金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

ビトロス8世の日記24-こたつの日記「兄弟」-

2021-12-18 22:14:19 | 天空の戦い
≪ビトロス8世の日記24-こたつ日記「兄弟」-≫

-地球壊滅の危機から数年後-

小高い山すそにひろがるゆるやかな丘陵
その丘一面に広がる麦畑に日の光がたっぷり注いでいる。
小道を子供たちが歩いてきた。
ひとり、またひとりと家路につき、少年が二人残った。
麦畑のなかをときおりふざけあって歩いていたが
まもなく互いにあいさつをして分かれた。

片方の少年は足をとめて、帰っていく相手の姿が
見えなくなるまで麦の影から見つめていた。
その後、少年は畑の中をつっきって走り出した。
それはすぐさま人の目で追えないほどの速さになり、
やがてひと筋の光となった。
少年は青色のひょうと化していた。

ひょうはやがて一帯が見渡せる丘の上にたどりつき
そこに座った。そこには小さなつむじ風と雲が待っていた。
地球王子の従者である。

「王子、明日はいよいよ学校の入学式ですね」

「そうだな。これから本格的な集団生活が始まる。
 ビトロスが地球で人間に転生して生きていく第一歩だ。」

「ここは良いお友達がたくさんいるので大丈夫ですよ」

「そうだな。まず友達だな。」
(らいぞうも友達の言葉にうなづきました)

「それはそうと、星として壊滅した記憶を思い出したこと
 は心の傷になっていないのでしょうか。」

「大きなショックなので簡単にはぬぐえない。
 だが、今後は少しずつ強くなるようがんばると言ってる。
 自分の衛星ぼしのことをすごく気にしていたんだが
 その星も地球の2番目の月となり安心しているそうだ。」

「犬族の魂に星の魂が宿り、その星がさらに自分の衛星だった
 星の魂を携えていたわけですね。」

「それはそうと、今日は昼間から月がよく見える。
 お前たち、格好悪くなってないか見てくれ。
 参考意見というのは大事だからな。」

指さす方向に、昔からある月に並んで地球の2番目の月が
くっきりと浮かんで見えていた。クレーターひとつない美しい星であった。
王子が巨大隕石の残骸を衛星に作り変え、ベルーガ星の衛星の魂を宿させていた。

「王子は兄弟ができて本当にうれしそうだね。
 いままでずっとひとりぼっちだったから。」
(らいぞうが本当にうれしそうとうなづきました)

月を眺めながら、王子は不思議な声を思い出していた。
絶対絶命と思ったあの瞬間に、自分になにかが語りかけた。

「地球王子。私は〇〇様の使いの者です。」
「すべてをこちらに委ねておまかせください。修正を始めます。」

いつのまにか王子の目は深宇宙を見ていた。


◆おわり◆

(初稿: 2007-03-20 21:02:23)

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