作者未詳 巻八 一五九四番歌
時雨の雨 間無くな降りそ 紅に にほへる山の 散らまく惜しも
訳:時雨の雨よ絶え間なく降るな。紅に色づいた山の葉の散るのが惜しいよ。
解説
秋と言えば、「読書の秋」「食欲の秋」「秋の夜長」などさまざまな決まり文句がありますが、とりわけ、色づいた木々が目を楽しませてくれます。「紅葉の秋」が重い浮かびます。(今はまだ、夏真っ盛りですが)
「万葉集」に読まれた季節に関わる歌の中では秋の歌がもっとも多く、紅葉を詠んだ歌だけでも八十首以上あります。
ところで、現在では「もみじ」と濁って発音するのが普通ですが、古代には「もみち」と濁らずに発音していたようです。葉が紅や黄に発色するという意味の動詞「もみつ」から生まれた名でした。ただし、それらは現在でいうモミジやカエデといった特定の植物を指すのではなく、赤や黄に色づいた秋の木の葉をひろく指すことばでした。
さらに現在では「紅葉」が一般的ですが、「万葉集」ではほとんどの場合「黄葉」と書かれています。これは、古代には黄色い植物が多かったということではなく、お手本とした中国文学の書き方の影響だと考えられています。
この歌は、そうした万葉集の中では珍しく紅葉を詠んだ歌です。「仏前唱歌」(ぶつぜんしょうか)と題されていて、旧暦十月(現在の暦の十一月頃)に平城宮で行われた法会(ほうえ)で合唱された歌だと記されています。
「時雨」は晩秋に降る冷たい雨のことで、多くの歌で、それが木の葉を色づかせ、散らすものと表現されています。一雨ごとに秋が深まり寒くなる現象を、古代の人はそんな風にとらえたようです。
万葉集ゆかりの地~平城京~
平城京には、復元された太極殿や平城京歴史観などがあります。平城宮歴史公園の朱雀門前にある「朱雀門ひろば」は、平城宮跡の往時の広大な空間を体感できるとともに、平城宮に関する展示施設や便益施設を備えたへ平城宮跡の正面玄関です。朱雀大路を軸として、西側の県営公園区域に飲食物販施設や交通ターミナルが、東側の国営公園区域には平城宮いざない館(平城宮跡展示館)があります。
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