ウィーンで学ぶ

---ウィーン医科大学心臓胸部外科
留学日記とその後...---

Ross手術

2007年03月28日 | ウィーン
今日は久しぶりのRoss手術だった。

S教授はしばらく学会なのかバケーションなのかは分からないが長期休暇だったが、先週から復帰している。Ross手術は先週末から3例連続している。それだけ休暇のため手術予定が混んでいるのだろう。

それはよしとして、いつも感心するが今日もそうであった。彼は手術を全く急いでいない。どちらかと言えば、ゆっくり慎重にやっているように見える。それでも皮切から止血まで2時間とかからず終了し、去っていった。時計をみて初めて早さに気づく手術だ。

今日術中に教えてもらった要点は、肺動脈弁の剥離について。弁輪下数ミリのところを横切開し心室中隔方向に切り込んでいくが、このとき筋層が2層になっているように見える。その間に中隔枝がありそれを温存する方法。特に今日の症例では中隔枝が非常に太かった。この症例で中隔枝を切断してしまうと結構な術後心筋障害になるであろう。彼はいとも簡単にそれを温存してみせた。

Auto graftの弁不全を予防するため、吻合部の口径差が2ミリ以下となるようにしている。今日は末梢吻合に口径差があったので、上行大動脈を縫縮して吻合した。このテクニックは比較的容易だ。なかなか無いとは思うが、次回は弁輪口径差の縫縮方法を見てみたい。

またS教授は遠隔期のAIを予防するためnativeの大動脈弁輪を巧みに利用して吻合する。これは弁輪拡大予防のみならず、確実な止血方法でもあるように思える。

さらにホモグラフトの冠動脈起始部の結紮を補強することも忘れないようにと。「百聞は一見にしかず」とはこのことだろう。S教授は今日も風邪を引いているようだった。時々鼻を啜りながらの手術だった。


(写真は帰国後、David手術の練習風景)
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