレの方へ向かった。アンプの前まで来た時に、図ったように正常に戻るジャズの
BGM。ため息をつく暇もなく、カウンターに置いてあった携帯電話が、メール受信時の
バイブ機能で少し動いた。夜が明けそうなこの時間にメールをよこす者は誰なんだろう。










自分の記憶は確かかどうかわからない。               ボスヒコ


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過去の選択 2

2006年11月20日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

あれから1ヶ月、キヨからのメールを着信拒否しているので、彼女がメールを送ってきて
いるかどうかわからない。久しぶりにワタシの事を思い出したから軽くメールしただけ
なのか? 暇つぶしの嫌がらせなのか? それとも、仲直りしたいのか? 疑問だけが
うずまくメール。どっちにしろ迷惑な話だ。1日1回は頭の中をよぎるあのメールに
うんざりしていた。ワタシは飲みかけのコーヒーをそのままにしてベッドに入った。

大学を卒業してもやりたい仕事が見つからずに、ワタシはカウンター10席ほどの小さな
ショットバーでバイトしている。今日も掃除や軽食の準備をするために夕方5時には店に
入っていた。そこは隠れ家要素の高い店として雑誌に紹介されるほどの繁華街の裏通りの
ビルにある。この店で働く事によって、少しは人見知りを直せると思い、毎日笑顔を作る。
常連の客にからかわれながらも、徐々に仕事と人に慣れていくのが楽しかった。

そろそろ終電を乗り逃した客が店にやって来る時間だ。週末ではないのでそんなには忙しく
はならないだろう。ワタシはマスターに5分間の休憩をもらってタバコを吸いに外に出た。

ポケットを探るとタバコがないのに気づき、昨日の雨によって出来た水たまりを避けて、
タバコを買いに行く。自動販売機の前でゲイカップルが喧嘩をしているのを無視しながら、
財布から小銭を出す。ゲイカップルの小柄の方がちらちらとワタシを見ている。ワタシは
タバコを選んですぐにその場を立ち去ろうとした。その時に小柄な方に声をかけられた。

「すいません! あのう、もしかして尼崎芸術大学で油絵を専攻してましたか?」

話によると彼は尼崎芸大で彫塑を専攻していた。彫塑の教室は油絵の隣の教室だった
ので彼は油絵を専攻していたワタシの事を憶えていたのだった。彼は1学年下の後輩
だったのでワタシの記憶にはない。しかし、この広い東京で出会った兵庫の同じ学校
の卒業生に嬉しくなり、彼らの喧嘩の仲裁役を買って出た。そして、ワタシが働いて
いるバーに連れて行った。







感じるものに惑わされるな。                    ボスヒコ

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過去の選択 1

2006年11月19日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

キヨと疎遠になって、2年ぶりのメールだった。メールの内容はたわいもなく、
ただ、「アキコ元気? 今度、そっちへ行く用事が出来たから、また、会って
遊ぼうよ。」とだけ、送信されて来たのだった。ワタシは返信するのを戸惑った。

なぜなら、彼女の不愉快な行動が疎遠の原因だったからだ。ワタシは3年前に
一方的な恋愛感情を抑え切れず、ある人に不器用な告白をしてしまい、見事に
ふられたのである。その時に相談に乗ってくれたのが、大学からの親友のキヨ
だった。彼女は典型的な良い家庭の育ちで、性格に暗い部分は見えなかった。

ワタシとの対照的な性格に、憧れや妬みなどがあったが、一番クラスで気が合う
友人だったのだ。その彼女が2年前にいきなり結婚をした。メールで送られて
来た文章に衝撃が走り、目眩がした。彼女と結婚する男性はワタシがふられた
相手とだったのである。時期的に見ても状況的に見ても、ワタシがふられてから
彼女達が交際しだしたのは明らかだった。結婚式では、友人の中で唯一ワタシ
だけが呼ばれなかった。元々、ワタシの性格上、人と仲良く出来る方じゃな
いので、ワタシが出席してない事に誰も気がつく事もなかった。葬り去られた
ワタシの記憶は甦る事もなく、その日を境にして、キヨとの付き合いは消えた。

キヨの考えがわからない。嫌がらせとも思える結婚メールの後、着信拒否など
され、彼女達夫婦は引っ越しをした。最後の仕打ちで全てが不愉快になった世界。
キヨと出会い、楽しかった日々から引っ越しまでの彼女との共同の想い出を
ワタシの頭から消してしまいたい。その過去がキヨの一通のメールでリロード
される。いつまで続くのか? ワタシは一方的なキヨに怒りをおぼえると同時に
恐怖を感じた。キヨとの関係を完全に断ち切るには、立ち向かって関係を潰す
「攻め」か、彼女と同じように引っ越しや着信拒否をして交信を無くす「守り」
しかない。心のどこかに仲良かった頃の彼女の正常さを求める部分が邪魔をし、
攻める行為はできない。ひとまず、キヨへのメールの返信をしない事に決めた。









目に見えるものが全てではない。                  ボスヒコ

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高架下 後編

2006年10月19日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

「わっ!!!」

手を振り回して髪の毛を地面に落とした。手には血と思える赤黒い液体が
べったりと付いていた。リョウイチは慌てて近くの水たまりで手を洗う。
(な、なんだ!?……ひょっとして、捨てられていた錆びた電化製品から
出た赤錆かもしれないな。否、きっとそうだろう……)彼は無理矢理そう
思いたかった。仮に血の様な液体が赤錆であっても、傍らに落ちているモノ
は明らかに髪の毛だった。黒くて長い毛を持っている動物は存在する。犬、
馬、猫などがそうだが、どんな生物であっても毛髪である事に違いは無い。
恐怖と生理的な嫌悪感が襲ってきた。傘の代わりの物を探す気持ちは失せ、
一気に走って帰る為にカバンを背負い直した。その時に地面を這う音がした。

ガサ…ザザザザ…

大雨の音でも消える事が無い意図的な音。リョウイチは音が鳴った方向へ
振り向いた。先ほどの高架下で見かけたレインコートを着ている人がまた
同じ様にしゃがんで丸くなっていた。リョウイチは驚かされた腹立ちに
レインコートの塊に向かって罵った。

「なんだテメエはよぉ!!!そんな事やってただで済むとおもっ………」

(……コ、コイツ……、なぜそっちの道にいるんだ!?)

レインコートが追いかけてきたとしたら、自分の後方にある走ってきた道で
ないとおかしい。高架下で通り越された記憶なんてない。サッカー部の中で
1番の俊足の自分と同じ早さでここに来た事も考えがたい。異常に気づいた
頃には遅く、黒い物体がこちらに向かって来た。その動きは獲物を捕獲する
前の肉食動物によく似ていた。そして、薄暗い高架下でそいつは姿を見せた。

レインコートと思われていた黒い表面はアスファルトに似ていた。その形状は
巨大な貝殻で、前方部分の黒い穴に何かが見えた。それはまぎれもなく、人の
足だった。足首しか見えなかった2本の足は、今では太もも辺りまで出ていた。

リョウイチの脳は答えを引き出そうとして混乱していた。(何なんだコイツ!?
人間なのか!?)その考えは次の瞬間に砕け散った。2本に加えて、4本の足
が出てきたのだ。計6本の人間の足を持った黒い塊はヤドカリの如く動き出し、
リョウイチとの距離を一気に縮めて来た。

「わあぁぁああぁあぁあああぁあああああああ!!!!!」

彼はカバンを放り出して、さっき来た道を無我夢中で引き返した。未曾有の
恐怖の為に必死で走っているので振り返る余裕は無いが、あのヤドカリが
追って来るのは感じられる。リョウイチはこの道の右側に見える雑草で出来た
林の奥に公道があるのを思い出した。そこにあるモスグリーンの金網さえ
乗り越えればなんとか逃げられる。彼は道の右側に生えている背の高い雑草の
中に突っ込んだ。もがけばもがくほどに手足に絡まる雑草を引きちぎって、
金網まで辿り着いた。後方ではもの凄い音を立てて雑草を飛び散らしながら、
ヤドカリが迫って来ている。リョウイチは金網に跳び移った。







金網を越えて地面に着地した彼は、ちょうどそこを走って来た車に轢かれて
重傷をおった。数ヶ月後、無事に退院したものの、あの時の最後に見た光景、
金網に張り付いたヤドカリの姿が頭から離れずに悩まされていた。勢い余って
金網に激突したヤドカリは足が生えている黒い穴から、もう一つ何かを出した。
それは長い髪の毛を振り乱して怒りに狂う、血の気のない女の頭部だった。






















大雨の高架下には気をつけましょう。               ボスヒコ

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高架下 前編

2006年10月18日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

高校2年生のリョウイチはいつも川辺を歩いて帰る。その理由は、考え事が出来る
上に近道だからだ。ある夕方、サッカー部の練習を終えて帰宅している所に大雨が
降ってきた。彼は急いで電車の高架下まで走って行った。いくら待ってもやまない
雨にしびれを切らした彼は傘の代わりのモノを探す事にした。試合が近い為、普段
より過酷な練習に疲れていたので、早く帰って熱い風呂にゆっくり浸かりたかった。

ゴミクズが集まっている所から、ようやく手頃な段ボールを見つけた。大量の雨が
高架下まで流れてきていて、土が泥になってきている。彼はその段ボールをひき
抜いた。ガラガラと音を立てて崩れ落ちる電化製品のゴミ。その音に反応したかの
ように数メートル先の林が揺れた。彼は動物でもいるのかと思い、その林の方向に
目を向けた。そこにいたのはフード付きの黒のレインコートを着た人がしゃがんで
いるように見える。いくらレインコートを着ているからといって、近くに雨宿り
出来る所があるのにこんな土砂降りの中にたたずむのは変だ。おそらくこの辺の
ホームレスで、自分に気を遣って高架下に入って来ないのだろうと思った彼はレイン
コートの人に向かって叫んだ。「俺はもう出て行くから!こっちで雨宿りしたら!?」
レインコートの人はそれに反応せず、身動きひとつしなかった。「……、ちっ!
勝手にしろ…」親切心を無駄にされた彼は毒づいた。その頃、辺りも暗くなってきた。

一気に走って帰ろうと思い、持っていた段ボールを頭の上にかぶせた。思っていた
より湿っている段ボールに嫌悪感が湧く。微かにコケの臭いもしていた。違うモノに
取り替えようという思いよりも、早く帰りたい気持ちの方が勝った。彼は高架下を
飛び出した。段ボールの傘に当たる大粒の雨が大きな音を立てる。このままじゃ、
この段ボールもすぐに水を含んで使えなくなる。彼は次の高架下で再び、傘の代わり
のモノを探そうと思った。水たまりを避けながら走る彼に段ボールから何かが流れ
落ちて手の甲についた。(嫌だな…、汚い水か……コケ?…………虫だったらもっと
嫌だな………)いくら傘代わりだと言ってもそれすらも避けて振りかかる雨は防げ
ない。目に入った雨のせいで、手の甲に何がついたのか確認出来ずに次の高架下に
着いた。身体にかかった雨を振り払おうとして、段ボールを捨てようとした。その
時、目にしたのものは、赤黒い血を滴らして手に巻き付く黒くて長い髪の毛だった。

















おえっ。                            ボスヒコ

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雫 3

2006年09月28日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

今度は大宮だけが驚いていた。小田はうつむいて黙っている。大宮は驚きの
気持ちと間違いであってほしいと言う気持ちで小田を責め立てた。しかし、
小田にはその気持ちが伝わっていないのか、若干放心しながらも少しづつ
私に話し出した。彼女の説明によると、高校の時に2回、去年に1回中絶を
したのだった。高校の時の2回の中絶は当時の彼氏の子供だった。中絶は
彼氏の薦めだったのか、自分の判断だったのかは思い出せないでいる。…
…なんて子なんだ。この子には意思を感じられない。私は心の中でため息を
ついた。大宮は騙された悔しさで泣き出した。「ごめんなさい」と、もう
何に、誰に対して謝っているのかもわからなくなった小田。実に面倒くさい
状態になったので、私は軽い説教と重い助言をして終わらす事にした。


「君の弱い心、強い欲望が諸悪の原因だ。堕ろす理由に正当か不当かは
 本人達の問題なんで私にはわからない。しかし、今、君が病んでいる
 と思っていたり、運が悪いと思っているって事は自責の念があるって
 事だ。まだ若いから良いが、あまり中絶を繰り返すと後で産めない身体
 になるから、後悔をしないようにしなさい。自分で反省するやり方、
 前に向く生き方がわからないなら、供養という形で祈れば良い。じゃ
 ないと、彼らの念がどんどん兄弟を欲しがるぞ。とにかく祈る事だ。」


なんとか、小田の魂を洗ったが、おそらく彼女は身体を壊すまで中絶を繰り
返すに違いない。私はなぜかそう思った。私が助言出来るのはここまでだ。
悩んだら連絡しておいでと言って玄関まで2人を送る。彼女らは丁重に
頭を下げ、ドアを閉めようとした時、私は再び小田の回りに黒い影を見た。



その黒い影の数は4つ。

3人という数と合わない。私にバレぬよう、ひとつの邪悪な影は隠れていた。




数日後、大宮から連絡があった。私の話を聞いて気になったので田舎の両親に
電話をして、あの滝壺の話を聞いたらしい。そこは昔、なんらかの事情で世に
出せない子を流す場所だった。そして、そこで溺れ死んだと言われる子は自殺
だった。検死の結果、その溺死とされた子は妊娠していた事が判明した。子供達
に悪影響が出ると思い、村全体で「妊娠・自殺」と言う事実を隠したのだと言う。



………小田に憑いた黒い小さな影は、まだ生命に飢えている………




私は最後の助言を彼女にしたが、今はどうなったかわからないでいる。









いやはやなんとも。                      ボスヒコ

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雫 2

2006年09月27日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

滝壺で溺死した生徒の霊が小田さんに憑いているんではない。その生徒に
それほどの力もないし、小田さんに取り憑く理由もない。それよりもそこの
滝壺はあまり近づいてはいけない場所だったのじゃないかと思う。私が
手探りながらも原因究明している時に部屋の明かりが暗くなったような気が
した。だが、彼女達には感じられなかったようだ。何か嫌な感じがしてきた。

目の錯覚だろうか?小田さんから視線を外した時に彼女の後ろに黒い影が
見えた。それと同時に私の視野に「赤ちゃん」という文字が飛び込んで来る。

「たぶんね……、小田さんには、水子が憑いているね。」

大宮と小田は驚きながらも話し出した。小田は高校の時に1回だけ中絶した
と言う。その時に相談を受けたのが大宮だった。おそらく、それから供養を
していなかったんだろう。小田は泣きながら「あ、赤ちゃん…ゴメンね…」
を繰り返していた。私は「水子」と言ったのに彼女の口からは「赤ちゃん」
と出た事を考えてみた。果たして私は過去を言い当てたのか、彼女の思考
を読んだのか、どちらなんだろうか。しかし、供養と言う行動を取る事で
彼女の男癖(彼女達が言っている男運の悪さ)が直るのなら、どちらでも
良いだろうと思った。私はこういう能力を持っている割に宗教や霊界とかは
あまり知らない。だから、気持ち的には深く考えずに彼女に供養を薦めた。

大宮は小田が供養してなかった事に怒りながらもなだめた。その後、小田の
過去・現在の彼氏の話を聞いたり、大宮の仕事の悩みの相談を受けたりして
時間が過ぎて行った。その間も小田の後ろに小さい影が見える。私には害は
ないので、あまり気にせずにしていたが、2回目の文字が視野に流れてきた。


……3人……


私は思わず「マジ…?」と呟いてしまった。談話をしていた彼女達は私の暗い
表情に気づく。これは本人に確かめるしかない。私は小田に再び質問した。


「小田さん…、正直に答えてください。貴女は3人の水子がいますか?」








夜中にこういう事を書いております。            ボスヒコ

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雫 1

2006年09月26日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

5年前、仕事関係者である大宮さん(仮名)が相談があると言って、友人の
小田さん(仮名)を連れて我が家にやってきた。彼女は高校からの親友で
今も仲が良い。大宮さんは小田さんの恋愛事情に少し疑問があるようだ。
小田さん本人も自分の男運の悪さにやっと自覚が芽生えたみたいだが、
どうしていいかわからない。彼女達とテーブルを挟んで、話を聞く事に
した。小田さんは小柄で可愛らしい24歳。彼女が自分の事を語り出した。

「悪い人とつき合う気はないんです。でも気づいたらどっぷりハマってて
 どーしようもなく好きなんです。結局、遊ばれて捨てられるって感じ。
 それでも未練タラタラで、その人に呼び出されたら行っちゃうんです。
 そこで我慢すれば良いのは解っているんですけど…。今の彼氏…、彼氏
 かどうかわからないですけど、その人とも最終的にはそうなっちゃうの
 かなあって思って、相談したいんですけど…。どうでしょうか?」

どうでしょうか?って言われてもね~。貴女は優しくされるのが弱いん
じゃないんですか? すると、しびれを切らした大宮さんが話し出した。

「違うんです!昔からそうなんですけど、小田は自分から行くんですよ。
 絶対に遊ばれるってわかっているのにですよ。しかもその人達は小田を
 誘惑してないのに、自分から誘いに行っているんです。バカでしょ?
 だからムカつくんです。毎回毎回、泣いて帰って来るけど…。一回、
 また男を誘う気配がしたので、前もって止めたんですよ。その時は
 彼女も自分の悪いくせに気づいて止めたんですけど、数日後には私に
 隠れて誘ってたんです。でも、小田はただヤリたいんではないんです。
 それなのに、そんな男に行ってはフラレて悩んでいるんで……。」

ん~~~~~~、そっか。……。ところで、君たちはどこの出身なのかな?
私の脳裏に浮かんだのはジャングルみたいな所だった。緑豊かな山の奥に
小さな滝壺があり、綺麗な川が流れている。子供達が飛び込んだりして
遊んでいる。田舎の風景に混じって、男の子も女の子も一緒になって騒いで
いた。彼女達は答えた。高知県の田舎の出身だった。そこで、今浮かんだ
光景で遊んだ事はないか?と訊けば、非常に良く似た場所が学校の近くに
あって、そこで全学年(凄い田舎なんで少ない)の生徒でよく遊んだらしい。
ある日、そこで泳ぐ事を禁止された。理由は生徒の一人が遊んでいる最中に
溺れ死んだのだ。彼女達はそれを思い出して、怖がった。もしかして……。









ま、軽い話なんですけど。2~3話構成です。          ボスヒコ

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泊まり込み あとがき

2006年08月24日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

書きました。いや~、書いたね~。私の夏はコレで終わりました。これだけ
書きゃー、ちとは恐い体験するかなって思っとりましたが、たった1回だけ
でした。それも最後の最後ですよ。エピローグの謎のブタ一家のイラストをね、
描き終えて、日記にアップしようと思ったらアップできないんですね。別に
イラストのデータ容量がデカいんでアップできないんではない。んで、Macを
再起動してもう一回同じ事しても無理。クソが!って愚痴りながら、なんとか
アップできた時に、押し入れの中から、変な音がした。そちらの方に目をやると
押し入れが開いている。あれ?開けてたっけ?と思い出しながら、耳をすます。

…コ…コ…コ…コココココココ…ココココココココ…ココココ

何の音だ? その表現出来ない音がだんだんデカくなってくる。

…コココ…ココココオオオオオオオオーーー=========オオオ!!!

モーター音のようにも聞こえるが、隣や下の階の人の掃除機や洗濯機の音では
ない。この仕事部屋で初めての現象。確実に3m範囲内で唸っている。私は
硬直したまま押し入れから、目を離さなかった。しかし、な~んにも起こらず、
ずっとうるさいだけなんで「じゃかましぃわっ!!」て怒鳴った。ビタッ!!
って鳴り止みました。なんだったんでしょうね。別に害はないんでいいですが。

今回いろんな方から、メールや人づて、電話などであーだのこーだの訊かれ
ました。が、そういう事をだ。日記のコメントに書けっての。書いてもいい
ですよ~。ってか、書くとこですよ~、あそこは。キスケの読者方は何が
何でも書きませんね。ま、それはともかく、質問で一番多かったのが、やはり
「あれは本当の話なの?」ってやつです。答えは「答える気はない!」です。


泊まり込み エピローグ

2006年08月23日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

………何か聞こえる………懐かしいような……寂しいような………





私は思い出した。山奥で聞いたあの子の掠れた歌声を。私には届いていた。


事件の時に視た色の抜け落ちたような幻想ではなく、山を越え、町を越えて
私の頬を撫でるようにあの子の歌声は届いていたんだ。


束縛された現実に空耳の如く。


声にならない叫び。


遠ざかる命。





それとも……


私が惨劇に巻き込まれないようにと、祈ってくれたのかもしれない。





あの事件から数年後、苦しみから立ち直った私は再びライターの仕事をする。

私が働く新しい会社には小さな中庭がある。

そこの片隅に、白くて小さな百合が人知れず咲いた。

光が注ぎ、風で揺れるその花を見て、私の再出発を祝っているように感じた。










警察の調べによると、

ブタの父親と言われた男の名前は「柴田勝博」。ブタの名前は「柴田唱子」。
旧姓は「香谷唱子」。ブタの両親は彼女が生後3ヶ月の頃に事故で死んでいる。
柴田勝博と柴田唱子はれっきとした夫婦。その2人の間に子供が生まれる。
その子の名前は「柴田禍世」。彼女は10歳の頃に湖で行方不明になっている。

これが事実なら、「ブタの母親」という存在は何だったのだろうか……。


そして、ブタは……。
















                  終わり














はい、おしまい。夏もおしまい。                 ボスヒコ