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資料　2014/01/29　原発裏金

2014-01-29 18:39:03 | Abeは利権と戦前を取り戻す

（原発利権を追う　東電総務部：下）立地自治体・裏社会にカネ

2014年1月29日05時00分

写真・図版
かつての東電総務部の「裏仕事」のイメージ

　東京電力総務部には政界対策のほかにも重要な裏仕事があった。原発立地自治体への寄付金の差配だ。

　総務部の元担当者によると、総務部が年平均２０億円の予算枠をとり、毎年ほぼ使い切った。原発関連施設がある青森、福島、新潟各県の自治体の意向を受けて配分し、大型寄付は数年分割で予算計上したという。

　「ハコモノ建設など目的を示して社内の承認を得るが、自治体には使用目的を特定せず、東電の名前が出ないようにカネを出す」

　原資は電気料金だ。発覚すれば世論の反発は免れず、政治家へのパーティー券と同じように表に出しにくい。元担当者は「重要な裏仕事の一つ」と明かす。

　体育館や公園など住民に喜ばれる施設ができ、「地域に貢献している」との自負もあった。だが、自治体財政は維持管理費がかさんで悪化し、さらに寄付を求められるという悪循環に陥った。元担当者は言う。

　「原発増設、原発でプルトニウムを燃やすプルサーマル発電……。寄付金で受け入れてもらえるならと出し続けたが、自治体財政をむしばむ結果になった」

　原発事故後の２０１２年、東電は立地自治体への寄付金廃止を表明した。ところがその後、青森県の六ケ所村や東通村に漁業振興費などの名目で資金を渡し、経済産業省に「寄付金に近い」と指摘されていたことが朝日新聞の報道で発覚した。

　東電広報部は「寄付とは違う」と弁明したが、東電幹部は取材に「寄付金漬けになった自治体から突然カネを取り上げるわけにいかない」と認めた。寄付金を決裁した元役員は言う。

　「一度甘い蜜を吸ってしまうときりがない」

　■清濁併せ呑む

　原発関連施設に絡む困難な問題は、決まって東電総務部に持ち込まれる。

　青森県むつ市に建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設をめぐり、東電が０７～０８年に西松建設の裏金２億円で用地買収工作を進めていたことを朝日新聞は昨年７月に報じた。西松側に資金支出を依頼したとされる東電役員のうちの１人が、総務担当副社長（当時）の皷（つづみ）紀男氏だ。皷氏は総務部で政治担当が長かった。

　皷氏の同僚だった東電総務部ＯＢは、総務部に代々受け継がれた「清濁併せ呑（の）む」文化が、電気料金を原資としたカネで問題を解決する風土を作り上げたと指摘する。「その典型が、総務部が担った右翼や総会屋への対応です」と続けた。

　■会社の防波堤

　総会屋への利益供与への罰則が初めて盛り込まれた８２年の商法改正から、東電は摘発逃れのために情報誌を立ち上げた右翼らに購読料を渡してきたという。

　「１部６万円で２部購入が基本だが、相手の数は１００人以上に上った。彼らを取り込み、トラブルを避けるためでした」

　右翼や総会屋が公然と東電本店に出入りしていた時期で、「知り合いを工事業者に入れてくれ」との依頼を総務部に持ち込むことがよくあり、断るのが大変だった。購読料の上積みを要求する総会屋が総務部員を脅すこともあったという。こうした状況は、罰則を強化する９７年の法改正を受けて総務部が購読料支払いをやめるまで続いた。

　総務部ＯＢは今でも「会社の防波堤となって働いたことを誇りに思う」と話す。だが、東電を原発事故から再建するにはその風土を変えなければならないと考えるようになった。

　「表に出せないカネは必要だと思ってきたが、電力会社の信用をおとしめた。すべてはカネで解決できるという発想は改めないといけません」

　　　　　◇

　自民党と電力業界が原発再稼働へ動く今、「電力と政治」の関係を引き続き取材します。特別報道部の電子メール（ｔｏｋｕｈｏｕｂｕ＠ａｓａｈｉ．ｃｏｍ）に情報をお寄せください。

資料　2014/01/29　名護市長選

2014-01-29 17:18:26 | Abeは利権と戦前を取り戻す

記者の目:名護市長選　政府・自民党が大敗＝佐藤敬一（西部報道部）

2014年01月29日　東京朝刊

　◇「力とカネ」手法にノー

　米軍普天間飛行場（沖縄県宜野湾市）移設への賛否が最大の争点になった１９日の沖縄県名護市長選は、日米両政府が進める名護市辺野古（へのこ）への移設に反対する現職の稲嶺進氏（６８）が、移設推進を訴えた新人の末松文信氏（６５）を破り、再選を果たした。４１５５票もの大差は、公約を翻して埋め立て申請を承認した仲井真弘多（なかいまひろかず）知事と、選挙戦で露骨な「アメとムチ」を繰り出した政府・自民党への憤りの強さを物語る。原発政策同様、国策のために力とカネで地方を屈服させる政府・自民党の手法に対する市民の異議申し立てでもある。県外移設を求める沖縄の民意は強まっている。政府は辺野古移設を断念し、県外移設を検討すべきだ。

　基地を巡る沖縄の民意の変化を振り返りたい。２００９年に「最低でも県外」と掲げた鳩山政権の誕生で高揚した沖縄の反基地感情は政権の辺野古移設回帰により、保守、革新を問わず基地押しつけを「差別」ととらえるようになった。基地を巡る対立軸は保革ではなく、本土（ヤマト）対沖縄（ウチナー）に転化した。米軍新型輸送機オスプレイの強行配備や、沖縄の米国統治が合法化されたサンフランシスコ講和条約発効の日を記念した政府の式典（昨年４月２８日）は、対本土意識を強めた。

　◇「アメとムチ」あまりに露骨

　こうした状況下、政府・自民党は県外移設を掲げていた自民党沖縄県連や沖縄に選挙基盤がある党国会議員に辺野古容認を迫って成功し、昨年末には巨額の沖縄振興予算で「県外」を公約にしていた仲井真知事から埋め立て承認を得た。

　政府・自民党にとってここまでは思惑通りだったのだろう。だが、力とカネで屈服を迫る政府と、「沖縄は振興策で基地を受け入れるとの誤った発信をした」（翁長雄志（おながたけし）那覇市長）知事への県民の憤りは一層強まっていた。このことを政府・自民党は分かっていなかったのだと思う。

　市長選の投開票日３日前に名護入りし、末松氏の応援に立った自民党の石破茂幹事長はいきなりぶち上げた。「基幹病院整備など公約実現のためには裏付けの財源が必要。新たに５００億円の名護振興基金をつくる」。その場にいた私は「５００億円」という唐突な数字に驚くと同時に「カネで票を買うのか」と思わざるを得なかった。

　「名護を日本で一番幸せな街にする義務を日本国政府は負っている」。そこまで言い切った石破氏だったが、記者団から「それならば稲嶺氏が勝った場合も基金を創設するのか」と問われると「もう一人の候補者がどのようなお考えをお持ちかは存じません」と言葉を濁した。ここまで露骨な「アメとムチ」がかつてあっただろうか。

　◇政権と対立でも貫く意志を示す

　市民は冷ややかだった。「振興策の恩恵？　そんなものがあったら倒産なんかしないよ」。名護市内で養豚業を営む５０代の男性の言葉が忘れられない。男性は３年前、建設会社をたたんだ。かつては「移設が実現すれば仕事は増える」と信じて移設容認派の候補を支援したが「振興策の恩恵なんて大きな会社にあるだけ」と気づいたのだという。

　「大きな大きなお土産」（田村憲久厚生労働相）などと「５００億円」発言に当初は大いに沸いた末松氏陣営だったが、稲嶺氏陣営が批判を強め、実態は既存予算の付け替えであることが分かると、翌日以降は基金への言及を避けるようになった。現職有利と言われた選挙戦だったが、この石破発言で流れは決まったのかもしれない。政府・自民党は沖縄の民意の変化に向き合わず、名護市長選に大敗した。

　今回の名護市長選に表れた民意にはもう一つ特徴がある。移設を争点にした５度目の市長選で、市民が初めて政権与党とのパイプがない市長を選んだことだ。それは、政権によってたとえ苦しい立場に追い込まれたとしても、圧力に屈せず地方自治を守りたいという市民の矜持（きょうじ）の表れのように私にはみえる。

　政権とのパイプを絶ってでも、市民は移設反対の市長を選んだ。政府が辺野古移設を強引に進めれば進めるほど、反発は強まるだろう。沖縄の民意に照らせば、県内移設はもはや困難だ。

　「『ああ、また戦（いくさ）が始まるんだ』と思ったら涙が出てきた。なぜ私たちだけがこんな目に遭うのか」。告示前、末松氏陣営の総決起大会に参加した女性は、私の目の前で泣いていた。国策を押し付けられ、市民同士が争い続けてきた悲嘆の声だ。私たち本土の人間は「なぜ私たちだけが」という女性の疑問に真摯（しんし）に向き合わなければならないと強く思う。