朝からバタバタバタ。。。そんな中でも、野村誠の提案で、マルガサリでジャワガムランの15分くらいある伝統曲を1曲演奏し、演奏できないひとは、聴いた。これはたぶん、瞑想、黙想のようなものであったと思う。お互いの音が聴きにくくなっているのではないか、ということで、一度心を正した、という感じ。これ、あってよかった。マルガサリはそもそも、ジャワガムランのグループだ。とにかく、音楽がいいことが絶対大切。心の、透明度が増す。
で、そのあとはまたバタバタバタ。。。kananaga、とっくに開場している、開演前15分の段階で、衣装も着てなきゃ、メイクもしてない。ここまで余裕ないの初めてかもしれない。あうあうあ~~。でも、間に合ったりする。kananaga、あんた、すげえな。
今日の本番の内容を書きとめたいが、5年かけて作ってきて、6年目にして行った4時間に渡る全幕上演を、どーやっても書ききれない。言葉にすることができない情報のほうが、たぶん100倍くらい多いだろうしなあ。しかも、とても客観的には書けないので、kananagaの主観、しかもそれすらぼろぼろこぼれ落ちる状態になるけど、でも、少し書き留めてみる。
第1場は、音楽はしょうぎ作曲が基盤となっている。抽象的な音楽と舞踊による表現が中心で、桃太郎が生まれるまで。じじいたちの寸劇から始まり、竹をコンコンたたくアンサンブル、それから一気に大音量の桃太郎のテーマ。そして、やまでらに、、、の歌からこっしんはな、という意味のわからないつぶやきとともに夜はふけ、、、、みよ猫が夜に現れ、朝になる。ばばあが川に洗濯に行くと、何故だか急に眠くなり、4人の桃の精登場。kananagaは実はこの1場がなかなか大変だったのだ、桃の精の踊りがあったので。でも、この本番を迎えるちょっと前に、踊り全体を見てくれている佐久間さんと、4人とで、なんて言うか、あっ、そうか、という感じがあり、本番には迷いなく踊ることができた。そして、どうしたらいいのか、言葉にならない部分の感覚が、やっと少しわかった。この場面に関しては、スタートラインに、やっと立てた感じだ。
桃の精の踊りの終わりのほうは、4人で、ばかでかいピンクの布を運んでくる。それは川のようになり、山のようになり、その前というか上で、イーウィン扮する桃の精の女王のような存在が踊る。静かにピンクの布の中に入っていき、桃太郎誕生となる。最後、8人で布を持ち上げて空気を入れてすぐ端をふさいで、桃の形を作った。これ、前日に初めてやってみたことだけど、なかなかうまくいった!そして、桃の中からあてていた光が消えて、後ろのタペストリーが、なんとも美しく浮き上がる。
第2場の音楽は、声と身体を中心に創作されている。お話は、村の平和な風景と、そこに乱入して村を荒らしまくる鬼が花子を連れ去るまで。さて、大変だったのは、田植えの儀。村の女性ばっかりが、田植え。1列になって、両端から抜けて行く。列の中心は、猿役でもある西さん。今日、下がっていく歩幅がめちゃくちゃ狭い。。。おーい!助けてー!!腰がくだける~~~!!!死ぬ~~~。。。そのあと、蛙が鳴き、雨が降り、雷がなり、稲刈りをして、舞扇を持っての盆踊り。そこへ鬼が乱入。kananaga、死体役。実はkananaga、死体役をするのが、がかなり好き。堪能。
ここで休憩。さっき買いためておいたアイスを食って、リフレッシュ。楽屋では田植えのことで大騒ぎ。kananaga「西さん~~~!歩幅狭いよ~!あ~、しんどかった!」。西さん「だって、多めに下がると、横のひとがついてきてくれないんで、列がくずれるとおもって~~!それに真さんのたいこのテンポが遅いから~~~」。kananaga「そんなもん、みんな西さんを基準に合わせてやってんだから、西さんがさがったら、次であわせますよ!だいだい、西さんしかあの場をどうにもできないんですよ~~!」。西さん「そんな~、私がみんな悪いのか~~~」。と、笑顔でナチュラルハイ状態。ちなみに、あの場面がのびて一番しんどいのはもちろん、中央にいる西さん当人である。腰、大丈夫?
客席のDATのテープをかえにいったら、石川から観にきてくれていたゴンちゃんが話しかけてくれた。「すっごい、いいね~!!」と、すでに大興奮!ひと安心&超嬉しい。でもね、ゴンちゃん、ちっちっちっ、喜ぶのはまだ早いぜ、まだまだこれからなのよ~~~。
第3場は喜劇。唯一、とっても芝居っぽい場面だ。世界の様々な音楽様式をガムランにアダプテーションさせた音楽が盛り込まれている。犬も猿も雉もいい感じ。みんな、よくこんだけ演技するなあ。桃太郎の一団が出会う4つの困難、たまご大王の誘惑、空手家のしごき、哲学者に鬼が島へ行くことの正当性の説明を求められる、言葉の通じない舟の番人に、なんとか頼んで舟にのらせてもらう(kananagaは、空手家)。なんとか舟にのった桃太郎一団は、鬼が島を目指す。ラハルジョさんのワヤン持っての踊りも、迫力。それから、一気に暗くなり、先程までのコミカルな空気は消えうせる。このあたりの音楽、かなり恐かった。極めつけに、音楽がやむのと同時に、暗がりに懐中電灯の明かりで、たくさんの鬼の顔(面)が浮かび上がり、不吉な空気をかもし出す。
もう一回、休憩。またアイス食う。いよいよ、4場、そして5場である。
第4場は、ダンスで、フルガムランでの即興演奏。ダンスも、ほぼ即興。野村誠は音楽監修で、昨日もずっと外で見え方をチェックしてたので、本番にほぼいきなり加わることとなった。音楽家野村誠が入ったこと及び、客観視してた野村誠の主観が加わり、しかもいきなり入ったことで、全体をとおして、音楽が、リズムがよくなったというか、ばりっとしたというか、締まった。第4場、ここはとりわけ、
野村誠の日記をぜひご参照ください。
4場を観て、あるいは演って、で、思わざるをえないことって、たくさんある、いや、ひょっとして、ひとつなのかもしれない。
なんで戦わなきゃいけないのか、なんて問うことのできる状態ではないものに、犬、猿、雉たちも巻き込まれていく。途中、「いちぽこ、にぽこ、さんぽこ、しぽこ、、、」の掛け声にとりこまれ、演奏者までもが全員、鬼に取り込まれる。桃太郎は気が狂いそうになる。なんとか犬猿雉の目をさまさせて、再び戦いとなり、そして犬猿雉は、死ぬ。犬は、鬼が島に行ってロックスターになりたかっただけ、猿は、ビジネスチャンスが欲しかっただけ、雉は、鬼が島の温泉で足の傷を治し、お肌ぴかぴかになりたかっただけ。でも、みんな、死ぬ。そして、鬼は勢いあまって、鬼の手下も全員殺してしまう。残ったのは鬼と桃太郎だけ。泣き叫ぶ桃太郎。
ここからが、いつもよりもすごく長かった。桃太郎は、なかなか死なない。激しい戦い、というわけではなかった。鬼と桃太郎は互いを見て全く動かない、という時間がたくさんあった。なかなか殺されない桃太郎、なかなかとどめをさせない鬼。演奏者である野村誠や中川真までもが、戦いをしかける、桃太郎と鬼の両方に。ひょっとして、桃太郎は死なないのではなかろうか、と思うくらいに、死ななかった。でも、最後は、相当無惨に、死んだ。kananagaは、4場の中盤、泣いていた。終わり頃は、泣いていなかった。
ちなみに、4場の最初、佐久間さんとイーウィンの息子のブナちゃんも鬼として登場したが、戦いが激しくなる頃には、ブナちゃんのおばあちゃんによるストップが入り、舞台脇にいた。まさに桃太郎が息絶えようとしてるころ、舞台に出たくて泣き叫ぶブナちゃんの声が響いていた。フィクションであるはずの「桃太郎」なのに、短いスパンで現実とクロスフェードするようなところが色々ある。それはお笑いの場面などにも見られる。ブナちゃんの存在も、そうしたもののひとつだと思う。ちなみに、以前リハを観にきてくれた坂井くんは、ブナちゃんが入ると(いい意味で)すごく、わからない!と言っていた。あの存在は一体なんなんだ、と。佐久間さんはお父さんであり、鬼であり、で、ブナちゃんは一体なんなのか、なんとも言えない不思議な存在が、入り込んだ感じになる。ブナちゃんは2歳半なので、本番にもリハのときのように入ってくるかどうかは、全くの未知数ではあった。なんにせよ、そういったことまでも含め、とりわけこの4場は、やるたびに違うものを見ることになるだろう。だって、即興だ。
第5場は、鬼が、とても大きな袋をひきずって、村へ向かっていく。4場の激しい音楽をクールダウンさせるかのような、やわらかめのバチによる極小のトレモロ。ときに、ばかでかい一発が鳴る。哲学者、空手家、たまご大王が、同時に、別の場所で、鬼の袋の中身について推測し、語る。その後しばらくして、鬼はふとたちどまり、袋の口を開ける。そこからでてきたものは、音として立ち現れる。それがひとつくらいのものに集約されて、そして、歌が出る。ここは、理屈とか言葉でさっぱり説明できない。
エンディング、というかカーテンコールに、順番にキャストがでていって、それぞれのテーマソングが鳴った。打ち上げで、(なぜか毎回)舞台監督をしてくれていたバンスリ奏者のHIROSさんが、「なんで皆あのカーテンコールのときとか泣かないわけ?感極まったりしないの?」と言っていた。ほんとだ、確かにあのときは、誰も泣いてなかった。本番最中は、それぞれ時々泣いてたみたいなんだけど。kananaga的には、あのときはまだ泣けるような状態ではなかったのだろう、と思った。というのは、この日記を書いたりしてる翌日あたりに、かなり切なくなってきたからだ。
本番終わってから、何人かの知り合いや、初めて会うお客さんに、たくさん「いや~、よかった!!」と言ってもらった。あ~、よかった、ほんと、嬉しい!ありがとうございます!。ほんとに、シンプルに、よかったと思ってくれている、という感じだった。みんな、それ以外の具体的な言葉があまりでてこない状態のようだ。長かったし、色々あったし。そういえば、HIROSさんが言っていたな、4場が終わると、3場の頃がまるで平安時代だったように感じる、って。そんな感じなのかな。日にちを置いて、あらためて感想を聞かせてもらえると、また嬉しい。あ、あと、4時間近くあった、って感じが全然しなかった、飽きなかった、とも言ってもらえた。はっきり言って、やってるこちらにとっても、全然長く感じられなかった。
お友達の中村未来子さんからの嬉しいメッセージ、許可を得てコピペ。みくちゃんの言葉には、いつも透明感を感じる。(みくちゃんの日記も、この日記の終わりのほうからとべます。)
「伝えていただきたいです。
カーテンコールのみなさんはもちろん美しかったです。
すばらしかったよ。
途中、田植えで寝そうになったよ、はははは。
みんな、、、失敗も迷いも、興奮もタイミングも混沌も、
ある意味完璧だったんだね、きっと。
ワークショップの成果というものは、たいてい、
鈍感な人(私)には、伝わりにくいと思う。
でも、桃太郎は、力強く、感動しました。
全ての場によって、人間くさい宇宙を感じました。
かなちゃんじゃない人が、かなちゃんにみえた時があったよ、
と思ってたら、
かなちゃんが演技指導してたのね、ふふふ。
かなちゃん、やっぱりすごいね。
リサイタルしなきゃね。
演技だって踊りだってできちゃうんだから。
スーパーなウーマンだね。
未来子」
ホールでの打ち上げにゆっくり残ってくれたゴンちゃんが、「1場の踊り、よかったよ」と言って、桃をゆらゆら運ぶ仕草をしてくれた。ここを具体的によかったと言ってもらえたことは、kananaga、かなり勇気をもらえた。うまく言えないけれど、小さい歩幅でも、前に行こう、という気持ちを、もっともらった気がした。ゴンちゃんも、またゆっくり感想聞かせてね。
桃太郎」全幕上演にお越しくださいました皆さん、本当にありがとうございました。
来たかったのに来られず、いっぱい応援してくださっていた皆さんも、とってもどうもありがとうございました。
「桃太郎」が今後再演されるかどうかは、わかりません。非常に大掛かりであるので、なかなか難しいかも。ただ、たぶんこの公演をご覧になった方に言ったら絶対信じられないような低予算で、「桃太郎」は実現されました(そーとーきつかったと思うけど)。もし、やりたいけど、予算的に難しいよなあ、というイメージをもたれているホール関係などの方がいらっしゃいましたら、まずはぜひいっぺん、マルガサリまでご相談くださいな。あ、それと、来年インドネシア公演をしたい!という話が出て、これからすぐ、その実現に向けて動き出すことになりそうです。
ああ、書ききれてない、すごく書ききれてない感じがする。たぶん、これもまた、ゆっくり沁みてくるんだろう。「桃太郎」がひとくぎりついて、たぶん、ここまでのことをやりきって、今、kananagaは、新しいことがどんどん始まる感じがしている(実際始まっていて、て、どんどんやらないといけない)。またひとつ、悲しくなるくらい愛しいものが形を成して、それも続くんだろうけれど、それぞれ、更にその先へ向かうことになる。kananagaは今まだたぶん、思春期くらいのところにいる。当分、走り続けることになるよ、転んだりもするかもしれないよ、kananagaの身体、よろしく頼むね。
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「桃太郎」について書いてある日記など、ここ数日で、見つけては足していきます。
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◆お客さん
こぐれのぶおさんの日記(トラックバックありがとうございます)
こぐれのぶおさんの翌日の日記
井手上春香さんの日記(トラックバックありがとうございます!)
ゆき丸のきのこ日記
かえるさんのラジオ沼:337桃太郎とガムラン(その1)
かえるさんのラジオ沼:338 桃太郎とガムラン(その2)
かえるさんの日記The Beach(ラジオ沼にとべます)
梵玉さんの日記
◆出演者・関係者
野村誠(音楽監修&演奏)の日記
mixi内で見られるもの
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mikukoさんの日記
Rinkoさんの日記
かえるさんの日記が読めたりラジオ:沼に飛べる、mixi内のページ
チャッピーさんの日記
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佐久間新(鬼/牛/じじいの友達)の日記
今橋朋子(花子)の日記
魚谷尚代(桃太郎)の日記(今橋朋子の日記内)
西真奈美(猿/桃の精/美術)の日記(まだ続きがあるらしい)
HIROSの日記(舞台監督/実は、日本におけるインドの笛の第一人者)
西田ユリ(演奏/かつての団子の精)の日記