さて、前回までの検討結果に基づいて数値計算をしてみましょう。
それで舞台設定はこうします。
慣性系αが左から右に速度V1で慣性系βに向かって動きます。
と同時に慣性系βが右から左に慣性系αに向かって速度V2で動きます。
この時に速度V1と速度V2を合成した相対速度Vは0.8Cとします。
それから
慣性系αでは時計Bを先頭にして時計Cが距離0.8C離れて続きます。
慣性系βでは時計Aを先頭にして時計Dが距離1.6C離れて続きます。
そうしてもちろん時計Aと時計Dは同期していて、時計Bと時計Cは同期しています。
そうして観測者は今回は4名登場させ、4つの時計のところにそれぞれ
慣性系αでは観測者①Bと観測者①C
慣性系βでは観測者②Aと観測者②D
を立てます。
次に観測者①B@慣性系αは「動いている時計」として時計Aを選択します。
同様にして観測者②A@慣性系βは「動いている時計」として時計Bを選択します。
さて観測者①Bの視点では
まずは時計Aが時計Bとすれ違います。
この時には時計Aと時計Bは同じ時刻を示していました。
その事実は観測者②Aによっても同時に確認されます。
次に時計Aは時計Cとすれ違います。
この時に観測者①Cの視点では「時計Aが時計Bとすれ違ってからここまで来るのに1秒かかった」と言う事を時計Aが時計Bとすれ違った時の時刻を基準として時計Cの時刻から計算します。
それは又観測者①Cにとって時計Aは相対速度0.8Cで距離0.8C(=時計Bと時計Cとの間の間隔)を走ったのだから1秒かかって当然、という事でもあります。
そうしてこの時に観測者②Aも同じ事実を確認します。
つまり時計Cは1秒経過を示していた、と言う事を認めます。
さてこの時、観測者①Cは時計Aの時刻を確認すると時計Aが時計Bとすれ違った時を基準として0.6秒経過したという時刻を指していました。
この事もまた観測者①Cにとっては当然の結果であります。
sqrt(1-0.8^2)=0.6 でありますから、「0.8Cで動いている慣性系βの時間(=時計Aの時間経過)が慣性系αの時間経過の60%でしか進まない。したがってこちらが1秒経過を確認したのであれば慣性系βでは0.6秒経過となる。」という特殊相対論の予測計算結果でしたから。
そうしてまたこの時に観測者②Aも同じ事実を確認します。
つまり「自分の手元にある時計Aの経過時間は0.6秒である」と言う事を観測者②Aは目視確認します。
さて以上より
ΔT(A)=0.6秒
ΔT(C-B)=1秒
従って
ΔT(A)<ΔT(C-B)
であると観測者①Cおよび観測者①Bと観測者②Aは結論を出します。
さて今度は観測者②Aの視点です。
観測者②Aの視点では時計Bが左から0.8Cでこちらに向かってきます。
それでまずは時計Bと時計Aがすれ違います。
この時には時計Aと時計Bは同じ時刻を示していました。
その事実は観測者①Bによっても同時に確認されます。
(この時の状況は観測者①Bの視点で考察した上記の場合と全く同じ事を言っています。)
それで次に時計Bは時計Dとすれ違います。
時計Aと時計Dとの間の距離は1.6Cでした。
その距離を時計Bは0.8Cで走りますから2秒かかります。
そうであれば観測者②Dは時計Dの時刻を確認すると時計Bが時計Aとすれ違った時を基準としてここまで来るのに2秒経過したという事を確認します。
そうしてまたその事実は観測者①Bによっても同時に確認されます。
つまり ΔT(D-A)=2秒 と言う事を観測者②Dと観測者①Bは確認するのです。
さてそれで問題なのはこの時に観測者①Bが自分の時計を見た時に時計Aとすれ違った時からどれほど時間が経過していたか、と言う事になります。
つまり ΔT(B) はいくつであったのか、と言う事になります。
ランダウとリフシッツの主張する所によれば「動いているのは時計B(=慣性系α)と観測者②A@慣性系βによって指定されましたから時間の進み方が60%に減速するのは時計Bである」となります。
従って「時計Dでは2秒経過でしたから時計Bでは1.2秒経過となる」がランダウとリフシッツの結論です。
つまり
ΔT(B)=1.2秒
従って
ΔT(B)<ΔT(D-A)
がランダウとリフシッツの結論となります。
さて、しかしながらこの結論を出す前に観測者①B(=観測者①C)は時計D(=時計A)が時計B(=時計C)より遅れている、という事実に同意しています。
従って時計Bが1.2秒経過でしたら時計Dは1.2秒未満を指していないといけない事になります。
逆に時計Dが2秒経過を認めるならば(=観測者②Dと観測者①Bは認めています)、時計Bは2秒をこえる秒数を指していなくてはいけないのです。
そうでなくては自分(達)が前に認めた事実を今度は否定する事になるからであります。
そうして自分が前に認めた事実を後になって否定する、と言う事は人間としてはどうかな、と思われる行為であります。
そう言う訳で当方の見る所、時計Bは 2秒÷0.6=3.3333・・・秒をさす、と言う事になります。
つまり
ΔT(B)=3.3333・・・秒
従って
ΔT(B)>ΔT(D-A)
が成立している、と言う事になります。
こうであれば観測者①Bと観測者①Cは「前に事実だ、として認めた事を今度は否定した」と観測者②Aと観測者②Dからそしられる事もありません。
万事が丸く収まり、まことにめでたい事であります。
そうして又「4人の観測者は同じ観測データを共有できた」=「客観的な事実がそこに存在した」という事になります。(注1)
さてそれで以上が「時間遅れはお互い様ではない」と言う事の証明でもあります。
注1:4人の観測者が観測し入手したデータはローレンツ不変となります。
つまり「どの慣性系からみてもその様に見るしかないもの」となります。
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