鏡海亭 Kagami-Tei  ネット小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

・画像生成AIのHolara、DALL-E3と合作しています。

・第58話「千古の商都とレマリアの道」(その5・完)更新! 2024/06/24

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第58)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

アルフェリオンのリアル?

連載小説『アルフェリオン』、こんな荒唐無稽を絵に描いたような小説(笑)にリアルもへったくれもあるのか、と思った方もおられると思います。その認識は基本的には正しいですが、でもこの小説、ときどき変なところで妙にリアルなんです。

たとえば、この物語の場合、母国語の違うキャラ同士で「会話が通じない」場面がしばしば出てきます。現実世界ならいざ知らず、創作の世界では、これは結構とんでもないことですよね。小説、コミック、アニメ、映画その他、およそ創作の世界では、異なる民族同士どころか、下手をすると宇宙人や異世界人とも最初から意思疎通ができてしまうことが多いです(笑)。他の部分でどんなにリアルに作り込まれている作品でも、この部分は実はこれまで盲点だったのかもしれません。

まぁ、ファンタジー作品であれば、人間とエルフのような、異種族の間では共通語や通訳等を使わないと会話できないこともあったりしますが…。そのような「共通語」というものが存在しているという設定によって、異なる民族や種族のキャラ同士に会話が成り立つことを正当化している作品もあるかと思います。ところが、この作品の舞台であるイリュシオーネには「共通語」はありません。いくつかの大国の言葉は外国でも「比較的」よく通用するというだけです。これには、英語一辺倒の現状を揶揄する意味も実はあったりして…。

でも、『アルフェリオン』の中で、母国語の違うキャラ同士の会話に難があるという描写は、単に設定マニア的なものではなく、物語の展開や描写に関連してきちんと意味のあるものになってるんです。

たとえば、ナッソス家のよこした飛空艇に乗って、ルキアン、ランディ、シソーラが城に向かう場面。あそこで、ランディとシソーラがオーリウム語ではなくタロス語で会話をしていました。あれは確かに、あの風来坊のランディが、元タロス王国出身の亡命貴族シソーラに気を使ってわざわざタロス語を使ったという点を示したかったシーンでもあります。しかしそれ以上に、敵方の兵に会話の中身を悟られないよう、あえてランディはオーリウム語ではなくタロス語で喋ったのです。部屋の扉のところで監視していたナッソス家の兵士には、タロス語は分かりませんから。クレドールのクルーの中でもルティーニと並んで語学の達人だというランディのキャラ設定が生きた場面です。

また、その少し前、ネレイの内陸港でも言葉に関して印象的なシーンがありました。いつもぶっきらぼうな話し方のサモン・シドー。でもそれは、彼の性格ゆえであると同時に、オーリウム語があまり得意でないせいでもあるんです。そんなサモンがクレドールに同乗して戦うことになった際、ミルファーン出身のウォーダンが、ルティーニに彼を紹介していました。ここで、クレドールきってのインテリ(?)のルティーニが、ミルファーン語を使ってサモンに話しかけ、あのサモンも普段よりも少し流暢に話すという場面がありました。

ちなみにミルファーン語といえば、ルキアンがシェフィーアと初めて話した場面もそうでした。ルキアンに微妙な好意を示したシェフィーアに対し、彼女の言葉を十分には理解できなかったルキアンが問い直した場面。そこでシェフィーアさんが、こういうのは説明すると無粋になるし、オーリウム語では何といってよいのか分からない(何と訳したらよいのか分からない)、とやんわりと断ったシーンは、結構萌えます(^^;)。

たぶん、豪快なシェフィーアさんは、ルキアンのことをかなり好きだぞと、母国語で大声で独り言を言った(笑)のでしょう。が、そのときの彼女の気持ちは、ルキアンを単に気に入ったという以上のものであり、とはいえ男としてのルキアンを好きになったというわけでもないという、よく分からない次元なんでしょう。そのニュアンスを、外国人であるシェフィーアがオーリウム語で言い表すのは簡単ではありません。

最後に、これは以上の例とはちょっと違いますが、現世界人のアレスと旧世界人のイリスの間でも、最初は会話は成立しませんでした。身振り手振りでしたね。こういうときには、無邪気な愛の力(苦笑)でなぜか意思疎通しあってしまうのが普通の創作物の常なのかもしれませんが…アルフェリオンはひと味違います(^^;)。そのあと、何と、アレスとイリスが「筆談」している場面が出てきます。オーリウム語と、旧世界のうち現在のオーリウムに当たる地域の言葉とは、「話し言葉」としては全然違っても「書き言葉」としては文法的にあまり変わっていないということが反映されたシーンでした。

以上、色々と書いて参りましたが…。『アルフェリオン』は、「ことば」の力をとても大事にした物語です。もともとファンタジー世界では、一定の言葉をつなげると魔法が使えてしまうほど(笑。呪文)、言葉というものは力を持っています。言霊? そういう言葉の重さと、その背景にある文化を大事にしたいな、と思って書いているのでありました。

以上
コメント ( 0 ) | Trackback ( )