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片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

なぜ日産と三菱自動車のコラボは成功したか ②

2013-06-17 12:17:24 | 日産

日産と三菱自動車の共同出資の企画開発会社のNMKVの続きです。
まず、日産サイドから見てみましょう。
日産は、以前からスズキや三菱自動車から、
軽自動車をOEM調達していました。
事実、日産の軽のシェアは、12年度に7.7%と、
それなりの存在感をもっていました。

しかし、OEMで調達し、バッジだけ「NISSAN」として販売する車には、
当然ながら、日産のアイデンティティはありません。
これは、OEMの限界です。
日産車は、並べてみればわかる通り、顔つきやボディラインに
どことなく共通点がありますが、OEM調達の車にはそれがありません。
今回、日産は、軽自動車の企画、開発に初めて携わり、
日産らしい、アイデンティティを備えたデザインの軽をつくりました。
これで、日産ファンのお客さんに、日産らしい軽を提供することができるわけです。

また、OEMでは、供給のフレキシビリティがありませんでしたが、
NMKV
によって、それも解消します。
生産に関していえば、OEM同様、三菱自動車の水島工場で生産することで、
自前でつくるよりも安く生産でき、しかも生産設備をもつリスクがありません。
つまり、設備投資をしなくて済む。
これらは、日産にとっての大きなメリットです。

では、三菱サイドは、どうでしょうか。
まず、単独で新型車を開発する投資の負担を軽減できます。

極端な話、半分ですみますね。

さらに、自社の「eKワゴン」に加え、
OEM
同様、日産「DAYZ」の生産を請け負うことにより、
輸出の減少や国内販売の不振で稼働率が4割以下に落ち込んだ、

水島工場(岡山県倉敷市)の生産ラインを埋めることができます。
さらに、NMKVでは、調達効率のアップやコストダウンのノウハウ、
品質管理方法などを共有しましたが、こうした取り組みは日産の方が得意です。
三菱は、日産から多くのことを学んだに違いありません。

三菱は、日産から学んだノウハウを、今後、
水島工場だけでなく、ほかの工場へも適用することができます。
これは、三菱にとっては、何にもまさるメリットでしょう。

今回のコラボは、どちらがより「おトク」ということはありません。
企業間の協業やアライアンスは、「WinWin」でなければ成功しない。
NMKV
は、日産と三菱の思惑が合致した結果といえます。
<o:p></o:p>

 


なぜ日産と三菱自動車のコラボは成功したか ①

2013-06-13 15:36:24 | 日産

先日書いたように、日産と三菱自動車は、
共同出資会社のNKMVと協業して、
それぞれ「DAYZ」、「eKワゴン」を発売しました。
これは、世界に例を見ない話です。

断るまでもなく、日産と三菱自動車はライバル同士です。
ましてや、カルロス・ゴーンの率いる日産と、
財閥系の三菱とでは、企業文化が違いすぎます。
共同出資会社をつくって、うまく協業できたのだろうか……と、
誰もが考えるでしょう。
じつは、私は、この奇跡的なコラボの成功は、
日産だからこそ可能だったと思います。

ご存じの通り、日産は、経営破綻の危機にあった1999年、
仏ルノーと資本提携しました。
そのとき、ルノー副社長だったゴーン氏が、日産の社長として送り込まれ、
「リバイバルプラン」に基づいて改革を行った末、再起しました。
それから、2010年、ルノー・日産は、
ダイムラーとも戦略的提携を結んでいますわね。

ルノーとの連携をめぐっては、大変苦労をした。
この厳しい異文化経験から、
日産は、他社と仕事を一緒にすることのノウハウを
しっかりと身につけているんですね。
つまり、異文化にアレルギーがない。

そのうえ、プロジェクトチームの運営について、日産は卓越している。
なぜならば、ゴーン氏が「リバイバルプラン」のなかで、
CFT
(クロス・ファンクショナル・チーム)を設置し、
いくつかのプロジェクトを成功させてきたからです。

購買、製造、研究開発、販売・マーケティング、車種削減など、
日産の課題と思われるテーマごとに、
組織横断型のプロジェクトチームをつくってきた。

プロジェクトチームの運営の仕方を熟知しているんですよ。
提携するうえで、どこまで妥協していいか。何を譲り、何を譲らないか。
役立つ現場のノウハウを、たくさん社内に蓄積しているわけですね。
つまり、日産は、過去の経験から、他社との提携に慣れている。
また、プロジェクトチームの運営の仕方を知っている。
そういう風土があるのです。

NMKV
の成功の要因は、ほかにもたくさんあるでしょうが、
しかし、日産が、これまでグローバルにアライアンスを組んだり、
機動力のあるプロジェクトチームを活用してきた経験が、
大きく貢献していることは、間違いないと思います。<o:p></o:p>

 


NMKVの車づくりの新スタイル

2013-06-06 18:02:00 | 日産

自動車のOEMの新手法となるかもしれません。
日産と三菱自動車が共同開発した、新型軽自動車のことです。

今日、両社は、それぞれのブランド新型軽自動車を発売しました。
日産は「DAYZ」「DAYZハイウェイスター」、
三菱は「eKワゴン」「eKカスタム」という車名です。
私は、ベルサール渋谷ファーストで行われた日産の発表会にいってきました。
軽自動車とはいえ、高級感があって、なかなかの出来映えです。

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日産と三菱が、合弁会社NMKVを設立したのは2年前のことです。
ライバル同士が手を結んだわけです。
もともと、三菱は、日産の軽自動車のOEMを請け負っていました。
しかし、今回の軽自動車の開発にあたっては、
両社の間に50%ずつ出資した合弁会社NKMVを設立しました。

そして、商品企画やエンジニアリングを行ったのです。
その成果が、今回の「DAYZ」「eKワゴン」です。
会見の席上の、日産COOの志賀俊之さんは、次のように語りました。
「一つの規格のなかで二つの商品をつくり、一か所で生産する」
つまり、共同開発による効率的な車づくりです。

自動車メーカーが、他社からOEM調達で自動車を販売する例は、
必ずしも珍しい例ではありません。
しかし、「共同開発」とは、過去に例がありません。
前代未聞の決断ができたのは、日産だからこそではないでしょうか。
日産会長兼社長CEOのカルロス・ゴーンさんは、
慣習にとらわれない、リスクを賭けた決断を下せますからね。

志賀さんは、会見の席上、こう語りました。
NKMVは、両者の“いいとこどり”をしながらまとめて、
非常にいい仕事をしてくれた。ユニークかつ効率的。
お互いのアイデンティティをつぶさず、効率的な仕事ができた。
今後の広がりを感じる」

NMKV
は、来年早々に、もう一台、
軽のミニバンを発売することが決まっています。
「一つの規格で二つの商品をつくり、一か所で生産する」――スタイルは、
厳しい販売競争が繰り広げられるなかで、
新しいビジネスモデルになるかもしれませんね。



日産、中国は粛々とやっていく

2012-11-06 23:34:12 | 日産

昨日はトヨタでしたが、今日は日産の
決算発表にいってきました。

日産は、日系メーカーのなかで、
中国での販売シェアが1位です。
日産の世界販売台数に占める中国の比率は25%。
すなわち4台に1台は、中国で販売した車なんです。
それだけに、中国の反日運動の
影響が心配されました。
ただ、今回の決算発表は、
今年4月から9月までの上期です。
反日運動は、9月半ばからですから、
むしろ影響は下期に出るだろうという話でした。

さて、問題の決算内容ですが、
2012年度上期の連結売上高は、
前年同期比4.1%増の4兆5468億円、
営業利益は同7.3%減の2870億円、
当期純利益は同2.8%減の1783億円でした。

2013年3月期の連結業績見通しについては、
売上高を従来予想より4850億円少ない9兆8150億円、
営業利益は同1250億円減の5750億円、
当期純利益は同800億円減の3200億円
とそれぞれ下方修正しました。
ちなみに、売上高については、
ホンダもトヨタも下方修正しました。
ホンダは売上高が5000億円減の9兆8000億円、
トヨタは7000億円減の21兆3000億円です。

会見の席上、最高執行責任者COOの志賀俊之さんは、
下方修正の理由について、継続する超円高、
中国での反日運動による販売への影響、
欧州の厳しい経済環境の3点をあげました。

記者からは、中国市場の影響についての
質問がたくさん出ました。
「通常の状態がいつになるか、
はっきりとは申し上げられないのですが、
現地の合弁パートナーと一緒になって
民間企業として最大限の努力をしています」
と、志賀さんは語りました。
ただ、志賀さんによると、
ディーラーへの来店者数は、8割くらいまで
戻ってきているということですし、
受注も10月後半には、
7割くらいまで戻ってきているということです。
反日デモの被害を全額補償するなど、
懸命の努力が効いているのでしょうかね。
「中国のオポチュニティをほかで補うというような
戦略的な変更を考えるのは、まだ時期尚早である」
と志賀さんは述べました。

すでに決まっている大連工場の建設については、
「現時点では、大連の投資を見直すという
状況にはありません。
万が一、とんでもないことが起きたら、
見直すということになるんでしょうけれども、
現時点では、決まった投資については、
粛々とやっております」と答えました。
ただし、今後の投資については、
「日中関係の行方を注視し、
市場分析を含めて、慎重にみていく」
ということでした。
民間企業としては、当然の判断といえるでしょう。

10月31日付の日経新聞紙上で、日産社長の
カルロス・ゴーンさんは、「日中関係の緊張の
影響は、想定していなかった」と述べています。
しかし、「中国経済は、向こう5年を予想しても
経済成長に問題はない」としています。

“ゴーン日産”にとって、中国の反日は、
想定外だったとはいえ、
記者会見を見る限り、志賀さんに
あわてた様子はありませんでした。
志賀さんは、自工会会長時代から、
折に触れて、自動車産業が抱える、
超円高、高すぎる法人税、自由貿易協定、
労働規制、温暖化対策、電力供給不足の六重苦に
ついて発言してきましたが、
いまや、中国問題が加わり、六重苦どころか、
七重苦になっていますが、
いまの日産には自信があるのでしょうね。
落ち着いた記者会見でした。
とはいえ、厳しい環境のなか、
日産の底力が試されているのは確かです。

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日産「そこまでやらなきゃ、生き残れない」

2012-08-30 21:07:20 | 日産

日本と韓国の両政府は、
トラックの「ダブルナンバー」に合意しました。
1台のトラックに両国のナンバープレートを取りつけて、
公道を相互に乗り入れできるようになります。

いち早く、「ダブルナンバー」を活用するのは、日産です。
今年11月、福岡市の日産自動車九州と
韓国・釜山のルノーサムスン自動車の間で、
ダブルナンバーのトラックに載せた積荷を
トラックごと貨物フェリーに載せて、
相手国に運ぶ計画です。
貨物船のコンテナに荷物を積み替える作業が不要になるため、
大幅な時間短縮とコスト削減につながります。

日産は8月28日、福岡県苅田市の日産九州で
新型「ノート」の発表披露会を行いました。
円高などで国内生産の厳しさが増すなかで、
競争の激しい小型車市場を勝ち抜くのは、

大変なことです。

しかも、国内で生産するのですから、
並大抵のコスト削減では追いつきません。
そのため、日産は新型「ノート」の部品の
40%から45%を中国、韓国、タイからの
輸入に踏み切りました。
自動車は、2万点から3万点の部品からなります。
自動車メーカーにとって、部品をどう調達するかは、
コスト削減のカギとなります。

そもそも、新型「ノート」は、
当初、タイで生産する予定だったと聞きます。
日産は、その案を押しのけてまで、
日産九州で生産することを決めました。
国内生産100万台を死守するためです。
その背景には、九州が、関東に比べて
人件費が安いという理由もありますが、
また、東アジア経済圏の地の利を生かした
調達を通した、コスト戦略があります。
つまり、日中韓が一体となり、
物流網の効率化を目指しているのです。
日中韓の新たなサプライチェーンの構築です。

その先の戦略には、米韓FTAの活用も見えます。

九州は、もともと半導体産業が盛んです。
アメリカのシリコンバレーにならって、
「シリコンアイランド」と呼ばれています。

また、オンリーワンの技術をもつ部品メーカーも集積しています。
日産九州のほか、トヨタ九州の宮田工場、苅田工場、小倉工場が

あり、山口県防府市には、マツダの工場もあります。
「シリコンアイランド」は、いまや
「カーアイランド」と呼んでもいいでしょう。


国内に生産拠点を残せば、
多数の部品メーカーも生き残ることができます。

当然、雇用も確保できます。

日産のチャレンジは、とてつもなく大きいといえます。