「土を喰らう十二ヵ月」 中江裕司監督 ○ ☆☆
水上勉のエッセイ集「土を喰う日々 わが精進料理十二ヶ月」を原案に監督自身のオリジナル作品として、白馬を舞台に実写映画化しました。
小説家のツトム(沢田研二)は雪を被った山脈がみえる古民家に暮らし畑を耕し山菜を取り子どもの頃育った禅宗の寺で教えられたように丁寧に精進料理を作り来客に振る舞っています。亡き妻の部下で編集者の真知子(松たか子)は原稿を催促しがてら時々訪れます。近くには少し偏屈な妻の母親チエ(奈良岡朋子)が小さな小屋に一人で暮らしていました。
平穏な日々がチエの突然の死や自身の心臓発作が続いて起きたことで揺らいでいくのでした。
風景や食材、料理の過程、完成した料理(担当 土井善晴)など味噌や梅干しを含めすべての映像が美しい。主役の沢田がそれに負けず魅力的です。(☆)特に室内に冷蔵庫もなく、プラスティック素材のものや化学物質でできたものが一切目に入らないという生活が大変心地よいです。米びつだけちょっと違和感がありましたが。料理を盛り付ける器がそれぞれ個性的でさすが「ふくら舎協力」です。
沢の水を贅沢に使える生活が羨ましいです。しばらくは「皮も根っこも食べるツトム君料理」が我が家で流行りそうです。
犬が出しゃばらず、さりげない演技だったことも良かったです。
ちなみに大豆の種まきと山鳩の関係ですが、大豆は苗にしてから植えるのが百姓の常識です。あの山鳩はよく訓練されていて可愛かったけど。
今日一日を大切に生きよう、と思わせてくれる秀作です。(☆)
タバコは、なし。無煙でした。