アルコール性肝障害のお話し
今年もいよいよ後10日あまりで終です。「今年こそ」と言いながらやりそこなったことはありませんか?良いことも悪いことも色々あった一年だったと思います。そんなこんなを言ってお酒を飲む会が「忘年会」。
年末年始は何かと飲む機会が増えると思います。そこで、アルコール性肝障害のお話をします。(決して脅すつもりはありませんので
)
アルコールは少量では肝臓を傷めることは少ないですが、日本酒換算で1日3合、ビールなら大ビン3本、ウイスキーシングルで6杯以上のアルコールを5年以上にわたって摂取すると、様々な障害が起こってきます。
アルコール性肝障害には、アルコール性脂肪肝・アルコール性肝線維症・アルコール性肝炎・アルコール性肝硬変・アルコール性肝癌に分類されます。
・アルコール性脂肪肝
アルコール摂取により、脂肪酸、中性脂肪が増加し、肝細胞に脂肪が沈着する状態で、多量飲酒によりほぼ必然的に発症しますが、3~4週間の禁酒により改善します。(改善したからといって、また同じことをしてはダメですよ!)
・アルコール性肝炎
慢性飲酒によりコラーゲン産生が起こり、脂肪変性や炎症が軽度で線維化が生じる状態です。肝炎や肝細胞壊死(えし)(細胞が壊れること)は軽度で、禁酒により肝機能は改善されます。
・アルコール性肝炎
アルコール性脂肪肝・肝線維症・肝硬変の患者さんなど、慢性飲酒者がさらに多量の飲酒をした際に起こり、肝細胞が変性・壊死を起こし、肝機能障害・腹痛・黄疸(おうだん)・発熱・白血球増加などの症状が出ます。また、通常は禁酒により改善しますが、重症化し、消化管出血、腎不全、重篤な感染症を起こすと、1か月以内に死亡することがあります。
・アルコール性肝硬変
アルコール性肝硬変は、アルコール性肝障害の終末像で、慢性の肝細胞が壊れる肝障害により肝臓の再生の際にコラーゲン線維が増生し、肝臓が固くなり、肝機能が低下する状態で、アルコール性肝炎やアルコール性肝線維症から進展します。肝硬変になっても飲酒を続け病態が進行すると、腹水、黄疸、肝性脳症などの肝不全が生じますが、症状のない状態で、禁酒すると、正常までには改善しませんが、病状の進行は抑制することはできます。
・アルコール性肝癌
肝細胞の障害と再生を繰り返す過程でがん細胞が発生し、次第に大きくなっていくため、専門的な診断および、治療が必要になります。アルコール性肝癌の危険因子としては、66歳以上、男性、糖尿病合併者に発症しやすいと言われ、肝癌と診断されると、早急に専門的な診断や治療が必要です。
肝癌以外のいずれの病態は、まず、最寄りの医療機関での飲酒量軽減、適量飲酒(節酒)指導を受けてください。
とにかく、暴飲・暴食をさけて楽しくお酒を飲んで、良いお年をお迎えください。