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時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

ロンサム・ウェスト

2014-05-27 | 舞台/役者
物語は
堤真一演ずるコールマン(兄)と
瑛太演ずるヴァレン(弟)のコナー兄弟
北村有起哉演ずるウェルシュ神父
木下あかり演ずるガーリーンと言う
4人だけが登場する
お話でございます

アイルランドの西の涯の田舎村
リーナンに住むコナー兄弟が
父親の葬儀を終えて
ウェルシュ神父と共に家に戻ってくる
場面から始まりました
このコナー兄弟と言うのが
共に独身
何故
一緒に暮らしているのか
いや
暮らせるのか
と思うくらい仲が悪い

一年365日
一日24時間
寝ている以外は
ず~っと喧嘩しております
互いの言葉の端を突いては
火に油を注ぐかの如く
互いに一歩も引かない
とは言え
心底
憎しみ合っていると言う風でもない
他人には言えない
秘密を共有しており
それが原因で
互いの存在を
完全に拒絶仕切れないまま
共同生活を続けている風

当然
この不可思議な
兄弟の共同生活は
他人には理解できない
特に
幸か不幸か
この地に派遣され
村の生活や
人々になじめないウェルシュ神父には
頭が痛い

父親の死に対し
平然としている兄弟
肉親殺しを
平然と犯した人間がいるという噂
自ら命を絶とうとする村人
村の殺伐とした現状に
何もできない己の無力さを嘆き
事あるごとに
酒を手にするようになり
今ではすっかりアル中気味

そんな救いがたい男性たちに対し
ガーリーンは
酒の密売で稼ぐしっかり者の17歳
可愛らしい容姿にも関わらず
その言動は
がさつ且つあばずれ風
何かと気弱な
ウェルシュ神父をからかったり
つっかかったりしながら
始終
ウェルシュ神父にまとわりついている

やがて
この最果ての地で
ウェルシュ神父は
ある決意を秘めた手紙をガーリーンに託す
コナー兄弟のもとへと届けられた
ウェルシュ神父の決意は
このどうしようもないコナー兄弟の胸に届くのだろうか…

     

まさに
ブラックユーモア!?
戯曲の原作者である
マーティン・マクドナーが
人間のもつ
ダークな精神を濃縮し
コナー兄弟の会話を介して
観客にブチかます

ダークと言っても
純粋なダーク
(と言う表現が正しいのか分りませんが)
だけじゃ~ない
嫌悪感を抱きつつ
何故か
コナー兄弟の発する
剥き出しの言葉に
ユーモアやら
滑稽さを感じるのであります
時に
二人が正直な善人なのではないかと
錯覚してしまうのであります

希望も救いもない
‘生きる屍’と化している
村人の中で
コナー兄弟だけが
‘生’に対して執着しているように
思われます

そして
ウェルシュ神父ですが
彼は
己の存在を無に帰すことで
コナー兄弟を
救済しようとしました
しかし
その一方で
ただ存在するだけで
その意義を果たしていたことに
(ここではガーリーンにとってです)
何故気付けなかったのか…

ガーリーンの
神父に対する
敬愛(恋愛感情かもしれません)感情は
唐突にその対象を失い
谷底に突き落とされるほどの
衝撃を受けることになる

ガーリーンウェルシュ神父コナー兄弟

報われない
片思い的構図で構成された
不条理な展開に
身を委ねることにより
小生は
生きることの
悲劇性と喜劇性
その両面を
痛感させられたのでございます

これでもか~
とばかりに
詰め込んだ
A5ランクの
霜降り牛のステーキが
口の中で
芳醇な味と香りを残しつつ
徐々に
融けていくかの如く

余韻の残る
何とも
不可思議な舞台でございました