参考資料 : http://www2.physics.umd.edu/~yakovenk/teaching/Lorentz.pdf
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これで仕上げ、最後のセクションです。
『6)式を代入します。 (23)式に (16)と(17)で、最も一般的な変換の最終的な式を見つけます
x'=(x − vt)/ sqrt(1 + v ^ 2 / a)、
t' =(xv / a + t)/ sqrt(1 + v ^ 2 / a)、(24)
またはマトリックス形式
(25)・・・(訳注:pdfを参照の事)
式 (24)と(25)には、速度の2乗の次元を持つ1つの基本的なパラメーターaがあります。
(訳注:分子に速度の2乗があるので a はそれと釣り合っている必要があります。従って a は速度の2乗の次元を持つ必要があります。そうしないと(24)式での左辺と右辺との間のディメンションに不整合がおこります。)
それで a <0 の場合、次のように記述できます。
a = −c ^ 2 (26)
それで式(24)と(25)が標準のローレンツ変換になります。
x'=(x − vt)/ sqrt(1 − v ^ 2 / c ^ 2)、
t' =(− xv / c ^ 2 + t)/ sqrt(1 − v ^ 2 / c ^ 2)、 ( 27)
またはマトリックス形式
(28)・・・(訳注:pdfを参照の事)』
これでローレンツ変換の導出は完了です。
これに続いてビクターさんは以下の様に説明します。
『(27)式から確認するのは簡単です。 つまり、粒子が1つの参照フレームで速度Cで移動する場合、他の参照フレームでも同じ速度 C で移動します。つまり、x = ctの場合、x'=ct'です。
したがって、パラメータ C は不変の速度です。
マクスウェルの方程式と電磁波について知っていると、このパラメータを光の速度と特定できます。(注1)
ローレンツ変換(27)および(28)が時空間間隔
(ct')^ 2 −(x')^ 2 =(ct)^ 2 − x ^ 2 (29)
を保存していることを確認するのは簡単です。
したがって、ミンコウスキーメトリック(=ミンコウスキー計量)があります。(訳注:ミンコフスキー時空を作る、と言ってます。)
a =∞の場合、式(24)と(25)は、非相対論的なガリレイ変換を生成します。
x'= x − vt、 t' = t、
またはマトリックス形式で
(30)・・・(訳注:pdfを参照の事)
(訳注:ちなみにガリレイ変換の場合、保存されるのは時空の時刻座標の値 t です。)
そうして a> 0の場合、a=σ^2と書くことができます。
それで式 (24)と(25)は、ユークリッドの時空間を記述し、時空間の距離を保存します。
(x')^ 2 +(σt')^ 2 = x ^ 2 +(σt)^ 2
(訳注:時間軸まで含めてこの変換の場合は”ユークリッドの距離”が保存されます。したがって名前はユークリッド変換となっている模様です。注2)』
さて以上の様にして驚くべきことに「光速不変を使わずにローレンツ変換が出てくる」という事になります。
おまけにガリレイ変換までこの流れで出てきます。
そうして興味深い事に「よく分かっていない時空を対象としたユークリッド変換まで」出てきます。
まあこのユークリッド変換の事は後日にまた検討するとして、当初目的の「光速不変を使わないローレンツ変換の導出」は以上となります。
お疲れ様でした、ビクターさん。
注1:あったかもしれないもう一つの地球の歴史では、我々が暮らす宇宙の中の2つの慣性系の間をつなぐ3つの変換様式が一般解として求められる事が先行して起こり、そうして実際の宇宙がその3つの変換様式の内のどれに当てはまっているのかがMMの干渉計の実験で確かめられ、決定された、という順番になっていた可能性があります。
注2:ういき「ピタゴラスの定理」: https://archive.ph/yMqF4 :より
『例えば、直交座標系において原点と任意の点を結ぶ線分の長さは、ピタゴラスの定理に従って、その点の座標成分を2乗したものの総和の平方根として表すことができる[注 1]。このことは2次元の座標系に限らず、3次元の系やより大きな次元の系についても成り立つ。この事実から、ピタゴラスの定理を用いて任意の2点の間の距離を測ることができる。このようにして導入される距離はユークリッド距離と呼ばれる。』
但し通常「ユークリッド変換」と呼ばれるものは「空間軸のみで構成される空間内での変換について語られている」のであって、ここで登場する様な「時空の中でのユークリッド変換」については今までは考察される事はありませんでした。
ちなみに「通常のユークリッド変換と呼ばれるもの」については: 「ユークリッドの運動群」: https://archive.ph/0jVdE :を参照願います。
追記:いままで明示的に、あるいは暗示的に述べてきた事に示されている当方の世界観というものは「基準慣性系のある特殊相対論」という宣言に集約されます。
そうしてそこでは「光速不変という実験事実」は「光速不変の原理」ではなく、「時空の特性としての変換様式がローレンツ変換であった、という事実が先行しそれに起因する結果として表れる」という扱いになります。
つまり端的に言えば「ローレンツ変換が原因で光速不変が結果である」という事になります。
そうしてこの様な立ち位置を可能にしているのがここまで紹介してきた「変換は群をなす」という考え方に従ったローレンツ変換の導出方法の存在である、という事になります。
それにしても「この様な導出方法があった」というのはここにきて知る事になったのですが、それはちょうど「欠けていた最後のワンピースがここにあった」とでもいう様な状況です。
追記の2:時空内でのユークリッド変換は我々が暮らす現実の宇宙に今の所対応するものが見つかりません。
しかしながらどこかで「時空内でのユークリッド変換」が有効である、我々の宇宙とは連絡がない他の宇宙が存在しているのかもしれません。
そうであればその世界では「時空内でのユークリッド変換が有効であるもう一つの特殊相対論が成立している」という事になります。
あるいは次のように言いかえる事も出来ます。
なぜ我々の宇宙はユークリッド変換ではなくローレンツ変換を選択したのか?
まあそういう問いかけになります。
PS:相対論の事など 記事一覧
https://archive.md/Ir0CM