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kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

映画批評、恐怖夜話、あらゆる

告知をユルく描いて書いてます。

山が蠢き、血が流れる 9

2008年11月15日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

古の土地の為、やはり落ち武者や侍の怖い話が非常に多い。芸大バスの
ロータリーには落ち武者の切られた首だけが飛びながら追いかけてくる。
美術学科の裏の池の水面に立つ侍はこちらを怨めしそうに睨んでいる。
ある号館のトイレの鏡は、映った自分の後ろから落ち武者が近づいて来る。


大学周辺の恐怖体験を入れると一夜で話せないほどの数。手をふる地蔵、
生首の飛ぶ竹薮、おばけ灯籠、平家三代の墓、皆殺しの家、どんづる…。


学生に一番身近な下宿やマンションが一番最悪。そこに住むと病死して
しまう部屋。連なった部屋を鎧武者が通り過ぎる下宿。かならず毎年に
1人焼身自殺する音楽学科の女性。ボーガンで撃ち殺された学生が出る駅。
夜中に166号線を白い車で通ると、車の屋根に白い着物の女性が乗る。
窓に手首だけが這うある下宿のトイレ。こんな感じがひんぱんに起こる
この地の学生達は引っ越しを余儀なくされたり、頭がおかしくなって大学を
辞めたり、行方不明になったり、自殺したりする。この辺の地名の由来は、
都市伝説に近いものから正式なものがある。芸大バスが芸大と繋ぐ駅の
「喜志」は「鬼死」。「台ヶ塚」は「首切り台ヶ塚」、「富田林」は
「首が飛んだ林」から訛ったもの。「河南町」は大阪弁で「かなんな~」
と言う、怖くてたまらない町と言う意味の「かなん町」など。。。





日本各地、否、世界中には死体が埋まっている。当然その上で誰もが
生活をしている。そして、古墳や古戦場跡という後世に伝える目的の場所
での芸に関係することをするのなら、覚悟や供養がいる。天岩戸で踊り、
歌い、演奏する意味は隠れた者を出すこと。それと同じで、何かが潜んで
いる場所で芸事をすれば、古の眠りを呼び覚まし、肉体を探しだす物の怪
共が這い出てくる。そこできゃつらの依代(よりしろ)となるものは、
自称シャーマンだったり、心に隙間がある者だったり、霊的なものに
ふざけた対応をする者。物の怪達に許可無く、もしくは一方的に強引に
許可を得て立てた古墳の上の巨大なコンクリートの墓石。大阪○大内の
芸大生は正にきゃつらの生け贄なのだ。古墳の周辺や古戦場跡での芸事や
祭りを何も解っていない素人がすると当然危険。自ら生け贄を志願する
ようなもの。古の地では自分自身を守るのは自分だけ。残るひとつの
選択は、戦いを放棄して、ひたすら逃げまくるしか無いのである。





宴会の最中、幾度もラップ音やポルターガイスト現象が起こり、私達は
恐怖夜話を辞めざるをえなかった。朝8時頃に解散して、各自大学に
行ったり、バイトに行ったりした。私は恐怖夜話の中のある話のことが
気になりつつ、授業に出た。その話を後々、ダースから聞くはめになる。












聞きました。                       ボスヒコ


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山が蠢き、血が流れる 8

2008年11月14日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

1週間後、あの後輩の部屋で鍋をつつきながらゲームでもしようと言う
ウソの宴会に13名が集まった。本当は、自分達が通う大学で起こる怪奇
現象を知っている限り話しつくす恐怖夜話宴会である。素直な後輩は何も
気づかずに皆を招き入れた。女性の友人達が鍋の用意をしている時から、
怖い話をしだす参加者達。家主の後輩は既に諦め、抱き枕を正に抱いて
恐怖に防御をしている。土鍋が3つ並んだ時には、流石に誰も怖い話を
せずにバカ話をネタに鍋をつつき、単位や授業や教授のことをアテに
呑んだ。全ての食材を胃の中に入れた皆は、ごろごろと寝たり、本当に
眠ったりしてダラダラとしばらく過ごす。夜中0時を過ぎた頃、起きて
いる8名を中心に怖い話をしだした。大阪○術大学で起こる怖い話を。




本学の所在する河内平野は、日本の黎明期にはその名をとどめる、いにしえ
の地である。近辺には、数多くの王族・豪族の古墳が散在している。隣接
する竹内街道は、日本最古の街道であり、海外(中国、朝鮮)からの文物が
この道を往来した。本学のすぐ北側、太子町春日(聖徳太子に由来)の家
並みから奈良県当麻の里に通じる、日本のシルクロードは現在も古代人の
息吹が感じられる。この河内平野は楠木正成の本拠地としても有名である。




いにしえの地。その為なのか、大学内の各号館にミステリースポットが
存在する。今は使われていない1号館ボイラー室、体育館近くのトンネル、
芸大バスのロータリーなど数えればキリが無い。大阪○大の体育館建設時の
トラブルは有名で、酷いものだった。工事着工が遅れた理由は人間の骨が
大量に出て来たからである。体育館建設予定の場所は小高い丘だった。
調査するとそこは歴史価値のある古墳だったそうだが、大学側は色々と
調べて勝手に納得し、そこを切り崩した後、体育館を建てたのである。
これで何も起こらないわけがない。大学の周囲にも聖徳太子の墓、史跡
金山古墳公園、寛弘寺古墳公園、一須賀古墳群など古墳に埋もれている。
実は、大阪○術大学自体が古墳の上に建っていたのである。しかもそこは
大塩平八郎の乱の古戦場跡だった。首塚も大学周辺に散らばっている。











出ちゃいました。                        ボスヒコ
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山が蠢き、血が流れる 7

2008年11月13日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

その日の夕方、悪評高いソノダとユッコが一緒に帰って行くのを数人が目撃
して、とうとうソノダのしつこい口説きにユッコが折れて付き合い出したか、
と言う軽い噂話が次の日には聞けた。それくらい、ソノダは皆に嫌われて
(彼がエラそうでウザいんで表面上出ない)いたのだ。ユッコ自体の情報は
あまり無い。実際、私と違う学科だし、あまり憶えていないのは元々存在が
薄いのかもしれない。ユッコの容姿は普通の感じの女性なんだが、暗い
雰囲気が漂っている。彼女を少し知っている者が言うには「シャーマンぶって
不気味」らしい。シャーマンとは呪術者・巫女などを言う。ユッコは音楽
学科でピアノと声楽を勉強しながら、現代舞踊(コンテンポラリーダンス)
を趣味でしているらしい。音楽や舞踊の中のスピリチュアルな部分を自分の
中から導き出そうとして、本人の考え方や気質や体質を変えてしまう事は
あるが、その力で他人を変える事は難しい。しかし、それが出来ると信じて
いる自称シャーマンは世間に多い。その人達は、自然や宇宙と融合しようと
するがあまり、逆に精神世界の内宇宙にはまり込む人がたまにいる。それは
美術界でも同じ。抜け出せない人の中には心底ホンモノの人もいるが、
大半は自分に浸り、神秘を思い込んでいる人の方が多い。ユッコが本物か
偽物かは知らないが、ソノダとつきあう事によって、時間を無駄にするの
だけは皆知っている。「あ~あ」と思うくらいしか、彼らに興味は無かった。


3日後、ソノダが自分主催のパーティのあと、参加していたある酔っぱらい
がパーティのショボさとソノダの態度に腹が立ち、殴り合いの喧嘩をする。
殴り合いの喧嘩と言っても一方的に殴られただけらしい。誰もが予測出来
うる結果に皆は鼻で笑う程度で返した。ソノダはその日を境にして、授業に
出席しない日が多くなった。今までは自信過剰のナルシストだったので、
イキがって皆の目が冷たい現状を軽く流せたのだろう。こういう奴は挫折に
弱い。もちろん、パーティなど出来るはずもない。数ヶ月後には大学内で
彼の姿を見ることは無くなった。カレシ(?)のソノダの大学での結末で
ユッコにはどう影響が出るのかなんて誰も興味が無い。彼女もしだいに、
大学内で半年に1回見るか見ないかの確率の人物になった。









ダ「で、そのユッコってコの話を久々に聞いたんだけどさ~。びっくり
  してさ~。ああ、この間、ナッカンに聞いたんだよ。もうね~」

ボ「ぜんっぜん、興味無し」

ダ「いや、凄いって。怖いって。あ!その前に、そのソノダってあん時、
  ほら、だんだん来なくなっただろう。大学ヤメてたんだってさ~」

ボ「それもぜんっぜん、興味無し」

ダ「いや、凄いって!アタマ、狂ったからヤメたらしいぞ」












やりやがりました。                      ボスヒコ
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山が蠢き、血が流れる 6

2008年11月12日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

首塚とは、合戦などにおいて討ち取られた者の首、捕虜に取られた者の首、
あるいは斬首刑にされた罪人の首を供養するための塚の事である。日本では
戦功を首実検で確認していたため、その首を弔うものとして多数の首塚が
作られた。首塚には、後に怨霊となる恐れがある単独の者(敵武将など)の
ものや、雑兵であっても多数の戦死者が出た場合のものなどがあり、今なお、
全国各地に多数存在する。私が発見したのは忘れ去られた首塚なのだろうか。


傘の持ち手を頭とすれば切れた部分は首。状況に耐えられない後輩が叫んだ。
「わぁ!!ああ、あの黒いモヤって!!やっぱり悪霊とか!?!?」あまりの
恐怖で彼は大学にも行かずに自分の部屋に帰ってしまった。私は、自分の首
では無くて良かったと思っただけで、そのまま大学に行って友人達に昨夜の
宴会での黒いモヤの話、首塚の話をした。皆、恐がりながらも異常に盛り
上がり、この大学で起こる怖い話を各自しだそうとした時、授業が始まった。
せっかくの盛り上がり、これを宴会のネタにしないわけがない。一週間後に
怖がって帰った後輩の部屋で恐怖夜話主体の宴会の企画をした。おふざけ
大好きな皆は大賛成で即決定。しかし、そんな宴会を絶対に許してくれない
だろうと思う後輩には、もちろん無断で実行するので「なんとなく部屋に
集まって宴会が始まった」を装うことになった。こんな事でも盛り上がれる
学生の能天気さは素晴しいが、大学生活の乏しさも浮き彫りにしている。















やりやがりました。                      ボスヒコ
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山が蠢き、血が流れる 5

2008年11月11日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

翌朝、後輩の部屋から大学に登校する。この大学には正門とは真逆の方向に
裏門がある。裏門と言っても小さな入り口で、曲がりくねった竹林の中の
坂道を上った所にぽつんと存在している。おそらく、この大学での鬼門
なのかもしれないが、この辺の下宿生にとって、この裏門は登校に便利
なので寂れている割には人を見かける。私と後輩は缶コーヒーを飲みながら、
そこに辿り着く道を二日酔いの後輩のに合わしてだらだらと歩いていた。

昨日、夕方まで降っていた雨が道をブチのように水たまりにしたり、泥に
している。出来るだけそれを避けて歩いていた時、私が持っている傘の
重量が変わった。凄い違和感を感じて傘を見た。手には黒い傘の持ち手
(持つ所、ハンドル)のみ。本体は数歩下がった後ろの地面に落ちていた。
持ち手から柄から抜けたにしても無音すぎる。それに買って間もない新品の
傘。不思議に思い、手に持った黒いプラスティック製の持ち手をよく見て
みた。持ち手から、少しだけ銀色のスチールが光っている。本体が持ち手
から抜けたのでも、外れたのでも無い。傘の骨の部分が何か鋭利な刃物に
よって切られたようにスパッと斜めにカットされていた。

呆然と持ち手を見てたたずむ私を不審に思った後輩が数メートル先で鬱陶
しそうに立ち止まってこちらを見ている。私は何かに呼ばれたように自分の
左横のフェンスに目をやった。フェンスの奥には竹やぶと雑草で覆われて
いて暗い。今の位置では目を凝らしても何も見えないが、そこには何かが
あるのが解った。後輩が呼んでいるのにも関わらず、私はフェンスに近寄り、
竹やぶの奥を見た。奥の湿気た暗い場所には古びた大きな立て札があった。
よく時代劇で見る御触書(おふれがき)の立て札。書かれている文字に
全身に寒気が走る。それには消えかけた文字で「首塚」と書かれていた。











くらくらしてきます。                      ボスヒコ
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山が蠢き、血が流れる 4

2008年11月10日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

黒いモヤは霧のように拡散しながら空気に溶け込んで消えていった。

突然の現象に心臓は高鳴っているが、酔っている為の目の錯覚だと思え、
と私自身が忠告をしている。こちらを追いかけてくるようなあの足音も
聞こえない。嫌な予感など解らないが、さっきの黒いモヤの足音に気づか
なければ、自分は後ろから襲われていたのだろうか。((モヤが足音を?
…何か反響したのかもな……相当、酔っているな…))私は深呼吸を
して、さっさとゴミ捨て場にゴミを捨てて、急いで教室に帰った。


教室はほぼ片付けてられて、何人かは帰る準備をしていた。帰ると
言っても終電はとっくに過ぎているので、下宿やマンションに住んでいる
人のおせわになる。私は宴会にも参加した同じゼミの後輩のマンション宅で
一泊する。皆が口々に「どう?何か出た?」と訊いて来たが、私は「全裸の
教授が“勝訴”という紙を持ってあてもなく走っていた」と笑いを取る。
勇敢にも私と入れ違いでゴミを捨てに行った人を待つ為、私はトイレに
行った。トイレから帰ると既に教室の電気を消灯しかけだったので急いで
自分の荷物を持って外に出た。一応、夜中の学園内なので声を殺して
校門まで辿り着く。校門から大学のバス停まで長い坂がある。この大学は
小山の上に作られている為に登校は登りがツライが下校は楽。酔っている
せいで、この下りる行為がなぜか楽しい。私は後片付けの参加者の顔も
憶えれないくらい(憶える気が無い)適当な別れの挨拶を済まし、後輩と
酒の買い出しをして彼の部屋に向かった。その夜、黒いモヤの話で後輩を
散々怖がらせて満足した私は宴会の疲れもあって知らぬ間に眠っていた。













くらくらします。                      ボスヒコ
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山が蠢き、血が流れる 3

2008年11月09日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

数日後、私は教授の許可を得て、ある広い教室で懇親会と称した宴会をした。

幹事の為、動き回っていた上に、人の出入りが多い宴会だったので、私は
ユッコと言う女性の存在に気づかなかった。ソノダが入学当時から彼女を
ずっと口説いている女性である事も知らなかった。教授や副手も参加して
頂き、懇親会は大成功だった。その頃の大学は管理体制がユルかったので、
夜中の0時以降に宴会の後片付けをしていた。副手も手伝ってくれていた
ので私としても安心してゆっくり片付けが出来た。もちろん、呑みながらの
片付けなので、宴会スタッフの打ち上げみたいなものだが。その中には
挨拶程度しか話した事がない人や見知らぬ人もいたが、大盛況の宴会の
余韻と、後片付けというボランティア精神の共通意識が皆の距離感を縮めて
いた。しかし、誰も率先してゴミを捨てに行こうとはしなかった。副手
などは最初から「俺はゴミだけは捨てに行かないからな」と言うくらいだ。


私は大量のゴミを捨てに行くためにゴミ捨て場に向かった。そこは大学の
裏にあり、かなり校舎から離れていた。灯りもほとんど無い所で大学内では
「出る」と噂の場所だった。私はそんな事は気にしていないと言えども、
突然くる肌寒さにスリルを感じながら歩いていた。田舎の大学なので周囲は
竹林に囲まれている。風が吹くたびに擦れる音がし、長い黒い影が交差する。
静まり返った道を歩いていると、後ろから何かが走ってくる音が聞こえた。
ザッザッザッと土の道を走る力の弱い足音が私の歩く足音と重なる。あれ
だけ嫌がっていたのに……ゴミはもうこれだけのはず……誰かが運ぶのを
手伝いに来たのか……私達の他に誰かがいたのか……徹夜で作品制作中の
学生かも……。私は重いゴミを置いて振り返った。小さくなった教室の
灯りだけの逆光で視得たモノ。それは蜃気楼のように揺れる黒いモヤだった。













やりました。                         ボスヒコ
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山が蠢き、血が流れる 2

2008年11月08日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

食券を買おうと、財布から小銭を取り出している所にソノダはスッと横に
ついた。私は「よぉ」と社交辞令をしたが、彼は私と目を合わさないでいる。


ソ「オマエ、………調子乗ってるだろう? え? 邪魔すんな…よな……」

ボ「………は?」

ソ「俺の陰口叩いて………邪魔すんなって……」

ボ「………は?」


彼は私の気迫だけで戦意喪失して舌打ちをして帰って行った。私にとって
彼など駅前の看板と同じ。何にも気にしないモノだった。駅前の看板が
近寄って来て「調子乗りやがって。邪魔すんな」と言われても非常に困る。

彼がまた、言われる筋合いが無い文句をふっかけて来る時を楽しみに待つ
事にした。その頃の私は今よりも冷酷だったので、根こそぎブッ潰す気で
いた。それと同時に彼のコンプレックスの醜さや被害妄想の深さに少し
だけ用心することにした。モルモットとして興味はあるのだが、あまり
関わらない方が無難だろう。しかし、私が幹事をする宴会は当然これからも
やっていく。ソノダ如きの存在でヤメる事など無い。そして、トラブル
防止の為に宴会参加者に「彼のイベントに行っても、こちらの宴会と比較
したり、彼の悪口を言ったり、私の事を言わない方が良い」と言う忠告
などする気も無い。「まあ、なるようになる」と言う言葉が脳裏に浮かぶ
だけでも「なぜ、あんなバカの事を考えなければならないんだ」と思い、
面倒臭さが倍増する。とにかく、私は他人に何も危害も加えていないし、
非難もしていないのに、いつものように意味不明でくだらない嫉妬に巻き
込まれただけである。どうせ、そんなイベントは潰れて行くから、放って
おくのが一番良いのだが、こういうバカは時間をかけて潰れていくので、
それに合わせて待つ(ここで言うと我慢)事が最高に難儀な事である。












きました。                         ボスヒコ
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山が蠢き、血が流れる 1

2008年11月07日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

先日、久しぶりに大学の友人に会いました。彼のニックネームは「ダース」
呑気な犬顔から「フランダースの犬」と言われて、そのまま「フランダース」
と言われ続けたが1ヶ月しか保たず、「ダース」に定着したのです。ってか、
「パトラッシュ」だろうが!とツッコミを入れたくなるニックネームの
由来です。北海道で仕事をしていたダース(鹿児島出身)が卒業以来初めて
大阪にやって来るので、久しぶりに呑む事になったのです。ボスヒコ推薦の
店のお好み焼きをたらふく食わし、良く行くバーを3件ハシゴして、想い出話
で笑い疲れた頃、ダースは酒焼けの赤くデカい顔を歪ませながら、声を潜めて
話し出した内容は、学生時代の悪夢を甦らせるのに充分な序章だったのです。


ダ「キミョリよぉ、俺らのいっこ下のユッコちゃん憶えてる?」

ボ「ん?……ん~~~~~~~~~~~~~~~~~、知らん」

ダ「知ってるって!ほら、音楽学科の、ほら、ソノダと付き合っていたコ」

ボ「そのだ? あ~、コンプレックスの塊のソノダね、ソノダ、ソノダ
  ………あ、思い出した。あのストレートの黒髪の……」

ダ「そう、ソノダの当時の彼女、ユッコちゃんだよ」


ソノダは私達と同じ美術学科だったが、ゼミが違うのであまり話したことが
無かった。アクティブな彼は良い意味でも悪い意味でも目立った。良い意味
は、よく大学の近くのバーやクラブでイベントをしていた。芸術の大学
なので、表向きはアート的なイベントだったのだが、フタを開ければコンパ
という感じの品が悪いイベントだった。悪い意味は、そのイベント内での
態度だった。たかだか学生のイベントの主催者なのに、権力を自分の都合の
良い様に使う彼にブーイングの声が多かった。イベント内で起こったブー
イングはすぐに悪口となり、学科全体に広まった。しかし、ソノダは気に
せずに自分のイベントをダシにして、どんどん新しい人を入れてバランスを
取っていた。アートイベントだと思って参加したが、レベルの低さの為に
二度と参加しない人も多かったらしい。そんな幼稚な内容なのになぜ、
ソノダのイベントが消えなかったのは、彼の宣伝能力の高さの御陰である。
学生イベントで学生しか呼ばないから、皆、詐欺まがい宣伝に気づかない。
ただ絵の具付けて暴れているだけのパフォーマー、お互いが探り合いながら、
リズムを刻んだり、メロディをはもるヘタクソなバンド、大量の絵の具が
キャンバスに塗られてあるだけのゴミ。しかし、確実なのは、恋に、性に
飢えた男女がひしめく空間が用意されていると言う事だった。当時、私は
ソノダに一時、嫉妬された時があった。私もイベントをやっていたからで
ある。私の場合はイベントと言うよりか大宴会で、今とあまり変わらず、
下らない事をネタにして酒を呑んでいた。秘宝館ツアーしてからバーベ
キューとか、屋上で七夕仮装大会とか。大学内にバカをしてくれる人が
いるとすぐに広まり、全然知らない学科の人や誰の先輩、後輩か解らない
人まで参加するようになった。ソノダのイベントと全然主旨が違うし、
種類が違うと私は思っていたのだが、彼はその盛り上がりぶりを良く思って
いなかった。後で聞いた話だが、私の宴会に来ていたコ達が彼のイベント
に行った時、あまりのつまらなさとまとわりつくウザい男性達にキレて、
「キミョリの宴会は、めっちゃ楽しかった」と言って帰ったらしい。そう
いう事はそのコ達だけでは無かった。私は誰も気にせずに好きにしていた
宴会なのに、勝手に比較されて、ソノダの怨みを買っていたのだ。そんな
事すらも気にしない私に余計に腹が立っていたのだろう。ある日の食堂で、
憎悪がたまりすぎたソノダは私を見付けるなり、嫉妬を吐き出して来た。













はじまりました。                      ボスヒコ
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ミステリーナイト 最終回

2008年09月07日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

「…死んでたらしい。で、その女性のほとんどの爪が指から剥がれて…」
「…死んで………………………………ほとんどの爪が指から剥がれて…」



私とコー2は目を見開いて動きを止めてしまった。これはありえない。
あるスキー場で実際に起こった恐ろしい話「戦慄」の重要な下りの部分
「ほとんどの爪が指から剥がれて」という日常なら絶対に口に出さない
内容の言葉が、後ろの席の女性とシンクロした。雪山、心臓麻痺、スキー
ウェア、ロッジ、トイレ、現場検証、爪が剥がれる…など、居酒屋では
あまり出る事がない言葉が連続する話をしたのは、シンクロ率が低いから
であって、まさか一番出る事はない「ほとんどの爪が指から剥がれて」と
いう言葉がシンクロするとは思ってはいなかった。後ろのテーブルの
カップルは何の話をしていたのだろうか。内容が内容なのと、この空間
で行なわれているゲームを阻止する為に周囲には聞こえない声で話して
いたのだが。なぜか、そのカップル達には私達の話が聞こえてしまい、
偶然にもその話を知っていて、もしくはよく似た話を思い出してして
話だしたかもしれないが、あの部分だけが重なる事は早々ないはずだ。



「ボス、ここ、いや、この空間、ちょっとヤバいんじゃないですかね?」



私はむしろこの状態の不思議さに慣れて、楽しくなってきた。この状況に
意味はあるのか?あるのなら何の意味があるのだろうか? 無いのなら
なぜこんなにも意味不明な偶然が連続するのだろうか? 何も解ってない
人が解ったようによく言う「偶然なんか無い。全ては必然だ」と言う
言葉を思い出して、独り笑った。必然なら何か証明しろ。ただのパズルを
必然などとは言わせない。女性客2人の消失。居るはずのない店員の声、
見えない指で押す呼び出しブザー、ランダムに配列された言葉の合致……。
不思議な事がふたつ、みっつ重なっているだけだろうが。この居酒屋を
出れば、事が済む。答えがあるなら知りたいと思うのは人間の心理と欲求
だが、答えが無いのに「ある」と決めつけて、のめり込み過ぎるのは危険。
この居酒屋で完成しないパズルを永遠にしていく気はない。私とコー2は
泡が完全に無くなったビールを呑み干して、この空間から出る事に決めた。








店員がこちらに向かって来ている。







確実に私の方を見ながら歩いている。







この居酒屋の勘定はテーブルで済ますシステムなのか? そうだとしても
なぜ、私達が帰る事が解ったのか? 「そろそろ、帰ろうか」と言う
小さな言葉を発しただけで、上着を来たり、せわしく席を立ってはいない。
ブザーのトラブル?また、あの消えた女性客がイタズラをしたのだろうか?






店員が私達のテーブルのすぐ近くまで来た。「仕事中」という顔をして
いる店員は、何のためらいも無く、頼んでもいないある物を持ってきた。













「オマタセイタシマシタ ナスビノツケモノデス」










ナスビノツケモノ










なすびの漬け物









………………かもしれんな。もし、そうなら、ババアの目的は何だろう。
まあ、ババアの好きなもん、なすびの漬け物とか注文してやって、あの世
とか異次元とか好きな所に帰ってもらうか………………………


















…………                            ボスヒコ
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