片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

豊田章男社長「踊り場」発言の真意

2014-05-09 17:15:53 | トヨタ

昨日、トヨタの2014年3月期決算説明会に出席しました。
社長の豊田章男さんは、じつによく語った印象です。
章男さんの思い、考えが、強く感じられる会見でした。

報道にもある通り、トヨタの今期の営業利益の見通しは、
2兆3000億円と、前期比0.6%の微増にとどまります。
いわば「横ばい」ですよね。

章男さん自身は、現状認識について、
「意志をもった踊り場」という言葉で表現しました。
私は、この言葉に、章男さんの強い意思と覚悟を感じましたね。

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「踊り場」発言のウラには、苦い経験があります。
かつて、トヨタは、リーマンショックがあったとはいえ、
1000万台を目前につまずきました。
つまり、「1000万台の壁」です。
いたずらに拡大路線に走った末、品質問題でコケた。
それに、グローバル人材の育成も手付かずだった。
強烈な反省があります。
章男さんは、反省を込めていいました。
「人材育成が追い付かず、従業員や
関係者のみなさまのガンバリに依存したムリな拡大を重ねてきた」

さらに、章男さんは、会見の席上で、
「1000万台という大きな転換点を迎えた」として、こう続けました。
「前例もお手本もない、誰も経験したことがない未知の世界で成長し続けるためには、人材育成と同じスピードで年輪を重ねていく。身の丈をこえた無理な成長は絶対にしないという“覚悟”が必要だと思っております。また、将来に向けて経営資源を振り向けられるいまこそ、思い切った変革や、将来の成長に向けた種まきを、積極的に進めて参りたいと思います」

章男さんは、成長エンジンおよび持続的成長のキーは、
「商品」と「人材」だと語りました。
かりにも、「商品」と「人材」をおろそかにすれば、同じ過ちをおかす。

つまり、「1000万台の壁」を乗り越え、
確実に「持続的成長」を成し遂げるためには、
利益があがり、投資が可能な、いまのタイミングに、
できる限りのリソーセスを、商品や人材への投資に回さなくてはいけない。

そのことを考えれば、今期は、やはり
強い意思をもって「踊り場」でなくてはならないというわけです。

わかり易くいえば、1000万台をスタート台にして、
さらに今後、販売台数を伸ばしていくには、いまこそ、
種まき、土壌の改良をしっかりとする必要があるということです。

ライバルのフォルクスワーゲンやゼネラル・モーターズは、
一気にトヨタを抜くべく、今後とも拡大路線を走り続けるようです。
まあ、急がば回れということですよね。