無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

YARN 人生を彩る糸

2018-02-27 | 2018外国語映画評


「YARN 人生を彩る糸」 ウナ ローレンツェン監督 アイスランド、ポーランド合作 ☓

 YARN(糸)を使ってさまざまな活動をするクラフトアートドキュメンタリーです。
 アイスランドでは荒れ地でも育つ羊のウールを紡いで編んで生きている人。そして編むことでアート作品とする人、糸でパフォーマンスをする人などを紹介し、「糸」の持つ可能性と編むことで人生を豊かにし、人を幸せにしている様子を映像に収めました。
 日本人のアーティスト堀内紀子は自分の名前「紀」が「糸」と「己」で糸を扱うことの縁と自分の作品が子どもたちの人生を豊かにしていることに誇りを持っています。また、糸を編むことは頭の中を冴えさせる効果があり、彼女の言葉として「ドラッグを使わなくても冴える」と表現しています。かつて母親たちは子どもの衣類を自分で編むことが普通に行われ、ひと編みひと編みの仕事が身近にありました。女性が賢いのはそうした手仕事を黙々と行っていたからではないかとも思わされました。
 一方で編み物は「女の片手間仕事」としてしか評価されず、たまに男性が編み物をしていると「すごーい!」と拍手されるというちょっと厳しい意見もありました。
 冬季五輪のアルペン種目のコーチ(男性)がスタート地点で選手をリラックスさせるため「編み物」をしている映像がありましたが、まさにこの映画の言いたいことのひとつを体現しているようでした。
 1本の糸がたいした道具も使わずさまざまな形に変化する面白さを再確認し、毛糸を買いに行きたくなる作品です。
 タバコは、アイスランドの羊飼いの女性が羊小屋で喫煙、アーティストの一人も喫煙者でした。編み物をしているとタバコを吸う必要はないのではないかと思いますが・・・。(☓)


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アンダーグラウンド 2017完全版

2018-02-26 | 2018日本語映画評


「アンダーグラウンド 2017完全版」 エミール クストリッツァ監督
                 仏独ハンガリー合作 ☓☓☓☓
 1996年に日本で初公開された作品(171分)の5時間14分に渡る完全版です。
 1941年、ベオグラードにナチのドイツ軍が爆撃を開始、武器商人のマルコは親友のクロ
とともに避難民を地下に匿います。地下では武器を製造させすべてが地下で完結し、足りないものはマルコが差し入れることで不自由のない生活をしていました。クロはナチに捕まって拷問を受けますがマルコに救出され地下生活となります。そして45年戦争は終わりますが、マルコはそれを知らせず地下での武器製造で私服を肥やします。その上、クロの恋人まで自分のものにしてしまうのでした。
 戦後の平和はあまり続かず地下生活をしていた人びとが外に出た時は再び知らない間に次の内戦が始まっていた、という現実を賑やかな楽団、動物や奇人を登場させることで重くなりすぎず多少滑稽に描いた名作は何年たっても色あせません。5時間超えの長さを感じさせない作品です。
 苦労や工夫をして撮影した映像を編集段階であれこれカットしてしまうのでしょうが、編集の仕方を変えて見比べるという楽しみ方もありますね。
 タバコは、葉巻や紙巻き、パイプ、キセルなど度々登場していました。女性の喫煙、子どもの喫煙シーンもあり、タバコに関しては時代背景を考えても多すぎでした。
 戦争や武器商人などには批判的な立場に立っている芸術家でもタバコの暴力性には全く頓着しない「認知のゆがみ」が顕著な人がいますが、この監督もその一人のようで大変残念です。


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ベロニカとの記憶

2018-02-24 | 2018外国語映画評


「ベロニカとの記憶」 リテーシュ パトラー監督 英 ☓

 思わぬ人からの遺産を巡る1通の手紙が起こす心の葛藤を描くサスペンスドラマです。
 小さな中古カメラ店のトニー(ジム ブロードベント)は離婚した妻とは娘の出産の手助けを交互にする関係を保ちながら穏やかな一人暮らしをしています。そんな折学生時代の関係者からある遺産の連絡が届きます。それがきっかけとなりトニーは40年前の自分と再び対峙させられます。当時好きだったベロニカを思い出し再会しますが、トニーの記憶はかなり美化されていたようで実は嫌なやつだった自分を思い知らされるのでした。
 学生時代と現在が行ったり来たりする演出で前半は当時の美しい思い出が再現され浮かれた気分になるトニーですが、友人の自殺の真相などトニーの記憶の闇が明かされることでもう一度現実に引き戻されるトニーが客観的には滑稽でした。このあたりは元妻の分析が痛快でした。世の中の中高年のみなさんもやたらに過去の関係者と再会すると痛い目にあうこともありますよ。思い出は美しいままでしまっておいたほうが幸せかもしれません。という忠告作品です。
 タバコは、過去の学生たちが度々喫煙していました。(☓)


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グレイテスト ショーマン

2018-02-21 | 2018外国語映画評


「グレイテスト ショーマン」 マイケル グレーシー監督 米 ◯ ☆☆

 19世紀に実在したアメリカの「地上で最も偉大なショーマン」と評された興行師P T バーナムの半生を描いたミュージカル映画です。
 貧しい仕立て屋の息子フィニアス バーナムは名家の子女チャリティと出会います。身分制度が厳しかった時代大人になったバーナム(ヒュー ジャックマン)は反対されながらも二人は結婚しこどもにも恵まれますが、失業してしまいます。そこでバーナムは「ユニークな人」を募集しサーカスの興行をはじめます。成功はしたもののその後さまざまな波乱が襲いかかるのでした。
 オープニングから観客を釘付けにする演出であっという間にショーは完成されます。個々で終わりかと思いきやそこから物語は佳境に入るのです。素晴らしいダンスと歌に夢のような世界を体験できます。満足度の高い、まさに「観客を幸せにする」名作です。(☆☆)ただ、テンポが早すぎて字幕に追われ画面の見逃しが悔やまれます。ぜひもう一度ゆっくり堪能したいです。
 タバコは、なし。無煙です。前述のとおり見逃した煙はあるかもしれませんが・・・。(◯)です。

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リバーズ・エッジ

2018-02-20 | 2018日本語映画評


「リバーズ・エッジ」 R15+ 行定勲監督 ☓☓☓ PPマルボロ緑ライター

 1993年に連載されていた岡崎京子原作の漫画が原作です。
 都内の高校生ハルナ(二階堂ふみ)は元彼の神崎(上杉柊平)の残酷な虐めにあっていた山田(吉沢亮)を助けます。それがきっかけとなっていじめられ続けている山田の唯一の「安定剤」となっている河原の秘密を共有することになります。もうひとり共有している摂食障害の同級生吉川(SUMIRE)、そして山田に一方的な恋をしている田島(森川葵)、性的にだらしがないルミ(土屋志央梨)などの「さわやか」とか「純情」とかの美しい言葉とは無縁の青春を描きました。
 高校生の物語がR15+と言うこと自体に自己矛盾があるのではないでしょうか。表現は「成人指定」してほしいくらいの内容で観客に何を伝えたいのかわからず不愉快さだけが残りました。二十歳を数年過ぎている俳優には新鮮さがなく高校生に見えません。原作者には熱烈なファンがいるようですが、なぜ今映画化する意義があるのか理解できませんでした。
 唯一評価できたのは高校の授業の場面で「自由」について教師が語っていた内容とテレビに写った温室効果ガスについてのニュース画面は「今」の問題として理解できました。これこそ未成年者にも伝えたい事でR指定はますます意味がなくなってしまうのではないでしょうか。
 タバコは、主役の二階堂ふみが殆どの場面で喫煙します。高校生の喫煙は歪んだ仲間意識で「みんなで吸う」ことがきっかけになるようですが今作ではほとんど彼女ひとりだけが吸っていました。(SUMIREが1度「タバコ頂戴」といって一緒に喫煙。)完全な依存症で「ちょっと一服するわ」などおじさんのようなセリフまでありました。
 また、酒を飲んだり、ドラッグを吸ったりする場面もありました。
 R指定されていれば何をやってもいいのでしょか。せめて、「演出上高校生が喫煙飲酒する場面がありますが、法律で禁じられています。真似をしないでください。」の警告くらいはあってもいいのではないでしょうか。映倫に問い合わせたい作品です。
こういう作品が日本代表として海外のコンクールに出品されるのはなんだか恥ずかしい。


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私は、幸福(フェリシテ)

2018-02-15 | 2018外国語映画評


「私は、幸福(フェリシテ)」アラン ゴメス監督 仏ベルギーセネガル独レバノン合作◯

 コンゴのキンシャサ近くに住むシングルマザーで歌手のフェリシテを通してコンゴの今を描きました。
 冷蔵庫が故障し修理を頼んだものの次々故障が見つかりなかなか直りません。そんな時、一人息子がバイクの事故で大怪我をして入院します。しかし、手術の費用を先に工面しないと治療をしてもらえません。フェリシテはあちこち金策に回るのですが・・・。果たして息子の怪我は?冷蔵庫は?どうなるのでしょうか。
 ロボットが活躍する交通信号が自慢のひとつですが、お金がなければ治療もしてもらえない現実もあります。フェリシテのバンドの楽器は民族楽器が中心の伝統音楽ですが、交響楽団もあれば、聖歌隊もあり、音楽は多様です。フェリシテのまわりに起きることを通して観客はコンゴの人びとの生活を知ることができます。
 埃っぽい現実の描写に対して緑と水が豊かな夢想の場面が対象的です。
タバコは、後ろ姿で煙が映りましたが、タバコそのものは映らなかったのでおまけの◯です。


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はじまりのボーイミーツガール

2018-02-13 | 2018外国語映画評


「はじまりのボーイミーツガール」 ミッシェル ブジュナー監督 仏 ◯

 視覚に障害のある少女と彼女を応援する少年の初恋を描きました。
 劣等生のヴィクトールと優等生のマリーはお互いに気になっていました。マリーの方から勉強を教えましょうとヴィクトールに近づきます。ふたりは親しくなりますが、実はマリーは2つの問題を抱えていました。一つは目の病気のこと、もう一つはチェロを続けるため音楽院への入学を父親が反対していることでした。ヴィクトールとその仲間たちはなんとかしようとしますが・・・。
 子役たちの演技がそれぞれ個性的で魅力があります。両親の宗教の違いを明るく乗り越えている家族や、子どもへの教育方針の違いで衝突する両親、出ていった妻をいつまでも忘れられず子どもにたしなめられる父親などが描かれます。教師たちも一長一短あり人間的です。いずれにせよ初恋は甘く切ないものですね。
 タバコは、なし。無煙です。


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マンハント

2018-02-10 | 2018外国語映画評


「マンハント」 ジョン ウー監督 中国 ◯ ☆

 「君よ憤怒の河を渉れ」をアクション映画の名匠ジョン ウー監督が、福山雅治、チャン ハンユーのダブル主演で日本を舞台に再映画化しました。
 製薬会社の弁護士ドゥ チウ(チャン ハンユー)は会社のパーティの翌朝社長秘書の死体と共にベッドの上にいました。彼は殺人の容疑者となり拘束されますがすきをみて逃亡します。追っ手の一人刑事の矢村(福山雅治)は新人の百田(桜庭ななみ)と事件の謎に迫ります。そして単なる殺人事件ではないある大きな陰謀が隠されていることに気がついてゆくのでした。
 佐藤純彌監督の「君よ憤怒の河を渉れ」に似ている場面はいくつかありますが、設定が全く変わっているのでリメイクではなく「再映画化」です。アクションシーンが見どころなだけでなく事件の根幹にある社会的な問題提起も現代的です。それでいて娯楽映画としても楽しめます。
 映画の後、福山と監督が「動画パンフレット」と評し、解説をするオマケ映像がありますが、撮影の裏話や、監督の思いなどが伝えられ大変効果的でした。作品中も映画に関するセリフなどが生かされ監督の映画への深い愛情が感じられました。
 映倫区分が「G」なので誰でも楽しめることも評価できます。
 タバコは、なし。無煙です。(◯)こちらも評価できます。(☆)


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ゴーギャン タヒチ、楽園への旅

2018-02-09 | 2018外国語映画評


「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」 R15+ エドゥアルド アルック監督 仏 ☓☓

 ゴーギャンの後半生を描いた伝記映画です。
 19世紀末のパリで株式の仕事に失敗したゴーギャン(バンサン カッセル)は心機一転画家として生きていこうと家族を残し単身「楽園の地」タヒチへ移住します。そこで自給自足の満ち足りた生活をしている人々と出会い同じように暮らし始めます。そしてあるとき森の中の集落で暮らすある女性と出会います。彼女をモデルとすることでゴーギャンは後に代表作となった数々の作品を描くのでした。
 タヒチという楽園にもキリスト教は浸透し、いわゆる西洋的な倫理や価値観がかつてのアニミズムの世界を変えていく様子も描かれています。こうして植民地化が進められたのでしょう。ゴーギャンの人生そのものよりもそちらの経緯のほうに興味が持てました。
 タバコは、貧しくてキャンバスも買えないのにどういうわけか常にタバコだけは吸っていました。(☓)心臓病で発作を起こしてもタバコは止めず、喫煙者の医者(☓)もタバコについては何も触れず、恐ろしい時代を描いていました。
 ところでこの作品はR15+でそちらの期待も(?)あったのですが、「え?あれだけ?」という印象でした。映倫の規定にはいまひとつ納得しかねることが多いのですが、もしかして「タバコの扱いが倫理的に問題である。」という理由なのでしょうか。それならば確かに未成年には見せたくない喫煙シーンがありましたが・・・。

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デトロイト

2018-02-07 | 2018外国語映画評


「デトロイト」 キャスリン ビグロー監督 米 ☓☓☓☓☓

 1967年、「デトロイト暴動」の際、町外れの小さなモーテルで起きた白人警官による不法な取締と殺人事件を再現しました。
 黒人社会に蔓延していた差別待遇への不満が一気に噴出し暴動に発展していた晩、町外れの小さなモーテルでは黒人も白人も男も女も酒やダンスに興じていました。悪乗りしていたずら半分に競技用のピストルを放ってしまいます。それがきっかけとなり銃撃を受けたのち常軌を逸した白人警官による人権を無視した強引な自白強要や暴力的な取り調べとついには殺人まで犯してしまいます。隣接のビルの黒人の警備員ディスミュークス(ジョン ボヤーガ)はすべてを目撃し証言するのですが・・・。
 60年代の人種差別の実態を告発した作品です。ウィル ポールターが差別主義者のデトロイト市警役を見るからに憎々しげに好演しています。悪役が効果的に生きています。
 差別主義が再興しつつある世界に問いかける作品です。
 タバコは、時代を考慮しても喫煙率が高すぎでした。タバコに関しては白人、黒人の別なく殆どの登場人物が喫煙していました。(☓☓☓☓☓)テーマが鋭いのにタバコには寛容過ぎることが残念です。


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