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新米の季節、暴落概算価格の各地で

2014年11月15日 | 農業
「農業者は困惑しているが、その陰で、にんまりと、ほくそ笑んでいる人たちがいる。米価の引き下げを主張している一部の評論家と、それに惑わされている政府と一部の政治家である。その背後に、極端な自由貿易を主張する財界がある。米価は下がったのではなく、彼らが下げたのである。彼らは、米価を下げ、農業者を追い出し、農外資本で米を作り、コストを下げて、国際競争に立ち向かう、という。そうすれば、TPPなどの自由貿易体制に耐えられる、と考えている。そして、この考えを、ひた隠しにかくしている。 しかし、そんなことが出来る筈がない。農協に結集している農業者は、追い出されるほど非力ではないし、資本では米作りはできない」。農業協同組合新聞 2014.10.5

これは立正大学経済学部の森島賢教授が、JAの農業協同組合新聞(2014.10.5)のコラム「正義派の農政論」での発言だ。概算金暴落の中で適宜な記事なので引用した。

私的機関の「産業競争力会議」、経済評論家の佐高信氏はそのものズバリ「経済格差拡大会議」は、米の値段を60k9,000円を目標とする案を今春発表した。今年の米の概算金暴落は、この格差拡大会議の思惑に沿ったものとなった。生産者も消費者もいない私的機関の会議が、当然かのように提言等と傲慢な振る舞いに目を覆いたくなる。森島教授の指摘どおり、「にんまりほくそ笑んでいる」輩(やから)は農業者を追い出し、農外資本、株式会社化で食糧の支配を現実化しつつある。

農水省や穀物データバンク、米の先物市場関係者やマスコミを使い、TPP交渉で米国産をはじめとする外米の輸入を増大させることで利益を得ようとする、日米の独占大資本がかかわった米価暴落の仕掛けが背後に動いている。米の生産量が大幅に増えたわけではない。前回ブログで表したように作況指数のとり方に問題がある。消費量に大きく変動は示されてはいない。公益社団法人「米穀安定供給確保支援機構」の調査で明らだ。農水省は平成24年度からふるい目別で10a当たり収量及び収穫量を公表している。それによれば平成26年度はふるい目1.7ミリで10a536k、収穫量843.8トン。ほとんどの農家の使用ふるい目1.9ミリで10a499k、収穫量は785.6万トンと公表され10aで37k、収穫量で58.2万トンの差になっている。

農水省やマスコミが先頭に立って「コメ過剰」を煽り、商社や大不透明な経済情勢の中で大手米卸が買い叩きに走っている。朝日新聞は9月14日に一面記事に「農協が農家から買い取る新米の価格は、昨年より1割以上も下がった。高齢化と人口減でコメを食べる量も人も減っていく時代、13年産米が多く余っていることも響く」。と実態を調査もせず報道した。米の消費が減ってきたのは外食産業だった。消耗戦を繰り広げ、シュア拡大を測るデフレ経済を象徴する外食産業から客層が離れたからだ。家庭消費がそれほど減っていないことは前々回のブログで紹介した。JA組織は生産を抑えていながら、これらの陰謀になすすべがなかったのではないのか。

多くの農業者を代弁していると思われていたJA組織もなめられたものだ。前回ブログでもJA組織の崩壊の序曲と示唆したが、森島教授も指摘している。農業者はそれほど非力ではないはずだが、JA組織は大型合併で多くの組合員から遠い組織になった。今回の暴落概算金でさらに組合員離れが加速されそうだ。JA組織は本来の組合原則を再確認し、農家組合員と一体でこの矛盾からの脱却を提案して欲しいものだ。

今年の新米が出回った今回9月末から11月半ばまで、26年産米概算価格暴落の中で各地の道の駅、農産物直売所を回ってみた。道の駅や直売所は農家自ら値段を決めて販売している。


宮城 あ・ら・伊達な道の駅

宮城大崎市のあ・ら・伊達な道の駅では30K玄米価格税共ササニシキ、ひとめぼれが7980円。スッキリと8000円でも良いはずなのに7000円代を強調する値で割安感をねらったのか。昨年は30k10000円だった。


岩手 奥州市 産直

イオンの産直でひとめぼれ、コシヒカリ30k9800円。写真つきで栽培情報があった。


秋田 道の駅「雁の里せんなん」

「雁の里せんなん」は30k玄米8500と9000円が離れて並べられていた。あきたこまちの主要な生産地にとしての自己主張を強く思えた。昨年とほとんど変わらない。 


宮城県加美町やくらい土産センター

ひとめぼれ30k7600円 つや姫8500円、つや姫は山形の品種。宮城にも種子が回っていた。宮城の「ひとめぼれ」との価格差はなにから来るのだろうか。日本の農民という範疇から見れば米の品種を一つ県に限定するのも理解に苦しむ。かつて「あきたこまち」という品種名に違和感を感じていた。あれから30年心配をよそに、現在「あきたこまち」は九州、四国等全国に広まり作付されている。


大仙市 道の駅なかせん こめこめプラザ

さくらファームは特別栽培米として30k11000円、同じくSさんの減農薬、減化学肥料栽培も11000円の価格で並んでいた。肥料に昆布、カニ殻、菜種粕等の有機資材に農減薬栽培で農薬成分回数は9回と表示されていた。

以下の道の駅等では玄米30k袋は見れれなかった。

新潟 村上 イヨボヤ会館前 岩船米

岩船米コシヒカリ5㌔が2370円、特別栽培米コシヒカリが1㌔720円、5㌔3250円が注目される。


山形 小国道の駅「白い森おぐに」

あきたこまち、はえぬき3kが1400円、つや姫2kが1000円。持ちやすく1000円前後の価格を強調しているかに見える陳列と価格表示が印象に残る。


横手市 道の駅十文字「まめでらが~」

10k3500~3800円 5k1800円 陳列に工夫が欲しい。

このように比較してみると地域性が見られる。かつての米の売買は一升単位。5k、10k単位になってすでに30年以上になるのだろうか。かつて米の生産者が店頭で小売りの米を見ることは少なかった。生産者が都会の消費地に行くことなどほとんどなかった。平成7年11月1日食糧庁は新食糧法を施行、米流通自由化を開始して劇的な変化が生まれてきた。各地に道の駅、農産物直売所ができ、生産者が直接値段をつけるようになり30Kの玄米の側で5k、10k単位の包装から1K~5kへと変わってきている。今回の山形 小国の道の駅の3k包装を重点にしているように見えた。

各地の道の駅中心の玄米30K7980円から11000円で概算価格の約二倍の価格設定。農家は概算価格では実態価格に即していないとみているし、自ら設定した価格こそ再生産価格としている現れだ。それでも全体としては昨年より10~15%安い価格になるようだ。4月の消費税アップは結果として便乗値上げを誘発。前年対比で安い新米価格が目立つようになった。

驕り高く不遜な政権は突如大義なき総選挙に突入した。さらに複雑な世相へと向かいつつある。未来に向かうためにますます庶民はサイフの紐を締めることになる。

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