片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

現代版“安物買いの銭失い”

2009-10-22 17:57:56 | 社会・経済

寝袋を積んだワンボックスカーで、
1000円高速にのって観光地へ行き、
コンビニ弁当で食事を済ませ、
銭湯に入って、そして駐車場で車中泊する。
こんな
“貧乏旅行”をする人たちが増えているといいます。
数百円で買える衣類

コンビニやスーパーの値引き弁当も人気です。

「安さ」を求めることもときには必要でしょうが、
怖いのは、車中泊の旅行をすることや、
安モノの服や値引きされた食品を買うことを、
本人が
“貧しい”と感じていないことではないでしょうか。
むしろ、彼らが感じるのは「こんなに安く旅をした」という
“達成感”であり、
欲しいものを「安く手に入れた」という
“お得感”です。

しかし、「安さ」ばかりに価値をおく消費を続けている限り、
デフレは止まりません。
企業は収益を上げられず、従業員の給料は上がりません。
給料が上がらないから、
ますます消費者は「安い」ものに流れ、デフレが加速する。
“ケチの連鎖”の結果、生活に困窮する人々が増えていきます。

今月20日、長妻厚生労働相は、国民の貧困層の割合を示す指標である
「相対的貧困率」を発表しました。
「相対的貧困率」とは、国民一人ひとりの所得を順番に並べ、
ちょうど真ん中の値を定め、その値の半分に満たない所得の人が、
全体のどれぐらいの割合かを示した数値です。
今回の発表では、06年の時点で
15.7%
この数字は、03年に比べて
悪化しており、
先進国では際立つ高水準だといいます。

しかし、
「貧困率」が高いといわれても、
ピンとこない日本人は、多いのではないでしょうか。
「安い」ものを買って、「お得感」に酔い、
自分の“貧しさ”に気づかない。
つまり完全に“ゆでガエル”状態にあるのです。

「安いモノ」を求める消費傾向では、経済は活発にはなりません。
生活は向上せず、おカネも貯まりません。
日本には、こんな
格言がありましたよね。
「安物買いの銭失い」
現状は、まさにこの状態にあるのではないでしょうか。