kimekime25

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資料 2014/02/13 都知事選総括

2014-02-13 16:04:15 | 都民は選挙に行こう!

(耕論)首都劇場、ならず 阿部真大さん、鈴木直道さん、松下アキラさん

2014年2月13日05時00分

写真・図版 
 「脱原発」を問う国民投票。元首相2人による「劇場型政治」の再演――。そんな事前の予想はことごとく覆った。低い投票率で終わった東京都知事選から見えてきたものとは。


 ■変化より「強い国」を渇望 甲南大学准教授・阿部真大さん

 都知事選で、若い世代も含めた有権者の多くが舛添要一さんを支持したのは、「オールジャパン感」を求めるメンタリティーの表れと思います。

 「失われた20年」のあいだ、ずっと言われつづけたのは政治主導であり、既得権益の打破でした。でも、いまは既得権が見えにくくなっている。特に地方では「みんなが負け」という感覚が強い。東京でも明確な「勝ち組」はごく一部だけ。ブラック企業にしても、価格やサービス競争で会社全体が疲弊していて、どこにもうまい汁を吸っている人がいないように見える。

 ここまでみんなが負けてしまうと、「既得権の打破」にリアリティーがなくなってくる。むしろ政治家や官僚が一枚岩になって、オールジャパンで経済成長に邁進(まいしん)してほしいという思いや、中国や韓国に対抗できる「強い国家」への渇望が醸成されてきていると思います。

 田母神俊雄さんも「強い国家」で若い世代から一定の支持は得ましたが、原発維持など懐古主義的すぎた。舛添さんは「東京を世界一に」「2020年五輪に向け自然エネルギーを活用」という言い方で、かつての日本とは違う、しかし成長はするというイメージにうまく合ったんじゃないでしょうか。

 「若い人は強いリーダーを求めている」とよく言われるんですが、実際に話を聞くと、求められているのは、官僚をうまくまとめて、政治を動かせるような人です。そういうテクノクラート政治の復活みたいなものを求める民意が、舛添さん支持にも表れていると思います。

 いまの若い人には、官僚主導への忌避感がない。物心がついたときから官僚たたきが始まっていて、逆に癒着とか汚職とかが実感できない。役所へ行っても対応はいいし、本当は問題が山積していても見えにくい。官僚主導でいいじゃないかという空気がある。それって危ないこともあるよと言っても、「でも、国は強くなきゃいけないですよね」と言われてしまう。

 若い世代がブラック企業や非正規雇用、格差に関心がないわけではなくて、新自由主義的な切り捨てへの違和感はある。ただ、宇都宮健児さんのような社会民主主義的なやり方よりも、経済成長で解決しようという志向が強い。「みんなが負け」だと、再分配よりパイ全体を大きくするしかないと思わされている。成長という言葉の前に、他は無力になってしまいます。

 「失われた20年」の間、「新しい社会」の具体的な姿を誰も示せなかった。だから家入一真さんのような「社会を変えよう」という訴えが届かない。いま求められているのは「新しい社会」じゃなく、オールジャパンの「強い国家」なのだと思います。それが、舛添さんの圧勝に表れているんじゃないでしょうか。(聞き手・尾沢智史)

    *

 あべまさひろ 76年生まれ。専門は労働社会学・家族社会学。主に若い世代の働き方や意識を調査・研究している。著書に「地方にこもる若者たち」「居場所の社会学」など。


 ■自分の生活、優先した都民 北海道夕張市長、元東京都職員・鈴木直道さん

 東京は日本の心臓であり、頭脳でもあります。人口も日本全体の10分の1を超えるわけですから、都知事選はある意味、国内最大の世論調査といえるのではないでしょうか。

 過去の選挙で石原慎太郎さん、猪瀬直樹さんら歴代知事は、国に対してもの申す姿勢が支持を得てきました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備やその他の施策は、16万人以上の職員を抱える都庁で組織的に進められている。だとすれば、今回国にもの申す大きなテーマをぶち上げるとしたら、「脱原発」しかなかったと思います。

 ところが細川護熙さんを支持した小泉純一郎さんは、郵政選挙のときのように首相という当事者ではなく、だれがどう脱原発の責任をとるかの所在が明確でなかった。そこが敗因ではないかと思います。

 一方で安倍政権の支持率は依然高い。都政も政府と足並みをそろえて安定感をもって運営してほしいという声なのだと思います。いま原発をどうするかという議論をするよりも、アベノミクスによって少し上向き始めた目の前の生活や、自分たちに身近な福祉政策のほうがより大事だったと判断した表れなのではないでしょうか。

 確かに東京などの大都市に明るい兆しが見えることは良いことです。でも、まだアベノミクスの効果を実感できない地域も全国にはたくさんある。そのことを忘れないでほしい。

 北海道は不景気になれば日本で一番最初に打撃を受け、反対に、景気が上向いたときには実感できるのが一番遅いところだといわれています。札幌市では税収が少し伸び、歓楽街も多少にぎわいを取り戻しているようですが、北海道でも日本唯一の財政再生団体である夕張市には、まだアベノミクスの効果はまったく及んでいません。

 よく「地方の再生なくして日本の再生なし」といわれます。私が夕張にいる理由もそこにある。炭鉱の町として栄えた夕張は、国のエネルギー政策に翻弄(ほんろう)され、主要エネルギーが石油に切り替わったことで人口は急減して衰退。353億円の赤字を抱えて破綻(はたん)しました。

 この夕張市を支援するため、東京都から第1号として出向した職員が私です。約2年間暮らしたあと市長選に出たのは、夕張が日本の抱える問題が先鋭化した地域だと思ったからです。ここで財政健全化と地域活性化の両方を実現できなければ、規模は違えど、多額の借金を抱える日本も本当の意味で再生はできないはずです。

 今も夕張市や被災地に職員を派遣している東京都とその職員は「首都公務員」としての存在感と使命感があります。国を動かす原動力として、これからの舛添都政には注目したいと思います。(聞き手・梶原みずほ)

    *

 すずきなおみち 81年生まれ。99年に東京都庁に入庁し、勤めながら4年で法政大法学部を卒業。2008年に北海道夕張市に出向。11年4月に全国最年少(当時)で市長に就任した。


 ■演出家・小泉は負けてない 俳優・松下アキラさん

 「支援してほしいという細川(護熙)さんの頼みは聞いたよ。都政についての政策はほとんどなくてね、脱原発だけというところに感動した!」

 「ま、見ているがいいよ。必ずや細川さん、落選するから。私は世の中に一石を投じることができる。落選するのは細川さんだから、何の問題もない!」

 小泉純一郎さんの支援を受け、細川さんが東京都知事選に立候補することが決まった後、こんなコントの台本を書きました。語るのはもちろん、ぼくが演じる「小泉ジュンイチロウ」です。

 細川さんはやっぱり落選しました。おそらく小泉さんはジュンイチロウのように、原発ゼロに向けて一石を投じたと満足しているのではないでしょうか。

 私は千葉県民ですが、都知事選は候補者の顔ぶれもいま一つで、はた目にも盛り上がりを欠いていました。それだけに細川さんが立つというニュースを聞いたときは一瞬、期待しましたが、小泉さんと2人でテレビに映っているのを見て、ダメだと思いました。76歳のくたびれ感ばかり目立ち、「脱原発」の主張からも熱意が伝わらない。

 それに対し、72歳の小泉さんはオーラがありましたね。どうして原発ゼロを言い出したのか、本当のところは分からないけど、「この人、本気だ」という感じがひしひしとしました。

 郵政選挙の時、有権者を動かしたのも小泉さんの「本気」でした。身内の自民党内に敵をつくってまで改革を進めようという気迫に、他の政治家と違う勇気を感じた。劇場型政治と言われれば、それまでですが……。

 今回、「小泉劇場」が不発だった理由ですか? 主役の細川さんの力不足もありますが、最大の理由はネットの進展だと私は思います。小泉さんが首相のころはまだ、ネットよりテレビが主流。テレビで熱く語る小泉さんに有権者は熱狂した。ネットが進化した今は、テレビで熱くなっても、それを否定する情報や意見がネットに大量に流れ、気持ちが冷めてしまう。

 今回、主演はしなかった小泉さんは、そもそも原発ゼロで世間が沸く状況ではないと分かっていたと思います。福島での原発事故の後、多くの人は原発はないほうがいいと感じているでしょうが、全廃でいいかどうか、判断がつかないのが実情だからです。それでも、いま発信しなければダメという直感で彼は動いた。まだまだ続くと思うんです。小泉さんの勝負は。

 むしろ、都知事選の成果は小泉さんの演出家デビュー。「勝ってよし、負けてよし」。ネット全盛の時代にかつての小泉劇場の再現はありえないが、演出家として新たな本気劇をつくってほしい。「やればできる!」とジュンイチロウは期待しています。(聞き手・吉田貴文)

    *

 まつしたアキラ 64年生まれ。看板職人から俳優を志し、97年に社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」に。持ちネタは小泉純一郎、舛添要一両氏らのものまね。


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