「望郷」 菊池健雄監督 △
湊かなえの短編小説集「望郷」の中の「夢の国」と「光の航路」の2作が原作です。
瀬戸内の小さな島の格式ある「お屋敷」に育った夢都子(貫地谷しほり)は子どもの頃本土にある「ドリームランド」に行くことが夢でした。しかし、母(木村多江)は口うるさい祖母(白石和子)が許すわけがないと突っぱねます。結局ドリームランドどころか島を出ることもなく近くの大学に進学し教育実習が始まります。
一方、教師の航(大東駿介)は故郷の島に転任してきます。同級生だった夢都子と町で出会い、夢都子の夫平川(森岡龍)が先輩として同じ学校にいることを知ります。航の父親(緒形直人)も教師でしたが、航が小学生の頃病気で亡くなっていて辛い記憶しかないのでした。
主人公のふたりともそれぞれ親との確執があり、お互いが出会ったことで浄化されていく物語です。いまではあまり見られなくなった進水式という大イベントが見どころのひとつです。ただ、船の名前が日昇丸というのがちょっと古くさいです。ここは「光航丸」とか「夢航丸」とかにしてほしかったですね。
照明(永田英則)が登場人物の心境の変化を俳優の表情の変化に加えて光の濃淡で表している場面がいくつか見受けられました。
タバコは、ほとんど無煙だったのに居酒屋で航と平川が会話している場面の前面にわざわざ別の客のタバコの煙をプハーッと吐き出させていました。この演出にはJTが絡んでいるのでしょうか。森岡が喫煙しなかったのは良かったのですがこの一回は大変残念でした。(△)