堀江でございます。
先日9月15日の鴨志田先生によるブログで、通訳を交えて講義をする際のポイントが説明されていました。体験に基づく有益なアドバイスに、あーなるほど、と感心いたしました。
私は独立前の20年間、米系や欧州系の企業で働いておりました。顧客の国籍はばらばらであり、彼らの交渉やプレゼンテーションを助ける場合はプロの通訳を雇うことも、私自ら通訳を務めることも多くありました。
本日は「通訳する側から見た」困った人を3通り書きたいと思います。
(1) 通訳を信頼しない人
日本人が英語の通訳を使う場合など、ある程度しゃべれるけれど念のため通訳を介したい、というときがあります。
契約交渉やビジネスプレゼンでは、完璧な通訳というのは稀なものです。誤訳、訳し漏れの他に、長ったらしい説明を意図的に簡略化することがあります。話し手が言語を多少理解している場合、「俺が今言った言葉をちゃんと訳さなかった」と不満がたまっていき、ついには通訳に怒り出すことがあります。怒鳴り散らさないまでも、明らかにイラついているとき、通訳もやる気を失います。
これがよくある、困る経験その1です。
大規模コンファレンスなどでは同通が機械的に通訳しますが、交渉事やセールスプレゼンを成功させるためには、逐語訳だけでなく感情の伝達も重要になります。ビジネスの成功のためには、通訳と話し手の間で信頼関係をもてるよう配慮が必要です。そのためには、事前に皆でカジュアルに昼食を囲む、それが無理ならコーヒーだけでも共にし、自然な会話をさせておくなど、人としての理解が有益です。
(2) 肝心な時にヒートアップして通訳をへとへとにさせる人
通訳を使い慣れている人、プレゼン慣れしている人でも、たまに起きてしまうのがこれ。
プレゼンのはじめは、通訳しやすいよう適当なペースで間あいをとって話していても、佳境を迎えると、延々と大演説を始める人。通訳のメモがついていけず、訳し漏れが起きます。制限時間があるのに、話が長い人。時間に収めるため通訳は早口になり、説得力があるプレゼンになりません。
対応策として、予めお目付け役を決めておきます。おかしくなったら、お目付け役が話し手をクールダウンさせます。プレゼンであれば、会場のうしろで手を振って合図を送ります。
(3) たとえ話を多用し、相手を混乱させる人
「これはまるで○○のようなものです」
日本人は、相手が納得していないと感じた時、たとえ話を使った説明を好むようです。
たとえ話を通訳しても、相手がきょとんとする事があります。
エドワード・ホールがいうところの「低コンテクス」文化圏では、言葉の論理性を重視します。普段の生活などの「たとえ」を話し共感させ説得しようとするのは、文化を共有しない相手には通じません。「たとえ話」そのものを理解しても、たとえ話と原論点の関係性を理解できず、話がこんがらがります。たとえ話は多用しない方が無難です。
鴨志田先生のお言葉を再度拡大引用して、「通訳を使うときは、通訳に優しく、通訳に易しく」。