はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

日々溺れているという状態は気持ちいいものか苦しいものか、それとも別な感情か。

2012年06月28日 17時34分42秒 | その他シリーズ
お取引先さんの旦那さんがアル中でお亡くなりになっていた。
もう去年の事だという。

アル中て死ぬんだ
当たり前の事なんだろうけど
ショックだった。

お取引先さんはとある街のブティック。
旦那さんは元々会社勤めをしていたが
ある時会社都合で退職、オーナーである奥さんのお手伝いをする事となる。
アパレル会社に勤めていた旦那さんは主に素材の染めなどをし
奥さんのお店のオリジナル小物を作りながら
子育てをして奥さんのかわりに家庭に身をそそいでいた。

僕は旦那さんに何度かお会いした事がある。
きゃしゃな身体ですごくオシャレな爽やか“お兄さん”という雰囲気だ。
クセのあるストレートな物言い、が、嫌味はなく
曲がった事が嫌いで優しい
とっても気さくな方だ。

会う度にホント色んなお話をした。
ある時はランチを食べながら奥さん抜きでメンズトークとしゃれこんだ事もあった。
話題は大概酒、そしてタバコ、教育、会社の事。
当社前婆さん社長と、旦那さんの勤めていた女性社長の性格が
話してみたら見事そっくり!という事でひじょーに盛り上がったものだ。

当時から「俺はアル中だ」と豪語していた旦那さんだった。
「俺は酒で死ぬよ。
酒は怖いよ。気をつけた方がいい」
逼迫したアル中には見えなかったので
酒に関する数々のすさまじいお話も笑い話ととらえていたのだが
まさか本当にお酒が原因でお亡くなりになられてしまうとは
酒飲みの僕にとっても、なんとも複雑な心境である。

オーナーさんが旦那さんを「これはヤバいな」と思ったきっかけはお漏らしだったという。
朝、旦那さんがマンションの外へ新聞を取りに出て帰ってきたら
ズボンがびっしょり濡れていたらしい。
旦那さん曰く、勝手に出て、出た事にも気付かなかったそうだ。
これはアルコールで脳が殺られ伝達に障害が現れた証拠。
お漏らしをきっかけに、旦那さんの身体は瞬く間に壊れていったようだ。
直ぐに立てなくなり、おしめと車椅子の生活となる。

そしてお酒とタバコの量が増していったという。
1日に焼酎を一升瓶3本以上毎日毎日欠かす事なく軽く空にしたそうだ。
とにかくずっと飲んでいて、タバコもずっと吸っていたらしい。
ある日いよいよ瞳孔が開きっぱになってしまい
病院につれていったらしいのだが
施した点滴を直ぐに抜いてしまい
「この白衣のキチガイはげちゃびんインチキお茶の水博士野郎が!
こんな糞下らねー液体を俺の体内に流し入れやがって!
お前俺を殺す気だろう!」
と、とにかく毒舌文句で暴れまくったから
その病院で受け入れ拒否を食らったのだという。
違う病院でも同じ事をし脱走してしまったそうだ。
だからもう本人の意思をくみ自宅で療養という事にしたらしい。
オーナーさん(奥さん)と
夕方6時までは何があっても飲まない
という約束をして。

その約束は亡くなるまでずっと守られ
そして家族の前では
酔っ払っても、ただの1度たりとも暴れたりはしなかったそうだ。

旦那さんは亡くなる前までいつもと変わらず元気
(という表現はアル中患者にふさわしいか分からんが)だったという。
当時、オーナーさんのお父さんも癌で危篤状態
病院から呼び出しがあり
オーナーさんは急遽急いでかけつけなければならなくなった。

その時旦那さんはテレビで高校野球を観戦。
“お得意の”毒舌でテレビの中の某高校の監督をボロクソに罵っていたらしい。
戻りは明日になりそうだったので
1日分のお酒(大量)とタバコとお食事を用意。
オーナーさんが出かける時、旦那さんがオーナーさんに
「なんだお前!本当に行く気か!
お前が行ってる間に俺が死んじまったらどうすんだ!」
とふざけてみせたそうだ。

帰って来たら、本当に死んでしまっていた。
死因は心不全。
その日は旦那さんの誕生日の翌日。
ちょうど50歳だったそうだ。

オーナーのお父さんも旦那さんが亡くなる前日に息をひきとっていたらしい。
オーナーさんは、お父さんと旦那さん2人を一気に失ってしまった。

「俺はじじいより先には絶対死なねー!
俺が安らかに死ねねーからじじい早く死んでくれ!」
「なにを!このアル中が!
バカなお前のせいで娘が心配でオチオチ死んでもいられんわ!」
と、互いに励ましあって(笑)いたそうで
「結局、私の事が心配で
父があの人を連れて逝っちゃったのかもしれないわね」
とおっしゃっておられた。

最近しばらく電話とカタログのやり取りばかりで
お店にお伺いする事が無かったから
久々に訪ねて行ったらそんな事になっており
オーナーさんは膨大な量の重たいノンフィクションを
笑顔で僕に語ってくださり
何だか色々と考える機会を与えて下さったような、そんな気がした。

「ウソみたいに突然ポックリいなくなっちゃったから
未だにこの現実を受け入れられずにいる」

とにかく壮絶な日々だったそうで
壮絶な程、壮絶な分だけ
旦那さんを愛してやまなかったとのこと。
旦那さん、すごくかわいらしい人間だったもんなぁ。

アルコールは国が認めた麻薬みたいなものだと昔誰かが言っていた。
僕の場合中学生から飲みはじめ(本当はダメよ)
飲み過ぎてヤバい時期を通り
すっかり弱くなった今に至る。
お酒は度が過ぎて、もっと過ぎて、更に過ぎて、それを越えると
自分はもちろん、周囲を悲しませる結果をもたらす事がある。
オーナーさんのお話を聞けば聞く程
僕のお爺ちゃんを思い出して仕方なかった。
僕のお爺ちゃんはみんなから愛されまくったアル中で
アル中をつらぬいて死んでいった荒くれものだった。
本人はすさまじい生き方をし
結果同時にそれは周りの人たちの人生もすさまじくしてしまった。

お酒は小悪魔だ。
邪悪な天使とも言えよう。

オーナーさんの唯一の救いは
出かける前に用意していったお酒が半分残っていた事だという。
「大好きなお酒が尽きてしまい
苦しみながら死んだんじゃなかったから良かったわ」と
僕に、泣きながら笑ってそう語るのだった。

めけめけ~。

写真。売店にて。

※今回の記事はオーナーさんの許可を得て書かせていただいています。