11月に見つけた野草の花
ブゼンノギク(豊前野菊)
Aster hispidus Thunb. var. koidzumianus (Kitam.) Okuyama
キク科 シオン属
花 期 : 9~12月
生育地 : 山地の岩場、崖
分 布 : 九州北部
RL指定 : 環境省準絶滅危惧種
撮影 10月~11月 佐賀県 大分県
過去の記事で、黒髪山系の岩場に自生するブゼンノギクと言われている野菊は、葉や茎に毛があり疑義があると記載した
この件に関して、広義のヤマジノギクに関する論文を参考にしながら、考察してみたい
まず、ヤマジノギクの近縁種の分類に関して、一時混乱が生じたようだが、現在は下記の学名が示す通りである
①Aster hispidus var. hispidus ヤマジノギク
②Aster hispidus var. koidzumianus ブゼンノギク
③Aster hispidus var. leptocladus ヤナギノギク
④Aster hispidus var. insularis ソナレノギク
⑤Aster arenarius ハマベノギク
ハマベノギク属に分類されていたものはシオン属に編成され、①~④に関しては、広義のヤマジノギクの変種関係で、ハマベノギクだけは独立種ということになる
それを踏まえて、以下をご覧ください
広義のヤマジノギクであるヤマジノギク(基準変種)、ヤナギノギク、ソナレノギク、ブゼンノギクは変種関係で、ヤナギノギクとブゼンノギクは岩稜帯、ソナレノギクは海岸の環境に適応して形態が変化したものと思われる
ヤマジノギクとソナレノギク、ヤナギノギクを解剖学的に比較すると、ソナレノギクは細胞数の減少および細胞の肥大により葉が多肉化し、ヤナギノギクは細胞数の減少および細胞の縮小により狭葉化している
ブゼンノギクもヤナギノギクと同様のメカニズムで狭葉化したと考えてもよさそうだ
ただ、これらの種間に遺伝的変異はほとんど認められず、これらの分化は近年起こったと推測されている
基準変種が有毛なのに対して、ブゼンノギクは無毛といわれていたが、私が観察した範囲では、黒髪山系や国東半島のブゼンノギク(と思われるもの)において、わずかに毛がみられる個体が認められた
しかし、ブゼンノギクが分化の過程で、徐々に毛を減らしたのは間違いないだろう
黒髪山系のものは、狭葉化しているが有毛なので、ブゼンノギクではないとの意見があったが、現在ではブゼンノギクに含めているようだ
大分県鋸山(国東半島)において観察した、葉に毛のある個体
佐賀県黒髪山系で観察した、葉に毛のある個体
初版 2012年10月27日
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