視覚障害者きうっちの自立への道

視覚障害者きうっち(S52年生)が気の向くままに日々の生活をツラツラとつづるブログ

地獄の入院生活(04年5月)

2011-10-15 18:00:00 | 闘病日記
■何かあんまりタンが出なくなってきたんですけど…
 以前の記事で入院していた頃の自分は、気管切開の処置で開けたノドの穴からたくさん分泌物、いわゆるタンがたくさん出てくると書きました。
でもこの頃くらいからそのタンが何だかほとんど出なくなったんです。以前は20分に1回くらいは専用の吸引機でタンを吸ってもらっていたんですけど、
この頃には数時間に1回くらいのサイクルになっていました。そもそも何でそうなったのか?-。原因は正直なところ、自分もよく分かっていないのですが
ともかく自分的にはこれは非常にありがたかったですね。以前にも書きましたけど、この『気管からタンを吸引される作業』というのは本当に苦しいですから。

 それと同時に、この頃くらいからスピーチカニューレを装着して、ノドの気管を人為的に塞いだ状態にしても呼吸が苦しくなることがなくなりました。
これはちょっと分かりにくいと思うんですけど、気管切開でノドに穴を開けている間、自分はそのノドの穴と肺とで酸素のやり取り、呼吸をしていました。
で、このスピーチカニューレを装着してノドの穴を人為的に塞いでしまうと、呼吸をすることが急に苦しくなっていたんですよね。
これは『ノドの穴←→肺』で空気のやり取りをしていたものが、人為的にノドの穴を塞いだことで『口や鼻の穴←→肺』、いわゆる普通の人と同じ状態で空気のやり取りをすることになってしまったことで起こっていました。
何でそんなことになってしまうのかというと、以前にも少し触れましたが、その理由は単純に『空気のやり取り』をする距離が長くなってしまうから。
ちょっと考えれば分かると思いますが、ノドの穴と肺、口や鼻の穴と肺、とでは『空気のやり取り』をする距離が違いますからね。

 まぁこれは入院生活を始めたばかりの頃の自分の体の状態があまりにも悪かったから、呼吸をする力があまりにも弱かったから
こんなことが起こっていました。でもこの頃の自分はスピーチカニューレを装着してノドの穴を人為的に塞いでも、
ようするに『空気のやり取り』を普通の人と同じ状態に戻しても、全然苦しく無くなっていました。それだけ、この半年の間に自分の体の状態がよくなった、ということですね。

 また、これでこの頃の自分には『違う希望』が見えてきてもいました。
ノドの穴を塞いでも呼吸が苦しくなることは無くなったし、これでノドの穴からタンが全然出なくなれば、気管切開で開けたノドの穴塞げるんじゃないのか?-。と。
やっぱり人間、誰しも『普通の状態』でいたいと思うのが人情ってもんですからねぇ…。

■自己導尿のすゝめ
 自分はこれまで、尿を自分の力で出すことが難しかった(少なくとも本人はそう思っていた)関係で、
排尿をする手段には、自分の膀胱に常に『バルーンカテーテル(以下バルーン)』というものを挿入した状態にしておいて、そのバルーンを使って導尿という形で尿を取ることにしていました。
まぁバルーンを用いた導尿について詳しいことはこちらを読んでいただきたいのですが、実はこのバルーンを用いて尿を取り出す方法というのは一つ大きな問題があるんです。

 ところで、このバルーンを用いて取り出した尿は一体どこにいっているのか?-。膀胱に繋がれたバルーンの管の先には取り出した尿を溜めておく袋のようなものがついているのですが、実は取り出した尿というのはその袋のようなものに流れ込むようになっています。
そしてこのバルーン、繋がれている膀胱からその袋までの管の長さというのは1メートルもないくらいの長さしかないんですよ。これが何を意味しているのか?-。つまりバルーンを常に装着して生活している人は、この『おしっこの入っている袋』を常に体の近くに持ち歩いていなければならないわけなんです。
で、このおしっこの溜まった袋というのは『袋』というだけあって、その強度はハッキリ言って大したことはないんです。不意に強い衝撃にでも晒されれば簡単に破れてしまうような代物です。
そして中におしっこがいっぱい溜まった『その袋』が何かの衝撃で破れてしまったら一帯どうなってしまうのか?-。……ここから先のことはもう、あえて書く必要はないと思います(涙)。
もっとも、そうでなくても『こんなもの』を常に持ち歩いて外になんかハッキリ言って出たくありません。それが人情ってもんだと思います。

 でも残念ながらこの時点での自分は尿をちゃんと自分の力で出すことができません。正確に言うと、膀胱に溜まっている尿を『自分の意思』で全部出し切ることができない。
よく年配の方などが『残尿感』に悩まされている、なんて話をたまに耳にすることがありますが、この時の自分が感じているそれはハッキリ言って『そんなもの』じゃないですね。正確に測ったわけではないですが、たぶん自分の力だけでは、膀胱に溜まっている尿の半分も出すことができなかったでしょう。
そしてそれは、実は現在(2011年9月)もほとんど変わっていないんですよ、これが(泣)。では現在の自分はどうやって尿を出すことにしているのか?-。それが今回の記事で取り上げる『自己導尿』というものなんです。

 まず、ある程度個人差はあるかもしれませんが、自己導尿をする際には以下の3つの道具を使います。

1. 自分の手や尿の出る場所(つまりペニス)を消毒するための『消毒綿』
2. 尿を取り出すために膀胱へ挿入する管、いわゆる『使い捨てカテーテル』と呼ばれるもの
3. 2で紹介した使い捨てカテーテルを消毒するための液が入った、高さ5cm程度の小さな瓶、いわゆる『滅菌グリセリン』と呼ばれる消毒液

 そして『自己導尿』をする手順としては次のような感じ。まず1の消毒綿を使い、自分の手などを消毒する。
次に2の使い捨てカテーテルを3の滅菌グリセリンの瓶に入れて消毒し、その消毒した使い捨てカテーテルを自分の膀胱の中に挿入する。
…こう書くと、自分の『大事な場所』にいわゆる異物を入れることになるわけで(汗)何だかとっても痛そうなのですが、
実はそんなことは全然ないんです、これが。それは挿入するカテーテルを滅菌グリセリンで消毒してあるから。コイツで使い捨てカテーテルを消毒しておくと、本当にカテーテルが膀胱に『スルスルスルスル…』と入っていくんです。
で、しばらく2の使い捨てカテーテルを膀胱に入れていくとその内おしっこが『チョロチョロ』と出始めるので、そのおしっこを何らかの手段で処分します。
ちなみに、自分なんかは普通の様式トイレの便器の中にそのまま出すようにしていますね。こういう風にすれば、普通に座って用を足すのと何ら変わらない状態になりますから。
そして尿が全部出きったら、その時使った2の使い捨てカテーテルと1の消毒綿をゴミ箱に処分し、3の滅菌グリセリンも元に戻す。その後、トイレを流して『排尿をする作業』は完了です。

 で、こうして一連の『おしっこをする動作』を記すと『きうっちさん、そんな面倒なことを毎回やってるの?』なんて思われそうですが……正直言って、これ結構面倒ですね(苦笑)。これを5年以上やって慣れて来た2011年現在でもそう思います。
何より、おしっこをちゃんと便器の中に出さなければ『大変なこと』になってしまうので、そこは毎回かなり気を使っていますね。
そして自分が用を足すためには、毎回の外出中、常にこの『おしっこ3点セット』を持ち歩いていなければならない。これって、正直なところ結構ストレスなんですよ、ホントに。
…でもまぁ、もう自分としては『自分はこういうものなんだ…』と正直割り切って、今のこの状態の自分と上手く付き合うことにしていますね。
それに正直、大変は大変ですけど『2011年現在の自分』が本当に大変だと思っている障害は、目が全然見えていないことと『コイツ』くらいですからね。それ以外は、特に食事制限があるわけでもないですし、結構毎日楽しくやれていますから。
世の中にはもっと大変な障害を抱えて生活をしている人たちもいるんだから-。そう考えれば、自分なんかはまだまだマシな方だよな、と。最近はそう思うようにしていますね。その方がよっぽど『健康的』だと思いますし。

■ジグソーパズルをして手先の器用さを鍛えましょう
 この頃、自分は1ピースが5cmくらいあるような、木製のジグソーパズル(全体で20ピースもないような小規模のもの)を使って手先の器用さを鍛えるリハビリをしていました。
先月くらいまでは、自分の太腿を持ち上げたりする運動をしたりだとか、割と自分の筋力、腕力を鍛えるようなリハビリメニューが多かったのですが
この頃になると、当初は弱々しかった自分の腕力もみちがえるようについてきました。半年ほど前はナースコールを押すことに必死になっていたことが嘘のように。
そんな自分の状況の変化をリハビリ担当の先生も考えてくれていたみたいで、それなら『きうっちさんは腕力を鍛えるメニューより手先の器用さを鍛えられるようなリハビリをしよう』ということになったみたいです。そもそも、手先が器用といっても
『目がちゃんと見えている状態』と『目が全然見えていない状態』では意味するところが全く違いますからね。簡単な蝶結びをするだけでも、目が見えていた頃とは違う、ちょっとしたコツのようなものが要求されますし。

■再びまともなお食事をするための長い長い道のり
 先月(04年4月)からゼリーやヨーグルトを使って本格的に口から物を食べる練習を始めたわたくし。
この頃から自分は一日3食の内の1食、ないしは2食を、いわゆる『普通に口から食べるご飯』に徐々に切り替えていったわけなんですけど
実はその『口から食べるご飯』も最初から、いわゆる普通のご飯を食べられたわけではありませんでした。
先月はゼリーやヨーグルト、プリンを使って徐々に『口から食べる』練習をしてきた自分なのですが、
一言で『口から物を食べられるようになった』といっても、実は『普通のご飯』に辿りつくまではとても長い長い道のり、ある程度段階を踏んでいかなければならないんです。…まぁよくよく考えれば、そんなことは当たり前のことなんでしょうけど(苦笑)。
ちなみに、その段階とは簡単に書き表すと↓こんな感じになります。下に行くほど段階が上がって普通のご飯に近づいていく、と思ってください。

1.導入職
ゼリーやヨーグルト、プリンなど柔らかくて、口の中で形がすぐ崩れてしまう物、ノドにひっかかりにくい物を使って
これらのものを15分程度かけて、ゆっくりと食べる練習。食べる際には、キチンと飲み込んで、食べた物が気管に入ってむせてしまわないことに一番注意しつつ、食べた物を上手く飲み込めるようにすることをなるべく意識しながら食べる。

2.訓練食1
このあたりからデザートではなく、普通の食卓に並ぶような食材を使って食べる練習をする。ただし、ご飯が『普通の形』で出てくることはまずあり得ません。
まず各種食材は基本的にミキサーで細かく切り刻んだ状態にし、さらにそれにとろみをつけてほとんど液状化させた状態にしてから器に盛られてきます。
当然、食べてるこっちの方としては一体何を食べてるのかサッパリ分かりません(苦笑)。一応、食べた時の『味』でなんとなく分かるものもありますが。そしてこれは『おかゆ』ですらも当てはまります。
また、飲み物もいわゆる『普通の状態』のものが出されることは無く、バナナジュースやコーンポタージュなど、少しとろみがかったものが出されてきます。
またお茶や水など、ほとんどとろみのない水分を飲むことになった際は、わざわざとろみをつけてから自分に飲ませるようにします。
当然、この段階では自分の好きな肉類なんかを食べるというのは夢のまた夢のお話…(涙)。

3.訓練食2
実はこの段階でも、基本的なことは訓練食1とあまり変わらなかったりします。飲み物を除いた食材が、訓練食1ほどとろみがつかなくなったとか
おかゆがとろみをつけずに普通の『おかゆ』が食べられるようになったとか、少しずつ形のある物がおかずとして出されるようになっただとか、
少しずつの『小さな変化』は訓練食1から確かにありましたけど、実は大きな変化が訪れるのはこの後の訓練食3の段階になってからでしたね。

4.訓練食3
上でも触れている通り、この段階から出されてくるご飯の内容が劇的に変わってきます。言い換えれば、ご飯が『普通の状態にかなり近くなる』ということです。
まず訓練食2までは『おかゆ』だったお米が、いわゆる普通に炊いたご飯になります。そして出てくるおかずはほとんどの物が形のある固形物になってきます。
そして!そしてついに!この段階でやっと『肉』が食べられるようになりました(号泣)。ただ、といってもハンバーグや焼肉のような形で食べられるわけではまだなく、
この段階ではビーフシチューのような、少し汁物にからませてやっと食べることが許されたといったような感じですかね。それでも『久しぶりの肉を使った料理』の味は格別でしたけど。…まぁこの詳しい話は、またいずれ触れようと思っています。
それとこの段階でも、うどんやそばのような『麺類』は何故かNGでした。その理由は『麺類は実は普通の固形物と比べても飲み込みにくい部類に入るから』とのこと。…まぁ確かにそういう部分はあるんですよね、普段何気なく食べていればまず気づかないですけど。

5.常食
ちなみに常食とは、読んで字のごとく『普段常に食べているお食事』のことであり、この段階までくると実はほぼ食事制限はありません。
まぁ人によっては、常食にしても最初の内は、お茶などの水分にとろみをつけておくとか、そんな細かい制限はあったりしますけど
基本的には食事制限は『ほぼ無し』ですね。もうこの段階までくれば普通の人が食べているお食事と何ら変わらない、といっていいと思います。

 …とまぁ、いわゆる普通のお食事である『常食』に辿りつくまでには非常に長い長い道のりが待っているわけなのです。
そして、自分は今月(04年5月)の段階ではまだ、やっと訓練食2に辿りついたという感じでしたね。
上でも少し触れていますけど、この段階では正直何を食っているのか分かりませんし、当然食べている物が美味しいわけなんかありません(泣)。何の変哲も無い『おかゆ』がこの段階では一番美味しいと感じていたくらいですから。

 ということで、この段階での『お食事』はまだ正直そんなに楽しくなかったですね。本当に、ただ『食べる練習のため』だけに毎日口からご飯を食べているような感じでした。
まぁ食べ始めて1ヶ月そこそこでこの段階まで来ている自分は、専門化の医者から言わせれば『相当早いペース』だったそうなのですが、
当の本人からすればそんなことは全然なかったですよ。…本人としては早くまともな物が食べられるようになりたい!早く大好きなお肉が食べられるようになりたい(笑)!の一心でしたしね。
まぁさすがに、そんなに駆け足で会談を駆け上がれるわけはないので、それはもうちょっと『我慢』をすることになるのですけど…。

■今月のその他のリハビリメニュー
 また、この頃には他にこんなリハビリメニューをこなしていました。

1.先月に引き続きのリハビリ。手でニギニギするグリップを用いて、握力を鍛える訓練。
2.車椅子に座った状態から肘かけに両手を添え、そこから自分の体を持ち上げる、いわゆる『プッシュアップ』をして両腕の腕力を鍛えるリハビリ
3.マットの上に足を伸ばした状態で座り、その状態で両手を体の左右について自分の体を腕の力で持ち上げ、体をマットの上で移動するリハビリ

 1と2のリハビリは先月(04年4月)もやっていたので、その説明は先月分のことを記した記事を見ていただきたいのですが、
3のリハビリは今月から始めたことなので、もう少し詳しい説明を。まぁ、ようはこれは本当に『読んでそのまんま』なんですけど(汗)
みなさんも体育館などに敷かれたマットの上で『こんな感じのこと』をしたことがあるのではないかな、と思います。
マットの上で柔軟体操などをし終えた後、他のことをするためにちょっとマットの上を動かなければならない。
でも一度立ち上がって移動するのは正直面倒くさい。じゃあ座ったまんま移動すんべ-。というような時は、たぶん上に挙げたような
両足を伸ばした状態にして、手をついて腕の力を使って自分の体を移動させると思うのですが…。

ところで、この入院生活はまだもうちょっとだけ続くのですが、実はまだこの先の記事、出来上がっていないんですよね(汗)。
この闘病日記は8月の後半くらいから、自分のブログ記事を書く意欲がパチンコの確変モードに入ったように(笑)書きまくった結果、
かなり書き進めることができました。ただその『確変モード』もどうやら収束してしまったようで(汗)
しばらくはこの闘病日記、書くことはお休みとさせていただきます。
またいつか、確変モードに入ったら(笑)この続きを、今度はもう最後まで書いてしまおうと思っています。
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