漢字家族BLOG版(漢字の語源)

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牛・丑・うし・ウシ(1) 鶏口牛後(その2)

2008年11月14日 05時20分47秒 | 故事成語

 [ブログ内検索][牛・丑・うし・ウシ 鶏口牛後]
 韓王は、「牛後」と言われただけで、どうしてここまで怒りを露わにしたのでしょうか。

 じつは、この「牛後」、たんに「牛のしっぽ」とか「牛の尻」とかいうなまやさしい言葉ではなく、牛の「尻の穴」、すなわち肛門をさす言葉であったからです。

 そらそうですよね。「鶏口牛後」は対句であるはずなのに、

「鶏のクチ」 ─ 「牛のしっぽ」

 では、対句になりませんよねえ。

「上の口(穴・入口)」─ 「下の后(穴・出口)」

 で対応しているのです。

 蘇秦から、

 「合従の策」を受け入られないとすれば、その時は、あなたは、牛の尻の穴(肛門)になりさがったということですよ!」

 と言われた韓王は、「肛門」などといわれては面子(メンツ)まるつぶれ、「いいやそれでも秦と同盟する」などとは決して言えなくなったのです。

 「寧為鶏口無為牛後」、痛烈な決定打だったのですね。
鶏口牛後 「寧為鶏口無為牛後」

 (注)漢字語源辞典に引用されている資料 <漢字の起源、巻15-43ページ> とは別の資料。

『漢字の起源』(加藤常賢・角川書店 1970年12月刊)より



《呉リョウ雲》の説
 后字は反人に従い、口に従ふは尾下の竅なり。戦国韓策に「寧ろ鶏口となるも牛後となるなからん」と、史記蘇秦伝に同じ。リョウ雲謂へらく、この「後」字は当に「后」に作るべし、声の誤なり。張守節云ふ、「鶏口は小なれども乃ち食を進む、牛後は大なれども乃ち糞を出す」と
 ・・・ 后は尾下の竅たるや明らかなり(呉氏遺著 巻二)



后 = 「尻口(コウコウ)」
 *「后」は後口、即ち糞孔の意
 *「司」前竅、即ち生子竅の意
  ・・・「司」の「続」の意は、継続して子を生む意から来ている。

p.456 1174「司」・1173「后」


 次回は、藤堂明保博士の解説を紹介します。


十干十二支 -- 干支(えと・かんし)


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