こんにちは、事務局(23期生)の曽我です。皆様はライドシェアについてご存じでしょうか。先日ライドシェア関係者からお話を聞く機会があり、私は意外と知らないことが多かったため、今回のテーマにしました。
ライドシェアは個人が所有する車を他の人と共有し、インターネットやアプリを通じてドライバーと乗客を結びつける移動手段です。世界ではUber、Lyft、Grabなどのアプリが有名で、特に北米やヨーロッパで普及しています。一方、日本では法律により一般ドライバーによる有償ライドシェアはできませんでした。
しかし近年のドライバー不足を考慮し、日本でも2つのタイプのライドシェアが条件付きで許可されています。一つはタクシー会社が運行主体となった「自家用車活用事業」(日本型ライドシェア)、もう一つが、「自家用有償旅客運送」(自治体ライドシェア)と呼ばれるものです。
自家用車活用事業(日本型ライドシェア)は、道路運送法第78条第3号に基づき、タクシー事業者の管理のもとで一般ドライバーによる有償運送サービスを可能にする制度です。タクシードライバーが不足する地域や時期、時間帯の不足を補うため、2024年4月1日から実施されました。当初は東京、神奈川(京浜)、名古屋、京都の4つのエリアで開始され、料金はタクシーと同じです。
もう一つの自家用有償旅客運送(自治体ライドシェア)は、道路運送法第78条第2号に基づき、自治体、NPO、一般社団法人などが運行主体となり、公共交通が十分に提供されていない地域(交通空白地)でのみ認められています。2023年12月に規制緩和の方針が示され、導入を検討する自治体が増えています。
今回、京都府京丹後市の自治体ライドシェアの取り組みについてお話を伺いました。京丹後市は2004年に6つの町が合併してできた市で、そのうちの丹後町では2008年10月にタクシー事業者が採算悪化で撤退しました。2016年5月からは丹後町でNPOが運営するライドシェアサービス「ささえ合い交通」がUberの配車アプリを利用して運行を開始しました。サービスは年中無休で午前8時から午後8時まで利用可能です。13名の地元ドライバーが運行し料金はタクシーの約半額です。
自治体ライドシェアを導入する際の課題は、競合業界からの反対です。丹後町ではタクシー会社が自ら撤退したため、競合の問題はありませんでしたが、京丹後市内の他の地域には利用範囲が広がらないように業界からの牽制があったようです。ドライバーの確保も課題ですが、丹後町では高齢者の病院通いが主な利用シーンで需要の時間帯も分散しているため、現状では不足していないとのことです。今後は観光向けの需要が増えると予想され、土日限定の副業ドライバーの雇用も検討されているそうです。
今年4月に始まった日本型ライドシェアは、政治的な思惑やタクシー等の業界関係者の意向が重視され、利用者の視点が軽視されているように見えます。利用者からすると、現行制度ではタクシーと料金が同じで利用するメリットがあまり感じられません。一方、自治体ライドシェアは交通の便が悪い地域で困っている住民を支援するために、自治体やNPOが主導して導入を進めることができます。いくつかのハードルはありますが、社会的な意義もあり自治体やNPOによる取り組みがもっと広がってほしいと感じます。
私の親は東京の多摩地区に住んでおり、高齢で自分では運転できません。そのため病院に行く際にはタクシーを利用していますが、最近はタクシーの予約が難しくて困っています。同じような悩みを抱える人が減るように、自治体ライドシェアが多くの地域に広がることを期待しています。私も中小企業診断士として支援できる機会があればぜひ貢献したいと思います。
ちなみに、ライドシェアと話が逸れますが、大分市で交通事業者向けの補助金がありました。
https://www.city.oita.oita.jp/o171/hojyokin.html
一方、今後全面解禁の動きになると、供給過多によるタクシー会社淘汰等が心配です。利用者、供給者の間の最適解を探せれば良いと思いました。
安全性や治安面などの懸念があるのかも知れませんが、メリットの方が大きいと思います。
シェアリングエコノミーは、縮小均衡経済でQOLを下げずに国民の幸福度をあげる施策だと思うので、政府もスピード感をもって取り組んで欲しいです。