たまたま見つけて手に取ってみたら、引き込まれてしまった。加藤嶺夫氏は「一九二九年(昭和4年)東京生まれ。出版社勤務のかたわら東京を散策し、新聞紙上にルポルタージュを執筆。写真集に『東京 消えた街角』『東京 懐かしの街角』(ともに河出書房新社)、『東京の消えた風景』(小学館)、『消えた風景を訪ねる 大人の東京散歩』(文・鈴木伸子 河出書房新社)がある。二〇〇四年没」という方。既に亡くなられているのが惜しいが、私の両親よりも少し年長という世代である。そして、出版社で仕事をされていただけあって、プロの視線で東京の町の景色を切り取っている。何よりも、昭和40年代の前半からの写真が数多くあって、私にとっても少年時代に見てきた東京の町の景色がそこにあるという、感慨深い写真集である。しかも、区ごとに刊行されていて、今のところ三冊だが、まだまだ続刊するようなので、非常に楽しみである。デコという出版社から出ているが、サイトを見てるとユニークな会社で面白い。
その最初の一冊は、新宿区。都電の走る新宿駅界隈、駅ビルの立つ前の西武新宿駅、建設中の京王プラザなど、どれも懐かしい。しかも、どこか見覚えのある景色ばかり。新宿区で括られているだけに、新宿駅周辺だけでなく、百人町、大久保、落合と、抜かりはない。落合の山手通りの様子など、首都高速道路の工事で一変してしまった。高田馬場、早稲田、神楽坂と、知っている景色が多くて、見ていて引き込まれてしまう。
「昭和の東京 1 新宿区 加藤嶺男写真全集」川本三郎・泉麻人監修 デコ刊
そして二冊目は、台東区。浅草、上野を中心に、佐竹通りや台東辺り、山谷に橋場、新吉原、谷中に池之端と、これも区内をしっかり網羅している。両大師橋の上から上野駅を出て行くC57型蒸気機関車の引く列車の写真も出ている。これについては、解説の両氏も鉄度が低いらしくて、東北線の列車などと書いているが、上野に最後まで残った蒸気機関車の列車は常磐線経由の成田行きの列車だった。我孫子から成田線に入る列車だった。まあ、そんなことはともかくとして、これも見ていると懐かしく楽しい。谷中、池ノ端界隈などは、私が撮ったのと同じ場所でシャッターを切られているところもある。そんなところを見ていると、どこかの街角で加藤さんに出会ってみたかったとも思う。
『昭和の東京 2 台東区 加藤嶺男写真全集』川本三郎・泉麻人監修 デコ刊
目下出ている最新版の三冊目は、千代田区。神田界隈の写真は、私にも馴染みのあるところが多くて、小川町交差点の写真などは本当に懐かしい。小学校低学年の頃に、YMCAの体育教室に母親に連れて行かれていたので、ここは特に思い出深い。都電のポイントの切り替え操作をする詰め所があって、そこに切り替えを操作する人が詰めていたのも覚えている。あの角から数軒目の、今はオリンパスのショールームになっているところに、模型屋があった。店の外にヒモで結んで吊されたプラモデルがあって、小遣いを握りしめてどれを買うのか、限りなく時間を費やして悩み抜いていたものだった。あれは至福の時間であったと、今振り返るとそう思う。
皇居、大手町、有楽町、日比谷というのも、見応えがある。ここまでのどの区のものを見ても、良くもここまであちこち歩き回って写真を撮って歩いているものだということ。どうしても、自分の生活圏や馴染みのあるところを中心に歩くところも限られてしまいがちなのだが、ここまでくまなく歩き回っていること自体が凄いと思う。
『昭和の東京 3 千代田区 加藤嶺男写真全集』川本三郎・泉麻人監修 デコ刊
そして、巻末には監修の二人の解説が付いている。川本三郎氏は1944年生まれで、その世代らしく、概説ともいうべき話を書いているし、泉麻人氏は1956年生まれ。私の少し上の世代だけど、やはり世代が近い分共感しやすい話が多い。一冊目の新宿区の分には、加藤さんがニコンFMに35ミリと50ミリをつけて使っていたことなど、機材の解説まで出ているのが嬉しい。また、この巻には加藤さんと泉麻人氏の対談も収録されている。これも読んでいて楽しい。町を見ながら写真を撮って歩く中では、共感できる話ばかりだ。
撮影地点の詳細な地図と、彼が使っていたという昭和38年の東京区分図の復刻が掲載されているのだが、この区分図、どうやらうちにあるものと同じ様に見える。私の祖父が買ったものらしいのだが、都電の路線図なども出ていて面白いので、大事にとっておいているものだ。同じ地図を見ていたと言うことでも、なんだか勝手に加藤さんに親近感を覚えてしまう。
とにかく見応えのある写真集なので、是非とも書店で手に取ってみて頂きたいと思う。これは、なかなか凄い本だと思う。
その最初の一冊は、新宿区。都電の走る新宿駅界隈、駅ビルの立つ前の西武新宿駅、建設中の京王プラザなど、どれも懐かしい。しかも、どこか見覚えのある景色ばかり。新宿区で括られているだけに、新宿駅周辺だけでなく、百人町、大久保、落合と、抜かりはない。落合の山手通りの様子など、首都高速道路の工事で一変してしまった。高田馬場、早稲田、神楽坂と、知っている景色が多くて、見ていて引き込まれてしまう。
「昭和の東京 1 新宿区 加藤嶺男写真全集」川本三郎・泉麻人監修 デコ刊
そして二冊目は、台東区。浅草、上野を中心に、佐竹通りや台東辺り、山谷に橋場、新吉原、谷中に池之端と、これも区内をしっかり網羅している。両大師橋の上から上野駅を出て行くC57型蒸気機関車の引く列車の写真も出ている。これについては、解説の両氏も鉄度が低いらしくて、東北線の列車などと書いているが、上野に最後まで残った蒸気機関車の列車は常磐線経由の成田行きの列車だった。我孫子から成田線に入る列車だった。まあ、そんなことはともかくとして、これも見ていると懐かしく楽しい。谷中、池ノ端界隈などは、私が撮ったのと同じ場所でシャッターを切られているところもある。そんなところを見ていると、どこかの街角で加藤さんに出会ってみたかったとも思う。
『昭和の東京 2 台東区 加藤嶺男写真全集』川本三郎・泉麻人監修 デコ刊
目下出ている最新版の三冊目は、千代田区。神田界隈の写真は、私にも馴染みのあるところが多くて、小川町交差点の写真などは本当に懐かしい。小学校低学年の頃に、YMCAの体育教室に母親に連れて行かれていたので、ここは特に思い出深い。都電のポイントの切り替え操作をする詰め所があって、そこに切り替えを操作する人が詰めていたのも覚えている。あの角から数軒目の、今はオリンパスのショールームになっているところに、模型屋があった。店の外にヒモで結んで吊されたプラモデルがあって、小遣いを握りしめてどれを買うのか、限りなく時間を費やして悩み抜いていたものだった。あれは至福の時間であったと、今振り返るとそう思う。
皇居、大手町、有楽町、日比谷というのも、見応えがある。ここまでのどの区のものを見ても、良くもここまであちこち歩き回って写真を撮って歩いているものだということ。どうしても、自分の生活圏や馴染みのあるところを中心に歩くところも限られてしまいがちなのだが、ここまでくまなく歩き回っていること自体が凄いと思う。
『昭和の東京 3 千代田区 加藤嶺男写真全集』川本三郎・泉麻人監修 デコ刊
そして、巻末には監修の二人の解説が付いている。川本三郎氏は1944年生まれで、その世代らしく、概説ともいうべき話を書いているし、泉麻人氏は1956年生まれ。私の少し上の世代だけど、やはり世代が近い分共感しやすい話が多い。一冊目の新宿区の分には、加藤さんがニコンFMに35ミリと50ミリをつけて使っていたことなど、機材の解説まで出ているのが嬉しい。また、この巻には加藤さんと泉麻人氏の対談も収録されている。これも読んでいて楽しい。町を見ながら写真を撮って歩く中では、共感できる話ばかりだ。
撮影地点の詳細な地図と、彼が使っていたという昭和38年の東京区分図の復刻が掲載されているのだが、この区分図、どうやらうちにあるものと同じ様に見える。私の祖父が買ったものらしいのだが、都電の路線図なども出ていて面白いので、大事にとっておいているものだ。同じ地図を見ていたと言うことでも、なんだか勝手に加藤さんに親近感を覚えてしまう。
とにかく見応えのある写真集なので、是非とも書店で手に取ってみて頂きたいと思う。これは、なかなか凄い本だと思う。
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