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kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

映画批評、恐怖夜話、あらゆる

告知をユルく描いて書いてます。

なじむ影 6

2007年12月18日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

おそらく、あの待ち合い場所で見たワインレッドのシャツの女は生霊と
言われるモノだろう。彼に憑いた念、彼がいつも頭の隅で考えてしまって
いる彼女との交際。本来なら見えないモノには違いない。その変わった
状況はただの忠告として捉える事によって、この際どうでも良かった。


彼女は彼の性格もクセもよく知っている。今日、社内で見かけた彼は
いつもと違うかったに違いない。女の勘、モテない奴の勘、フラれる
奴の勘が働く。彼女は普段メールをしないのは、もちろん彼を怒らして
別れが来る事を避ける為だ。自分が彼にすがったとしても「すがる能力」
が無いのも重々承知している。彼女が自分の能力で発揮出来るとしたら、
脅しめいた感情で彼の心を金縛りにさすしか無かった。だから、あたかも
状況を見たかのように核心めいたメールを突然して、彼にプレッシャーを
与えて、本心や行動を暴こうとした。彼は今、死ぬほどに動揺している。



それが彼女のやり方で、それが彼女の今回の目的なのだ。



…………ワタシを捨てたら、どうするかワカラナイヨ…………



彼と彼女の交際の事を考え、最も良い別れ方を考えなければならない。


これも男性本意、相談者優先となる下らない決断。しかし、このまま
ダラダラと未確認交際を続けても先に見えるのは御互い残念な結果だけ。


彼が恐れているのは彼女が社内で自分達の状況を皆に公認させる事だ。
そしてその延長上の結婚。彼女は彼の制止を振り切りだし、徐々に周囲の
人間に彼の事を漏らし出している。それも「真っ当な交際」としてだ。


もし、彼が正直に彼女に話したとする。「実は元カノが忘れられない」
「実は貴女の事は別に好きではない」「実は新しい出会いがほしい」など。


どれを取っても、彼女の荒い気性を逆撫でし、プライドに傷をつける。


彼女が恐れている事は何だろうか。


彼との交際が終わる事……彼と結婚出来ない事………彼を失う事…………


いや、違う。彼女が最も恐れているのは



「遊ばれている」と言う事実を認識する事。



私が考案した彼女を遠ざける方法は、少々面倒臭いがどちらも良い結果に
終わる事が解った。それを彼に丁寧に教えてやると、彼は安堵と感謝の
気持ちで泣いている。私は情けない彼を残して、そのバーを立ち去った。












明日、最終回。                   ボスヒコ


 ごぶさたでした。押してやってください。
 

なじむ影 5

2007年12月17日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

彼は声を出して驚いたので、バーテンに不思議な顔をされた。私は
彼とは反対に声を出して笑ってしまった。「笑い事じゃないですよ!」
と、彼は私を注意する。笑い事じゃない?立派な笑い事じゃないか!
元カノへの彼の想いは届かず、元カノは彼の事は忘れている。そして、
自分の運命を左右する般若に肩を掴まれている。優柔普段なお前を
笑わずにいられるか。それに相手の女性のズル賢さに嘲笑しているのだ。


“そう? それで何の話をしているの?”


彼は何かを感じたのか、少しかがんで小さくなり、静かに私に言った。



「……ボス、ちょっと思ったんですが………彼女は来てなくても……
 彼女の協力者、ボクの知らない彼女の友達とかがこの店内にいたと
 したら………待ち合い場所から彼女に指図されてここに入ったのかも…」


彼が言うには、男性か女性か解らない彼女の“協力者”が私達を見張り、
ここの店からケータイメールで私達の様子や写真を彼女に送っている、と
言う。確かにその可能性はある。いくらなんでも私達より先に入っている
とは思えない。私達より後に入った客はカウンター席で呑んでいる若い
2人組と女性1人、テーブル席で呑んでいる3人組の男達。どれも違い
そうだが、被害妄想の彼は犯人を探し出そうとあからさまに見渡している。


女性はかなり酔っているのにまだ酔わそうとしているホストのような男性。
この若い2人組が芝居だったら本当のスパイになれるだろう。テーブル席の
3人組はサッカーの話で盛り上がっていて少しうるさいぐらいだ。その中の
1人が彼が凝視しているのに気がつき、睨み返して来た。スパイは相手に
顔を知られる事は御法度なはず。睨み返すぐらいだから彼女の協力者では
無いだろう。私はややこしい問題が起こる前に彼に詮索をするなと注意を
した。残るはカウンターの女性1人。常連らしく、気軽にバーテンと談話
している。こちらを見る気配も話を盗み聞きする気配も無さそうだ。


納得がいかない彼は他の可能性を考えているようだった。私達の状況や
話を聞ける者………。それはカウンターを挟んだ目の前のバーテンしか
いなかった。このバーテンを協力者として確定するには、まず彼女と
友人である事。そして、彼と彼女の関係を理解している事。彼女が私達を
尾行していたら、たまたま自分の友人が働いているバーに入った。そこで
ケータイメールや電話などをかけて事情を言って、逐一報告させている。
どう考えても無理な話だった。バーテンは一度もカウンターを離れて
いない。仕事柄、自分のケータイなどは出せない。これらの推理を彼に
説明して納得させた。ここのバーには彼が唱えた協力者が居ないのは
理解したようだが、肝腎な核心に迫ってくる彼女のメールの不気味さに
もんどりうっている。その時に私にはこの答えと回避方法の全て解った。












あと2回ぐらいで終わります。              ボスヒコ

 ほんとに押しませんな!!押してって!!
 

なじむ影 4

2007年12月16日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

メールを確認させてもらった。タイトルも無く「今、誰といるの?」
とだけ送信されている。その前のメールも「今、どこにいるの?」と
「今、何やってんの?」と言うようなもんだった。私達はゆっくりと
周囲を見渡した。おののいている彼は全員の顔を確認したが、彼女
らしき人物は見当たらなかった。ということはバーの外にいるかも
しれない。彼女は私達が待ち会わせた場所に実際にいて(なぜいたか
解らないが)私達がこのバーに入ったのを見届けたのかもしれなかった。


「ボ、ボス!!どうしましょう!?」


彼は囁きながらも叫んでいた。彼女の実態が何かも判断できないし、
どこに存在しているかも解らない。それにこのメールも彼を試して
いるメールなのかもしれないが、単純に偶然なのかもしれない。
ここで怯えていても無意味なので彼女の「今、誰といるの?」に
対しての返信をする事になった。さっきまでの彼女のメール返信を
それとなく誤摩化してきた彼は、私の薦めにより「今、誰といるの?」
に対してはまともに返信する事にした。ここで下手は出来ない。





“今、誰といるの?”





“久しぶりに知人の男性と呑んでいる。”



無難な答えだ。特に疑う要素もなく、事実だ。彼はすでに4杯目の酒の
注文をしていた。返信が返ってくるかどうかも解らない時間は彼に
とって拷問に等しい。彼がケータイの沈黙に耐えきれずに私に言った。


「ボクが悪いんです。どうしても彼女の押しの強さに負けて、ズルズルと
 来てしまって……。元カノの未練の寂しさを彼女で紛らわしていた
 ボクが悪いんです。言い訳になるけど、かなり強引な女性なんで、その、
 ………一応は、こういう関係はやめようと言ったのですが………彼女は
 聞きもしないんです………最後にはキレまくって………男のボクが言う
 のかなんですが……怖いんです。………腹も立ちます………でも、この
 メールは…もっと怖い……ここで元カノとよりを戻したいとか、この
 彼女と離れたいとかが言っているのがバレたら、彼女にも会社にも…」


彼が恐怖のあまりに懺悔の言葉を呟いていた時に悪魔の受信の音が鳴った。






“そう? それで何の話をしているの?”













…わお………………………                ボスヒコ


 押してください!!!
 


なじむ影 3

2007年12月15日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

生霊退散!とか言って追い払える程、真っ当な修行をしてませんよ、私は。


生霊と言われるモノは人の強い思念。生霊と思われるその人物の怒りや
執着を丸く納めれば自然に取れる。彼にとって、ワインレッドのシャツの
彼女はただの遊び相手。遊び相手にしては彼の好きなタイプでは無さ過ぎた。
ダラダラと肉体関係が長引いてしまったあげくに、彼女だけが恋愛モードに
なる。彼の年齢ぐらいの若い人にはよくある事だ。一方的に関係を断ち切る
ほど悪い人間でも無い彼。ただの優柔不断な彼は現実世界で彼女にトンズラ
かましても、彼より意思(執着や愛情と言う名の怨念)が強い彼女の生霊は
場所と時間を考えずにずっと彼の背後に留まるであろう。何にしても早く
解決した方が良いので、トンズラでも何でも良いから、彼女を避ける方法は
無いのかと彼に質問してみた。答えた内容は更に問題を深める事になった。



「実は彼女、ボクの働いている職場にいるんです。同期なんです……。」




う~~~~~~~~~~~む、そりゃ困ったな。その状況でトンズラって
意味は「会社を辞める」って事だもんな。もちろん辞める気は無いよな。
彼女も辞める気はないもんな。う~~~~~~~~~む、そりゃ困ったな。


彼女は会社の女子社員の中ではリーダー格らしい。と言う事は女子社員
のほとんどに知れわたっているだろう。もちろん「付き合っている」と
言う話が。どうせ優柔不断の彼の都合で、「この関係は皆に内緒だぞ!」
って感じで彼女に言っているに違いない。彼女は黙って約束を守っている
ようなタイプでは無いはずだ。半分は騙されていると思っている彼女は
希望を現実に変えるべく、彼の周囲に“ワタシ達は付き合っている”と
黙々と言いふらかして足下を固めている。彼女は自分の容姿や性格を冷静に
分析できる程に利口なので、数少ない良い獲物を逃さない。気も強いので
狙ったものは必ず手に入れる。彼だけが知らない結婚への序曲が流れる。


そして、また彼のケータイメールの受信音が鳴った。彼はキツい酒を注文し、
ケータイを開いた。液晶画面の灯りに照らされた彼の顔は更に青ざめている
ように見える。彼は小さな吐息を吐き出して、身体を震えを止めようとする。


「……ボ、ボス……、その彼女からのメールが来ました。解っているとは
 思いますが、実はさっきからのメール、その彼女からなんです。この関係は
 内緒って事なんで、ボクらの関係上あまりメールを送って来ません………
 でも、今送って来たメールは……とても……どう言って良いのか………」



彼に血の気を引かせているメールの内容は「今、誰といるの?」だった。












うひゃあ~!!                        ボスヒコ


 うひゃひゃあ~!! 押して!!!
 


なじむ影 2

2007年12月14日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

しばらくして彼のケータイに再びメール受信を知らせる音が鳴った。
少ししつこい感じ。先ほどのメールと同一人物のような気がした。
彼は相談の途中と言うのも忘れてメールを打ち出した。挙動不審。

私は彼にメールの相手に電話をかけたらどうだと薦めたが、はっきり
断られた。返信を終えてやっと相談に戻る。元カノとの再出発1%の
可能性を求めて足掻く相談者。あげくの果てに私の目に見えぬ力で
1%の可能性を増やしてくれないかと懇願された。じゃあ、100万円。
と言いたいところだが、確率を上げる保証も無いし、邪魔臭いので
彼の懇願を流した。よほどつらいのだろう。彼の涙腺が緩んで来た。

彼の話によると、出会いがあっても新しい彼女が出来ない。やはり、
元カノが好きなのではないかと自問自答を繰り返す毎日に疲れたそうだ。


なぜ復縁が無理なのか? なぜ新しい彼女が出来ないのか?


待ち合わせの時に彼の後ろに見た女性の話をした。その女性は眼鏡を
かけていて髪の毛は黒くて長い。そしてワインレッドのシャツの
ボタンを胸元まで開けている女性だったよ、と教える。その女性こそ、
今現在の彼のカノジョ。彼が認めていないカノジョ。彼女は彼をカレシ
だと思っている、彼女は彼のカノジョだと思っている。その彼女が
現実でも幻でも彼の妨害をしている。復縁も新しい恋もさせない。


「えっ!?あそこにあの女がいたんですか!?」


人間の身体を通す人間など存在しない。私は解りやすく言った。


「生霊だ。彼女の強い念をお前が引きずっている。自分を引きはが
 そうとする第三者の私をお前よりも早く気づいた彼女の生霊は、
 お前より早く振り向いたのだ。このままゆくとお前はおそらくその
 彼女と結婚するであろうな」


彼は魚のように口をパクパクさせて喘いでいる。飲みかけのビールを
一気に飲み干して自分を落ち着かせると、静かに話し始めた。


「実はその女性は友達です。……実は昨日、その女性と会いました。
 昨日の彼女の格好が全くその格好でした………………」


彼に本当の事を時間をかけて言わすのは面倒なので、視得た事を言う。


「寂しさと苛立ちでその女性に手を出したから、こうなるのだよ。」


目を見開いておののく彼は何を言われたかを理解し、観念したようだ。





「あの、ボ、ボクはど、どうしたらいいんでしょうか!?!?!?」













そんな事言ったってねえ~。               ボスヒコ
 押してくらはい。
 


なじむ影 1

2007年12月13日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

先日、知人の25歳の男性に私に相談があるらしく、夜10時頃にある場所に
呼び出された。相談はおそらく恋愛の話だろう。いつもの如く、相談者の
おごりである。まあ、これは相談料というか、お布施みたいなもんだ。


待ち合わせ場所が広すぎてお互いケータイで連絡を取り合いながら探す。
私は彼らしい後ろ姿を発見した。貴男の15mぐらいの後ろに私はいると
思うから、振り返って確認してくれと言う。人ゴミの中、彼は振り返った。

私の姿を見つけ、手を振りながら近づいて来る。待ち合わせする場所などで、
よく見られる光景だが、その時の私は少し変わった光景を見ていた。

ケータイで振り向いてと言った時に、彼よりも早く振り向いた人影がいた。

その人は女性で髪の毛は黒くて長い。ワインレッドのシャツのボタンを
胸元まで開けている。眼鏡をかけているらしく、振り返った時に電灯の
反射で目元が少し光った。その彼女は彼の少し斜め後ろに立っていた。


彼女が振り向いた後、彼女の肩越しに彼が振り向いたのが見えた。


そして次の瞬間、その彼女を突き抜けて彼が手を振りながら出て来た。


一瞬の出来事だったので目の錯覚だと思い、よく確認した。彼が走り
寄る後ろをなんとか見ようとしたが、ちょうど彼女がいた位置と彼の
身体が重なって見えない。彼が私の前に到着した頃には、先ほどの場所
にはワインレッドのシャツの女性などいなかった。そんな姿どころか、
そこの場所にはホストや呼び込み、ゲイのカップル達しか見当たらず、
女性自体がいなかった。私はこの現象を彼に尋ねたかったが、怖がると
思って言い留まった。私の驚きなど解るはずもない彼は早く相談したくて
ウズウズしていた。私達は手頃なショットバーを見つけて、ドアを開いた。


置くの薄暗いカウンター席に落ち着いて、余計な世間話などせずに彼の
相談を聞く事にした。別れた彼女が忘れられなくてもう一度つきあいたい。
どうしたらいいのか?と言う、やはり恋愛の相談内容だった。しかし、
話を聞いただけでも無理な感じだし、勘で探っても再縁の可能性はほぼ無い。
ほぼ無いだろうが、ゼロでは無いならその少しの可能性を教えてくれと
言われた。無駄な未練につきあうほど私は暇ではないので、前向きな
再出発を推薦する。その最中に彼のケータイにメールが入り、会話の途中
などおかまいなしにメールを確認する。その行動を見て、彼は常日頃、
別れた女性からのメールが入るのではないかといつも期待しているのが
解った。だが残念な事に、いつも違う人のメールに違いない。予想通り、
愛しの元カノではなかったようだ。彼が舌打ちをした。その瞬間になぜか、
送信されてきたメールの人物が、どういう人物なのかが解ってしまった。











またまた、不思議な話です。
 押してくださ~~~~~~~い
 

性人 3

2007年12月01日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

いつにもなく苛立っている私にグロは戸惑い、良い弁解を言おうと考えて
いる。彼女の顔から焦りが見える。それは叱られたから来る焦りでは無く、
隠し事を感づかれないようにと思う焦りの念である。私は続けて言った。



「なぜあんな事をしつこく言うのか、お前は解っているか?」



グロは「ついクセで…」とか「あまり考えてない…」と言うようなごまかし
の言葉で場を濁す。しかし、私にはもう解っている事実がある。あの猥褻な
言葉を曖昧な冗談な気持ちで言っているのではなく、確実に目的を持って
言っているのだ。だが、それは今の彼女では無く、過去の彼女。怨みと欲望が
混ざっている執念が今の彼女の身体を通して言っていた。例えて言うと、
自分の生霊が自分に宿っているようなものだった。私は最後の通達を渡した。



「君は高校2年生の頃に性的な事で何かあったね?」



グロの顔はみるみる青ざめていく。高校2年と言う具体的な時期を憶えて
いるほどの性的な事。自然な事なら青ざめる事は無い。不自然な性的な事。


「……それはどういう事ですか?」と言うグロ。私は彼女の眼を見据えて
用心の為にも言葉を付け加えて言った。「失礼であったり間違えていたら、
私を殴っても良い。その頃に経験した“ある事”が今のこの卑猥な口癖を
作っているはずだからな。」グロは半ば諦めている顔になっていた。




「君は高校2年生の時、新しいお父さんとヤッただろ?」




グロの瞳孔が一気に開く。そして街中に関係なく泣き崩れた。母親が仕事で
家にいない時にその当時の父親に犯されて以来、その父親と母親が離婚する
時まで性的な事を強要をされた。グロは嗚咽を抑えながら私にすがった。



「つらかったの!誰にも言えないから!つらかったの!」



私に抱きつき過去の忌まわしい出来事を告白するグロ。「そりゃ辛い
だろう。血は繋がってはいないとはいえ、父親に犯されたんだからな。
高校生といえば多感な時期だ。ますます辛いだろう。忘れる事だな。
もうあんな事は言っちゃダメだぞ。」彼女は私にこう言われる事を
望んでいた。ここまで解っている私に隠し事や小芝居が通用するとでも
思っているのか。つくづくムカつく女だ。私は彼女の身体を離して言う。



「お前が“犯された”のであれば、頭のひとつでも撫でてやる。」



彼女は顔を上げて私の瞳を覗く。この人は何を言っているの?と。



「お前は大好きな父親と離婚した母親が憎かった。母親を憎み、困らせ
 たい気持ちは高校に上がっても萎えなかった。お前は新しい父親に
 犯されたのではなくて、お前の方が誘ったのだよ。怨みを理由にした
 お前の抑えられない性衝動だ。母親がいない夕暮れを狙って、毎日の
 ようにお前はお父さんをたぶらかせているのがハッキリと視得るぞ。
 “血が繋がってないんだから、いつかセックスしましょ”ってな。」



彼女はしばらく呆然と私を見ていたが、観念して気持ち悪い笑顔を見せた。












そうなんです。ええ、そうなんですよ、コレがまったく。   ボスヒコ
 キモいな!!と思った方、押したら治ります。
 

性人 2

2007年11月30日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

私より10歳も年下のグロはファザコンのようだ。ある日、彼氏が出来たと
言って連れて来た。しかし、そこには私よりもはるかに年上の男がいた。
背が低く禿げ上がった頭に冴えない作業着。商店街の洗濯屋に見えたが、
その通りの洗濯屋だった。グロがその店に行き来しだしてからつきあい
出したらしい。それにしても彼はおせじにもカッコ良いとはいえなかった。
人の趣味に文句も言う気も無いし、ファザコンでも全然構わないが、その
男に老眼の眼を細くさせて詮索されると気持ち良いものではない。洗濯屋は
私の事をどうやらライバルと思っている様子。どうせ、グロが私の事を過大
評価して話したのだろう。グロが席を外した時に洗濯屋が私に近づいて来た。


「ワシはグロちゃんって言うとるけど、アンタはそのままグロちゃんの事を
 呼び捨てにしててもええからな。でもワシのオンナやから、解っとるな。」


彼氏からの意味不明な承諾が下りた私は、すぐにグロを呼び戻して言った。


「こんな奴と会う為に私は貴重な時間を裂いてしまった。今度はお前の番だ。」


そう言って、洗濯屋の眼を射抜いて無言で席を立った。次の日、グロから
洗濯屋と別れたと言うメールが入っていた。報告しなくても良い全く興味が
無い内容を見た私はグロの過去が見えて来た。今までグロ自体に興味が
無かったので何もスキャンする事が無かったのだが、おぼろげに視得て
くると少しだが興味が湧いてくるのだが、同時に生理的に気持ち悪くなった。



グロは幼い頃に両親が離婚した。母親に育てられ、父親はどこにいるかも
解らない。それがファザコンの理由になるのかしれない。あの洗濯屋と
別れた後、またその辺の親父とつきあいだした。さすがに今回は紹介を
されなかった。だが、未だに私へ父親像を求めている。その父親像を
被せている私に向かって、なぜセックスを求める発言をするのだろうか。


ある宴会の帰り道、帰る方向が同じだったグロが私に向かってまたあの
言葉を言った。「いつかセックスしましょね。」この言葉を流せない
ようになった私は、突然にグロの鮮明な過去が頭に入って来た。それを
彼女に訊いてみる事にした。この言葉でこの女と会う事も無くなるだろう。


「お前は本当に私としたいのか? もし、私が「じゃあ、するか」って
 今、行動を起こしたら躊躇するだろ? 何回も言うと冗談じゃなくなる
 ので、もう言わない方が良い。かと言って習慣で言っているのでは無い。
 言いたく無いのに言ってしまうのだ。お前の歴代のおっさんの彼氏にも
 言って来たはずだ。お前は過去に起こった刺激を求めているにすぎない。」











明日で終わります。
 押してくれや!!!
 


性人 1

2007年11月29日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

数年前に出会った女性の話です。派手ではない容姿、何も趣味も持たず
「趣味を作らないと」が口癖の彼女の性格は個性的とは正反対の人間。
暗い過去があるわけでも無いのだが、彼女はどうしても暗く見えてしまう。

その彼女の名前は「グロ(仮名)」友達が少ない(というか仕事仲間しか
いない)グロは何かと私の宴会の参加率が高かった。私にしてみれば、
別に誰が来ても良いので何も思わなかったが、彼女にとっては嬉しいの
だろう。いつ見てもニコニコしていた。だが、その笑顔はなぜか暗い。


しばらくするとグロは私にも皆にも宴会にも慣れ出したのか、私のそばに
自然にいるようになった。そして冗談でこういう事を言うようになった。



「ボス~~、いつかセックスしましょね~」



最初のうちは冗談(にしても面白く無いが)に聞こうとしたが、どうも
冗談と本気を入り交っている。私にも選ぶ権利があるってのが解って
ないようだ。私のそばにいさせているのではなく、勝手にお前が近づいて
いるだけだ。歳も離れているガキなので軽く流していた。決して可愛いと
言えない顔に精一杯の魅力を出しているつもりだが、その自信はどこから
湧いてくるのだろうか。私からしてみればただ不気味な暗い笑顔だった。




ある冬、私が主催の40人ぐらいでバスを貸し切ったスキーツアーがあった。
知らない者同士が集まったので、道中に自己紹介をしようと言う事になる。
ほとんどの参加者が幹事である私とはなんらかの関係。自己紹介時には
「ボスヒコさんの○○」と言うのが定番となる。ボスの仕事仲間、ボスの
大学の友達、ボスの友人の彼女、ボスの取引先の営業マンなど。呼ぶ友達も
いないグロは独りで参加していた。彼女の自己紹介の番が回って来た。



「アタシはボスのセフレで~す!」



と言うグロ。そこにいた39人ほどの人達はコレを軽く流す。「ボスも人を
選ぶぜ!」「目立ちたいんだね」などの思考が飛び交っていた。その辺りに
私は丁度モテ期に入っていたので、何人か私の事をよく思ってくれている
有り難い人達がいた。グロがそういう事を知ってわざと言っているのが解る。
しかし、そういう子達含めた優しい皆は笑って済ます。酒が入っている
男性達はわーわー騒いだり、口笛を吹いたりしてそれなりに表現していた。

私は司会進行のクセに1人窓の外の雪景色を見ている。もちろんグロとそんな
事はしない。しかも定期的になんてありえない。一生しない。来世もしない。











意外な展開が!!
 押して
 

箱 15

2007年08月06日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

明け方だが、まだ外は漆黒の闇が支配している。今宵の満月も黒々しい雲に
覆われ、道に陰影すらつける事ない濃淡。耳鳴りがしている。その要因が
ガルの狂ったような喋り方だと気づくのに時間はかからなかった。(ちっ)
カノリンヌは悪態をつき、大きなため息を吐いた。今、彼女に出来る事は、
執拗に聞かされた人形の話を頭から追い出す為に布団をかぶる事だけだった。


(ボスは3日間泊まっても良いとかなんとか言いやがったが、ワタシはもう
 無理。あの子おかしいもん。それにあのヌイグルミ。ガルは生きているとか
 言ってたっけ。ふん!バカバカしい!!明日にでも出て行ってもらおう。)


カノリンヌは気苦労で疲れていたのか、すぐにウトウトと眠りに入りだした。


……………………


………スッ
………………スッスッスッ……(…ん?)


……………ススッ


……………………

 
……………………ススッ…………(……何の音?…) ……スススッ
……ススッススッススッススッ


………………ススッ……



(……ガルが寝ているリビングから聞こえるようだ……)

(…………ガルが起きたのか?………いや、…………何かが……)

(……………………………………何かが床を這っている……)



ズズッ!!!!!!!(まさか!?!?)


(しまった!!!!!寝室のドアを閉めてないっ!!!!!)


ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ!!!!!!!!! 


その音は一気にベッドの方へ近づいて来た。








ああ、もうダメぽ。                     ボスヒコ

 お~し~め~し~や~。