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「西堀榮三郎先生の遺言」
林敦(北陸ミサワホーム会長)
『致知』2012年7月号
特集「将の資格」より
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西堀榮三郎先生とは晩年の15年をご一緒させていただき、
亡くなる1週間前に病室でお会いしたのが最後でしたね。
当時先生はかなり弱っておられて、
看護師さんからは面会時間は5分だけだと
厳しく言いつけられました。
先生が話してくださったのは、
ヒマラヤ登山隊の総隊長を務められた時のことでした。
頂上からの眺望を生放送することが予定されていたのですが、
あいにく空は雲に覆われていたそうです。
ところが放送直前になってサーッと視界が開けた。
「人はこれを天佑と言うが、絶対に天佑ではない」。
先生はそう言われました。
隊を組んだネパール人や中国人、
そして日本人とが共同の目標を持って、
一所懸命やった結果だったのだと。
話は途切れることなく5分どころか1時間半にもおよび、
その間看護師さんの制止にも耳を傾けようとはされませんでした。
結局この話が遺言となりました。
先生がおっしゃりたかったのは、
人間というのはそれぞれの意識がバラバラのうちはダメで、
共同の目標に忠誠を誓うようになれば
事は成せるということだったのだと思います。
先生はこれを「異質の協力」とも表現されていました。
人は皆性格も違うし考え方も違う。
その異質なもの同士を束ねるのが、
共同の目標という錦の御旗であると。
「人の喜びをもって、我が嘉(よろこ)びとする」。
これは我が社の経営理念、つまり共同の目標です。
この言葉は私が先生と初めてお会いした際にいただいた言葉で、
これ以外にはないという思いで錦の御旗として掲げてまいりました。
そしてこの経営理念のもと、営業スタイルを180度転換し、
既存のお客様に喜んでいただくことを
一つひとつ実践していきました。
その積み重ねが次々と紹介に繋がり、
他のグループ会社が苦戦する中、
着実に業績を伸ばしていくことができたのです。
これからもこの共同の目標を決して忘れるなということを、
先生は遺言として残してくださったのだと私は思っています。
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