片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

リーダーは修羅場が鍛える

2009-10-19 17:56:20 | 社会・経済

日本経済新聞の文化面には、
「私の履歴書」という、名物の連載記事があります。
今月は、
日本政策金融公庫総裁の、安居祥策さんが書いています。
愛読していますが、このところ、
修羅場の連続の話です。

例えば、帝人に勤める安居さんは、
テトロン(ポリエステル繊維)事業の海外展開で、
台湾に新会社設立のため出向させられます。
その後、東京に戻って、
新規事業のEVR関係の会社を立ち上げますが、撤退します。
それが済むか済まないかのうちに、
赤字の帝人ボルボに出向させられます。
それが、
1年で10億円の赤字を出す悲惨な状況です。
さまざまな改革の末、4年目に、待望の黒字を出します。

自動車のおもしろさに目覚め、そのまま自動車屋になろうと思っていたら
今度は、本社に帰れと指令がきます。
異動先は、
海外の不採算事業からの
撤退を担当する部の事業部長
です。
「終わったら、海外事業を束ねる部署に行かせる」といわれますが、
約束は履行されず、次は、
赤字のフィルム販売部長です。
安居さんは、フィルム部門を大成功に導き、販売を飛躍的に伸ばします。
ところが、次に待っていたのは、なんと、
帝人商事への出向です。
ねたまれたのかもしれません、と書いていらっしゃいます。

このように、
働き盛りのとき、
グループ会社への出向、赤字の整理部門
など、
幾多の修羅場を経験し、苦労の連続だったのです。
つまり、
サラリーマン生活は、
決して順風満帆だったわけではない。

それだからこそ、その後、帝人の社長、会長を務め、
そして、日本政策金融公庫総裁の座につかれたのではないか。

経営者をいかに育てるかは、企業にとって、非常に重要な問題です。
MBAの取得だとか、企業内大学だとか聞きますが、それより、
経営者を育てるには
「修羅場をくぐらせろ」といいます。
安居さんは、まさにそれを地で行った方だと思います。

修羅場では、
つねに予測外のことが起こります。
絶対に
想定通りに進まないものです。
いわば、無理難題に直面したとき、その人の、
突破力、実行力、知識力、コミュニケーション力などが問われます。
いや、
鍛えられるのです。
優秀な経営者、突出したリーダーを育てるのに、
実践に優る教育はありません。
安居さんの「私の履歴書」を読みながら、つくづく実感しているところです。